尊氏×師直 2 R
尊氏×師直 R一応前上げたhttps://telegra.ph/%E5%B0%8A%E6%B0%8F%E5%B8%AB%E7%9B%B4-R-01-25の続き
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足利高氏という男は、仕え甲斐のある主人であると高師直は思っている。
それは、彼の父貞氏や早逝した兄高義と比べての話でもあり、幼い頃から世話を焼いてきた経験からも言えることだった。
彼は現状家督を継いでいるわけではないため、正確に言うと師直の主ではないのだが。いずれ名実ともにそうなるだろう、と師直は信じている。
文武に秀でたところも然ることながら、その容姿や言動には常に人を惹きつける華があった。それでいて気取らず驕らぬ様からは並々ならぬ度量が垣間見える。
時折見せる突飛な言動や、一度こうしたいと思ったことを覆すのを厭う様は未熟と言えなくもない。しかし大抵どちらも師直にとって対応できぬものではなかったし、駄目だという理由を説けば一言二言軽い文句を言うだけで受け入れる。こういった様は高氏の若さも手伝って、欠点どころか愛嬌と捉える者も少なくないだろう。
だから、師直は己の能力を高氏に全て捧げることに躊躇いは無かった。
それこそ高氏が望み利が勝るのであれば、貞氏を引き摺り下ろし高氏を早々に当主とする算段さえ立てても良かった。無論、早計とわかっているから今はしないが。
ただ、まあ、とはいっても。何一つ思うところが無いかと言われると否であった。
率直に言うと師直を抱くのをどうにかしてほしい。
別に男色趣味自体は珍しいものではないし、高氏は決してそればかりにかまける男ではない。夫婦仲も悪くなく、それこそ長男が生まれて半年程経つ。
ただ、それならわざわざ師直を寝所に呼ばずともよくないだろうか。
妻は出産後も健康体だった。それに容姿と技量に長けた遊び女を紹介しても、見目麗しい寵童を見繕っても、高氏は拒絶こそしないが師直を抱くことはやめなかった。
何故だかわからないが、気に入られているらしい。
師直は愛らしいかんばせ、柔らかな体躯、鈴を転がすような声なんてものは持ち合わせておらず、受け身での行為に慣れてもいない。
最初こそ物珍しさで手を出しこそすれ、すぐに飽きるだろうと思っていたのだが。
抱く方ならばともかく抱かれる側として今まで高氏が夜を共にしてきた相手に勝る点など、後腐れの無さと乱暴にしても壊れないところくらいしか師直には思い当たらない。
だがそのわりに高氏の行為は優しかった。師直は寝所に侍る前に手っ取り早く体を繋げられる程度の準備をしているが、大抵高氏は前戯に興じたがる。しかし気分によって差はあれども終始自分本位ということもなく、基本的には師直も悦くしようという意思が伝わる触れ方を高氏はする。
生ぬるい行為ではないが乱暴とも決して言えなかった。
───手酷く扱われる方が気楽なのだが。
師直は痛苦に悦ぶ被虐趣味者ではない。
だが、不本意な行為で快楽を得るよりは痛いだけの方が耐えられるし無様を晒さずに済む。
───存外、この方は悪趣味なのだろうな。
自分はそのような主の奇特な気紛れに付き合っているだけ。そう思わないとやってられなかった。
「何を考えている?」
「いえ、何も───っ」
高氏の問いに答えるべく口を開いた瞬間、大きく突き上げられた。師直は咄嗟に手で口を塞ぎ指を噛んで、上がりそうになった声を押し殺す。
声は抑えたものの、対面で貫かれるこの体位は情けない姿を見られているという意識が強く師直は苦手だった。
師直が高氏の相手をするようになってからもう一年、二年が経つ。
はしたなく足を開くのはもう慣れてしまった。高氏好みの口淫も、跨り自ら腰を振る術もこの歳下の男に教え込まれた。
それでも師直の矜持は抱かれる快楽を未だ厭うている。それに反して体は快楽を受け入れ様々な形で発露しようと師直を苛んだ。
「師直、声」
「っ」
「抑えるな」
緩やかに、けれど着実に師直を追い詰めるよう動きながら高氏が言う。
それに対し師直は小さく首を横に振る。
本当はこの荒い呼吸すら聞かせたくないのに、どうして素直に声を上げることができようか。溢れるものが苦悶の呻き声でなく媚びた嬌声であるなら尚更だ。
「こればかりはいつも強情だな」
どこか弾んだ声音で高氏は言う。
そして有無を言わさぬ力で師直が声を抑えている方の手首を掴み剥ぎ取った。
耐える為に付いた歯型が残る指に高氏の唇が落ちる。目を合わせながらのそれに何だか居た堪れなくなって師直は小さく目を伏せた。
「我慢しない方がきっと気持ちいいぞ」
「っ───ぐ、ぁ、」
高氏は師直の口内に自らの指を二本押し込み、小さく口を開かせた。それと同時に腰の動きを激しくして師直を責め立てる。
主の指に歯を立てるわけにもいかず、師直は必死に敷布を掴みながら溢れる声を呑み込もうとする。それでも殺しきれない喘ぎが二人の鼓膜を震わせ片や欲、片や羞恥の念を掻き立てた。
「ん、ぐ、うぅ」
「はは、やはり今の方が具合が良い。そら、こっちも」
「ぁ、そこ、ふれては、」
高氏は師直の口から指を引き抜き、その手を師直の屹立に添えて扱き上げる。体内の感じる場所を擦られる快楽も相まって師直は小さく声を漏らしながら絶頂を迎えた。
余韻に震える体を高氏が満足気に見下ろしている。師直の息も整わぬ内に高氏はまたゆるりと腰を動かし始めた。
先程よりは緩慢な動きだが、達したばかりの体にはそれさえ過ぎた快楽だ。それでも欠片程手繰り寄せた理性と根付いた忠心のため、師直はまだ達していない主を制止しようとはしなかった。
ぐ、と一際奥に高氏のものが押し込まれ師直は息を詰める。いつもより大きな圧迫感。
高氏は少し引いてはそこに押し込んで、という動きを何度も繰り返した。
師直はその度に腹の奥が疼き体が跳ねるのを抑えられない。
苦しい、筈なのに気持ちよくて、やめてほしいのにどこかもどかしくて。理性も意地も矜持も全て熱に溶かされていくような心地が師直の身を震わせる。
殆ど無意識に師直は力の入らぬ手で高氏の体を押し返していた。もっとも、それは何の意味も成さぬ小さな抵抗であったのだけれど。
「いや───いや、です」
限界だった。
師直自身これ以上は入らぬと思っていた場所の更に奥。そこを犯されようとしているのが堪らなく恐ろしかった。
奉仕せねばならない立場の自分だけが達している上に、主がやろうとしていることを遮るなどあってはならぬと分かっている。けれどこれは駄目だ。
そんな、深くまで暴かれてしまえば、きっと狂ってしまう!
「大丈夫だ、師直」
高氏は少しだけ腰を引き、師直を安心させるように微笑み、宥めるように髪を梳く。首筋、頬、目元に軽い口づけを落とせばほんの僅か師直の体の緊張が解けた。
それを褒めるように高氏は師直と自分の唇を重ねる。師直は高氏との口吸いが嫌いだった。師直とて慣れていないわけではないのに、高氏とのそれはすぐ頭がぼうっとして身も心も蕩かされてしまいそうになるから。
それはこのような情事の最中であれば尚更で。無意識に師直の体から力が抜け───その瞬間高氏は、ひと息に師直の最奥を貫いた。
「っ───!?」
「は、これは……思ったより」
高氏が熱い息を吐く。
どうやら高氏も吐精したようだった。
だが師直はそれどころではない。声も出せない程の快楽に全身を苛まれ、果てには精を出さずに達していた。
「ひ、ぅ」
一度の吐精で若い欲が治まるわけもなく、高氏のものがまた硬度を取り戻していく。
それだけでも気持ちが良くておかしくなりそうだった。
ゆっくりと高氏は腰を引き、師直の意志とは裏腹に絡みつく内壁から屹立を抜いていく。そしてまた奥を穿てば師直は体を跳ねさせ引き攣った喘ぎ声を溢した。
───嫌だ、嫌だ!
師直の心中は嵐のように乱れていた。
本当に奥まで犯されてしまったこと。
体感したことのない過ぎた快楽。
それを享受し震える体に、抑えられない嬌声。
そのどれもが師直にとって不本意なものだったけれど、何より。
この身の全てを暴かれ、征服されることがこんなにも満たされ幸福だ、と思ってしまうなど!
認めたくない、それでも体はとうに高氏に屈服していて。理性や矜持なんてものは最早何の意味も成さなかった。
「高氏様───」
続く言葉は高氏の唇に呑まれて消えた。
やめてくれ、と見苦しく慈悲を乞おうとしたのか、はたまた別のことを言おうとしたのか。すぐ師直自身にさえ分からなくなってしまった。
* * *
師直は理性の人だ、と高氏は思っている。真面目な弟とはまた違った合理性の塊。
それでいて己に確固たる忠義を向けてくる優秀な男を高氏は気に入っていた。
忠臣とは言えど師直は高氏の言葉を全て素直に実行するわけではない。場合によってはそれは如何なものかと苦言を呈することもある。
けれどそれは、常に何かしら彼なりの理屈があり、また高氏の為を思っての反論だろうというのも多かった。
この関係が始まる以前、否、始まってからも師直は「自分より適した相手がいるのではないか」と言い続けていた。
自分は慣れていないから、貴方を満足させる働きができるとは思えない。女や寵童のように愛らしくもないから、抱いても楽しくないだろう。
師直がそう思っているのは事実でも、同時にその本心は「男に組み敷かれるのが嫌」なのだろうと高氏は察していた。
行為の最中でも師直が高氏の言葉を拒絶したり行為を制止することはある。
ただそれも、声を我慢───低い男の声など聞いても萎えるだろうとのこと───だったり、高氏を差し置いて自分だけ果てさせられるのを嫌がってといった理由あるものばかり。
ともかく内心がどうあれ、高氏への献身という建前を師直が崩すことは無かった。
ただ今夜、高氏が初めて師直の最奥を暴こうとした時。
「いや───いや、です」
常の様子からは想像できない程弱々しく、師直は高氏の体を押し返そうとした。
この時の高氏の高揚が分かるだろうか。
尤もらしい理屈をつけないと拒絶一つできない男が、それすら用意する余裕もなく、ただ高氏から与えられる快楽に怯え嫌だと口にしている!
───愉しいなあ、師直。
高氏は努めて優しい声と笑みを作った。
大丈夫だと宥め、緊張を解すよう穏やかに触れ口づければ師直の体は従順に高氏に従う。
頃合を見計らって最奥をひと息に穿つと声も無く師直は達していた。それに伴う内の収縮と蠕動に抗わず高氏も精を吐き出す。
ふぅ、と息をついて師直を見下ろすとまだ彼は快楽を逃がせていないようで、高氏がほんの少し身じろぎしただけでびくりと体を震わせている。
その様に高氏が再度自身を昂らせるまで時間はかからなかった。
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蛇足兼自分用メモ
関係が始まった時点の高氏は18~19歳くらい
モロちゃんも最初から忠義93だったわけじゃないと思うので
前回→忠義80
今回→忠義84
くらいのイメージ
あとは原作時間軸くらいの忠義93完堕ちモロちゃんも書けたらいいな……
渋々嫌々抱かれる師直も尊氏が望むなら喜んで体を差し出す師直も全部好きです