寒露の夜
……意識が浮上する。
左の肩と胸の上に何か重い物が乗っている感覚して、右側の脇腹と、左足に何かが巻き付いている気がする。
重い瞼をこじ開けるとまだ室内は暗かった。
首だけ動かし、ぼんやりとする視界で胸の辺りを見てみると、上下に動く黒い小さな塊が見えた。
やがて視界がクリアになり、暗い室内に目が慣れてくると、塊の輪郭がはっきりと見えてきた。
「すぴ…すぴ…」
横で寝ていたはずの今年2歳になる息子が、いつの間にか俺の体の上に乗っていて、俺の寝巻きに涎を垂らしながら寝ていた。
では左の重さの正体は?
視線を左に向けると、嫁であるエースのドアップの寝顔が俺の目に映り込んできた。
寝る前は息子と娘を挟んだ先にいたエースなのだが、今は俺の肩を枕代わりに、足と尻尾を俺の足に絡ませて穏やかな寝息を立てながら熟睡している。
そしたら右脇腹は…と、右腕で掛け布団をそっとめくる。
予想通り、娘がコアラの子供のように俺の右脇腹にしがみついて寝ていた。
掛け布団をめくった際にひんやりとした空気が中に入ってきて、娘が小さく呻いて更に俺に引っ付いてくる。
(……そういえば、夜は冷え込むって天気予報で言ってたな……)
恐らく秋の初めだからと油断して薄い掛け布団しか用意してなかったから、夜の寒さに耐えきれず暖を求めて、無意識に俺の元に集まったのだろう。
かく言う俺も、引っ付いている3人の体温が温かく、その心地よさに眠気がまたやってきた。
(………まだ起きる時間じゃあないよな………)
室内の暗さからまだ深夜だと判断し、俺は掛け布団を掛け直して、二度寝を決め込むのだった。
しかしその判断は間違っており、実際は起床する30分前の時間で、更にセットしたアラームに気付かないほど熟睡してしまった俺は、俺達は、大遅刻をかましてしまうのだった。
終わり