寄生糸強制セルフ乳首開発させられ鰐

寄生糸強制セルフ乳首開発させられ鰐





部屋の扉を開けた途端、顔に水がかけられた。滴るしずくをそのままに部屋の奥に目を走らせると、薄暗い中に思った通りの人物が立っている。趣味の悪いピンクのファーコート、チンピラのような柄物の服、目を隠す濃い色のサングラスに人をいらつかせるにやけ面────ドンキホーテ・ドフラミンゴがそこにいた。

ビキリ、と額に血管が浮いているのが自分でもよくわかる。能力者の弱点である水をかけられただけでなく、会議の際にはいつも使う部屋に侵入されているという、テリトリーを侵された不快感もあった。それに何より、まずあのにやけ面のフラミンゴ野郎が一等気に食わない。

顔を合わせるごとに無駄に嫌がらせをしかけてくる野郎が今回は何をするつもりなのか。いい加減に相手をしてやるのも面倒で、深いため息を吐いて苛立ちを誤魔化し、崩れた髪を掻き上げる。

にやけ面を視界から消すべく扉へつま先を返し────そこから体が動かない。


「フッフッフッ……どこに行こうってんだァ、ワニ野郎?遊ぼうじゃねェか、いつもみたいによ」


背後からの声に合わせるように体が勝手に動き出す。開け放ったままだった扉を閉め、明かりをつけ、そしてフラミンゴ野郎に向き直った。

一瞬たりとも自分の意思で動かない体が気持ち悪く、自分の迂闊さを呪いたくなる。聖地マリージョアの膝元で、能力まで使って喧嘩を吹っ掛ける馬鹿だと思っていなかったとは、仕掛けられてしまえば言い訳にもならない。思わず舌打ちをして、すべての支配権が奪われているわけではないことに少しの余裕が戻ってくる。

突っ立ったままこちらをにやにや笑うフラミンゴ野郎を睨み据えると、奴は嬉しそうに笑みを深めた。気持ち悪ィな。


「……なんのつもりだ、てめェ」

「なんだ、聞いてなかったのか?」


遊ぶんだよ、とフラミンゴ野郎がこれ見よがしに両腕を広げた。また体が動き出す。

意思に従わない右手が喉元に手をのばす。首を絞めるのかとひやりとしたが、タイを引き抜くだけで指先は離れていった。行動の意味を汲み取れずに眉をひそめているうちに、タイを床へ落とした手が、今度はベストのボタンをひとつひとつ外していく。


「……ああ?」


よくわからない。ボタンを外すことになんの意味があるのか。嫌がらせの一環なんだろうが、意図が理解できない。

頭に疑問符を浮かべていると、ボタンを外し終わった手がするりと内側へ入り込み、胸を撫でた。同時に左手が動いて鉤爪でベストをはだけさせる。見せつけるようにくっと胸が反って、肩にかけていたコートが足元に落ちた。シャツの上では何度も右手が胸を往復し、腰を撫で上げる────これではまるで、ストリップのようだ。

気付くとともに、カッと顔に熱が上がった。このおれに、浅ましい女のように身をくねらせろと言うのか。体を見せつけ、媚びて、いやらしく微笑んでみろと。冗談じゃねェ。ギッと睨み付けても、フラミンゴ野郎はにやにやと楽しげに笑っている。


「趣味が悪ィぞフラミンゴ野郎……!てめェに付き合ってる暇はねェんだ」

「つれねェこと言うなよ……まだ時間はあるんだ。もっと遊ぼうぜ」


体が意思に反して少しずつベストを肩から抜いていく。腰を撫でては見せつけるように体を反らせ、シャツのボタンをひとつひとつと外していく。

なめらかに動く体がことさら気持ち悪い。


「フッフッフッ、いい格好だなァ?ワニ野郎」

「クソ野郎が、おかしいのは服だけじゃなかったのかよ」


罵倒する間も動いていた手がついにシャツのボタンをすべて外し、ベストも床に落とされた。次は下かと戦慄していると、思わぬところに刺激が走った。見れば、あらわになった胸元で、右手が乳首を摘み上げている。


「は?」


思わず目を見開いて間抜けな顔をさらしてしまった。何、何だ?

外気で立ち上がった乳首を人差し指と親指が摘んでこねまわし、かと思えば胸全体を揉み上げ、すりすりと乳輪を撫でさする。左手も鉤爪の背で乳首を押し潰してきて、覚えのない刺激が身のうちに走った。


「っ……?」


指先が乳首を軽く叩き、鉤爪が先端を撫でこする。

かりかりと引っ掻き、また押し潰されると、なぜか下腹が重くなるような感覚がした。


「……頭おかしいんじゃねェのか」

「フッフッフッ、酷い言い草だなァおい。たまには趣向の違う遊びもいいだろう?」


遊び?人の体を支配して乳首をいじらせるのが?

呆然としていても指先は動き、さわさわと乳首を撫でる。やわい刺激がくすぐったさとは違う感覚を呼び起こし、意識が散漫になってしまう。


「は、てめェ……ふざけるのも大概にしておけよ……」

「ふざけてなんざいねェさ!おれは遊びたいだけだからなァ」


フッフッフッ、とフラミンゴ野郎が笑い、一歩近付いてくる。いつもより大きく感じるのは体が動かせない状況だからだろうか。


「なァ、仲良くしようぜ?」


ぎゅう、と自分の指先が乳首を強く摘み上げた。


「……ぅ、っ」


喉からおかしな声が出そうで、咄嗟に唇を噛み締める。ひく、と腰が震えた。

────今のは、確かに性感だった。

その事実に愕然とする。生まれてこの方、乳首で感じたことなど一度もない。というか故意に触ったこともない。それなのに、少し触っただけでこんな、こんな恥知らずな体だったのか?

混乱と失望が脳内でぐるぐるとまわっている間も、両手は絶えず乳首や胸元を刺激し続けている。与えられるそれはもう違えようもなく性感で、どうしようもなく情けない。

自分が今どんな顔をしているかわからず顔を伏せると、股間がわずかであるが盛り上がっているのが見えた。信じられない。信じたくない。このおれの体が、こんなことで屈するはずが。


「フッフッフッフッ、砂漠の英雄様はさすが色っぽいなァ」


笑いながら、ドフラミンゴがゆっくりと歩き出した。体の横にまわって、後ろにまわって、また横にまわって目の前まで戻ってくる。

その間も自分ではとめられない刺激で体がひくりと震えて、何度も息を詰める。ドフラミンゴの視線が体に刺さるようで気持ちが悪い。見られている。

ふざけるなと怒鳴ってやりたいのに、喉が張り付いたように声が出ない。


「……おいおい、いつもの威勢はどうしたんだよ。返事がねェとさびしいじゃねェか」


ドフラミンゴが不満げに文句を言う。

その雰囲気に下心めいたものが微塵も感じられないことが恐ろしい。理解ができない。ストリップを強いたかと思えば乳首をいじらせて、性的に辱めたいのかと思えばそんな気配はない。ただの遊びだと言うが何をしたいのかわからない。

性的な意図は何もないのになぜ服を脱がせ、乳首をいじらせる。遊びたいだけ?男に乳首をいじらせて?ありえない。何も楽しくないだろう。

いつもの嫌がらせとは種類が違うとわかっているのに、なぜこんなにも普段と変わらないのか。

わからない。この男とは決して絶対に親しくするつもりもないが、それでもここまで理解できない人間ではなかったはずだ。わからない。何がしたいんだ。何を考えているんだ。

混乱と絶望に恐怖が加わって、呼吸が浅くなっていく。怖い。


「……くそ、野郎、がっ」

「フッフッフッフッ!ワニ野郎はそうでなくちゃなァ、心配しちまったぜ」


張り付く喉を引き剥がし、強がりでなんとか絞り出した声はドフラミンゴを上機嫌にさせたらしい。また笑い声が響く。

指先は乳首をいじり続けている。摘んで、撫でて、はじいて、引っ掻いて、押し潰して。摘んで引っ張られるとぞくぞくと快感が走って背中が反ってしまう。体が制御できない。気持ち悪い。

熱が股間に集まっているのがわかる。ドフラミンゴは気付いているのだろうか。知られたくない。


「……っ、く……」


殺しきれなかった声が落ちる。口を覆いたいのに、自分の手は今、自分の意思を裏切っている。動いている。動かせないのに。

ドフラミンゴが笑っている。

下心なんて何もないのに、この状況の何を楽しんでいるのだろう。何を楽しめるのだろう。わからない。怖い。


「ひ、ぅ……っ」


どんどん声が殺せなくなっている。股間が熱い。ぐっと唇を噛み締めた。

ドフラミンゴが笑っている。

指先が絞るように乳輪ごと乳首を摘んで、鉤爪が先端をぐりぐり押し潰す。


「〜〜〜〜っ」


背中がのけぞる。

やめろと言えばやめるだろうか。この状況を笑っているような奴が?そもそも声を出しても言語を成せるかわからないし、震えて、懇願するような声になるかもしれない。そんな声を聞かれたくはない。

でも、ならどうすればいい。どうすればここから逃れられる。わからない。体はドフラミンゴの支配下にあって、声ぐらいしか出せなくて、声は聞かれたくなくて。わからない。怖い。

頭がぐちゃぐちゃで、思考回路が回らない。

ドフラミンゴが笑っている。


「黙っちまってどうしたんだよ。感じて声も出ねェのか?」


からかうような笑いを含んだ声がする。

気付いている?いやだ。気持ち悪い。見るな。怖い。怖い。

呼吸がおぼつかない。涙が滲む。いやだ。泣くなんて情けない。熱い。怖い。


「フッフッフッ、いつまでも俯いてねェでこっち向けよ」


指先が乳首を引っ張り上げる。鉤爪がぎゅうと押し潰す。

意思に反して顔が上を向いた。


「ひっ、〜〜〜〜あ゙ッ!」


がく、と体が震えた。声も殺せなかった。ばれた。気付かれた。全部見られた。

ぼろぼろと涙が落ちる。呼吸が引き攣れて息が苦しい。


「……え、あ……おい。だい、大丈夫か……?」


ドフラミンゴが手をのばしてくる。反射的に振り払って、体の支配が解かれていることに気付いた。


「……っ」


足が勝手に後ずさって、足元に溜まった服にもつれて尻もちをついた。醜態を気にする余裕もなく、震える手でコートをなんとか拾って、そのまま転がるように扉を開けて部屋の外に出た。

コートを胸に掻き抱いて廊下を足早に歩く。ベストもタイもあの部屋に置いてきてしまったし、足がもつれたときに脱げたのか、靴も片方ない。

すれ違った数人の海兵がぎょっとして見ていたが、もうどうでもいい。とにかくあの部屋から、あいつから離れなければ。ぶるぶると体が震えてうまく歩けない。涙がとまらない。

服の下がぐちゃぐちゃで気持ち悪くて着替えたくて、でも止まったらあいつが追いかけてきそうで立ち止まれない。気持ち悪い。吐き気がする。

ぐらりと傾いた体が壁にぶつかった。目線を上げれば、つる中将の部屋の扉がある。……中にいるだろうか。震える手を上げて、一瞬逡巡した。こんな姿を見せて気持ち悪がられないか、話を信じてもらえるのか。真面目に取り合ってもらえるのか。わからない。わからない。でも、あいつよりはいい。

こん、といかにも弱々しいノックの音が鳴った。



終わるよ!!!

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