家主と居候の邂逅 井上と一護の意見
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「今日は随分と平和だな...」
虚が来たというルキアの報告もなく昼を過ぎて夕暮れに差し掛かった頃だった
慌ただしくオンボロな軽トラが家の前に止まった しばらくして立ち昇る血の匂い
「特に電話も来てなかったはずだが...近くで事故でも会って運ばれたのか」
少し井上とその兄の事を思い出したが直ぐに玄関へと向かった
「急患だ!すまないが病状や状況の説明は任せる!」「お おう わかった!」
石田がホームレスっぽいオッサンの一人を親父の方へ向かわせつつ 女の子を背負った病院へ来ていた
い石田が俺に気づくとハッとした様子で俺に顔を近づけ耳打ちしてきた
「虚が関わっている 少し怪しいと感じるかもしれないが治療を受けさせてやってくれ」
「全然かまわねぇよ 親父も患者を放るような真似はしねぇさ」
少しだけホッとしたように石田が少女の方を見た...薄っすらとだが目が開いている
「虚からあのホームレス達を守るためにこうなったみたいだ」
だったら俺が代わりに虚をどうにかしてやんねぇとな!他に被害が出てもマズい
「安心して休んでてくれ "あんたの代わりに"襲ってきた虚は倒してやるから」
俺は少女に少し笑いかけながら部屋にいるコンを取りに振り返ろうとしたが
「...と 取り消しなさい 今の言葉 アレの事は私の責任なのだから...!」
切っ先が喉元に触れるほんの少しだけ暖かい感触が気道の上を伝っていった
少女の目はカッと見開きこちらを睨んでいた
俺は何が何やら分からないまま その後親父に案内され石田に背負われて病室に入って行く後ろ姿を見ていた
我に返って付近を捜したが虚の痕跡は見当たらずそのまま家に帰ることになった

「黒崎くん なにかあったの…?」
学校の帰り道に俺を心配したのか井上が話しかけてきた
「家の病院に担ぎ込まれたあいつのことでな」
担ぎ込まれて一日 親父の応急処置や裏での浦原さんや井上の治療によって怪我はあらかた治ったが未だ目を覚まさない子供
「心配だから?今日には目を覚ますって浦原さんも言ってたし...」
「そうじゃねぇんだ あいつが担ぎ込まれた時...」
順を追って説明すると 井上は俯いたり顔を傾げたりといった具合だった
「なんで助けようとしている黒崎君を傷つけるなんてことを?私には分からないな」
助けようとしてくれている人の意思を無下にしてまでそんなことをする意味が本当に分からないと井上は言う
「自分なりに考えてみたんだ...もしかして『自分がやらなきゃいけない やりたいことだったから』だからそれを横から搔っ攫おうとした俺に怒ったんじゃねぇかな」
「もし俺が井上の兄貴の事を全部浦原さんが『ワタシがやるんで黒崎さんは引っ込んでてください』とか言ってきたらぶん殴ってでも拒否するだろうし」
そんなことを言っていると井上はすこし俯いて顔が赤いような気がした
「...う うーん!私にはよくわからないけど黒崎くんはその子の考えをそういう風に考えてるんだね!うん!」
捲し立てるように言いつつ帰り道を妙にバタバタとしている井上と共に進んだ