宣戦布告
キャラ崩壊・解釈違い注意!!2年間に及ぶ修行を終えて再びシャボンディ諸島に集結することに成功した海賊“麦わらの一味”。挨拶もほどほどに、いよいよ出航の時が近づいていた。
…のだが、久しぶりに帆が張られ、張り切っているサニー号に海軍の軍艦が近づいてきていた。
ウ「げっ、海軍!」
ナ「嘘!?もうすぐ出航なのに!?」
サ「ったく、もうちょい再会の喜びを分かち合わせろってんだ。」
ゾ「どうする、戦るか?」
突然の襲来に慌てふためく船内、しかし海軍はそんな状況お構いなしである。
ドン!ドン!という音とともに、サニー号に向かって砲撃が飛んでくる。
ウ「やべえ撃ってきた!」
ゾ「へへ…戦る気満々だな。」
いくら頑丈なサニーとはいえわざわざ砲弾を受けてやる義理はない。一味全員が即座に臨戦態勢に入る。すると……
「”虜の矢“!」
どこからともなく女性の凛々しい声が聞こえて来る。…かと思えば飛来した砲弾が力なく海に落ちていった。
ウ「今度はなんだ!?…ありゃ海賊船か?」
また別の敵が来たのかとウソップが突如現れた船を望遠鏡で見る。
ロ「あれは九蛇のマーク…」
ナ「九蛇?」
ロ「七武海“海賊女帝”が統べる屈強な女海賊たちよ。」
ウ「七武海!?何じゃあの絶世の美女は!」
サ「(石化)」
ブ「ま、眩しい!光ってます!美しさが留まるところを知らない!し、しかしなぜ七武海がここに…?」
ル「お、ハンコック達だ!」
ウ「え?」
「(ルフィ…今のうちじゃ)」ウインク
ブ「わぁっ!今こっちに目くばせを!」
ル「助かった!今のうちに出航だ!」
ナ「あの七武海と知り合いなの?」
ル「ああ、おれ『女ヶ島』に飛ばされたからみんな友達なんだ。」
ウ「『女ヶ島』って伝説の女だらけの夢の島!?ホントにあんのか!?」
サ「…あの女帝と仲良し……!?」
皆がルフィと海賊女帝と知り合いなことに驚く中、地獄で2年を過ごしたこの男だけは違った。
と思われたが…
サ「おめえちゃんと……!?」
あまりの嫉妬にルフィに掴みかかりそうになるサンジだが、すぐ隣から感じた自分をも越える嫉妬の念に思わず立ちすくむ。
マ「ルフィ?」
ル「ん?なんだ?」
サンジをも凌ぐその念を発していたのはマリアンヌだった。
マ「女ヶ島にいたってホント?」
ル「おうホントだぞ。でも最初は襲われたんだぞ、『男だから』ってよ〜酷いと思わねえか?」
マ「“服従の白”」
マリアンヌの問いをルフィが肯定した瞬間、目にも止まらぬ速度でルフィの背中に絵の具を塗り、お得意の『カラーズトラップ』を発動させる。
ル「ん?今おれになんか描い「正座」うおっ!?」
マリアンヌが静かに言ったその言葉に反応して、ルフィの身体が勝手に正座の体勢を取る。
ル「怒ってんのか…?」
ようやくマリアンヌのただならぬ雰囲気に気付いたようだ。
マ「まだ怒ってないよ。」
ル「“まだ”ってなんだよ!」
マ「これからのルフィの態度次第で怒るかどうか決めるってこと。」
ル「どういうことだ?」
マ「まあいいから。はい、じゃあまず女ヶ島に飛ばされてからのこと覚えてる限りでいいから話して。」
ル「え?えーっと……」
背中に塗られた白色の絵の具の効果により、マリアンヌに言われるがままルフィは話し始めた。
マ「…なるほど、特に問題はなさそうだね。」
ル「もういいだろ〜?」
マ「まだだよ、最後にあの七武海の人とのこと話して。」
…もうお気づきだろうが、ハンコックはルフィに惚れている。どころか求婚すらしている。ルスカイナ島での修行の最中も何度か求婚されている。
果たしてマリアンヌがこの事実を知ったらどうなるのか。
マ「随分とお世話になったんだね。」
ル「ああ!あいつはおれの恩人だ!」
マ「ごめんねいきなり変なことして。浮気とかしてないかなと思って。」
ル「浮気ぃ?するわけねェだろお前がいるのに。」
マ「そうだよね、ごめんね疑って。」
ル「あーでも『結婚して』っては何回も言われたな。」
マ「……へえ」ゴオッ
それを聞いた途端、マリアンヌから禍々しい気配が溢れ出す。
ル「ちょっ、待て!断った!ちゃんと断ったぞ!」
マ「…ならいい。」フッ
ナ「(あれは敷かれるわね。)」ボソボソ
ロ「(この2年でさらに強かになったみたいね。)」コソコソ
2年前も基本的にマリアンヌが上手だったが、2年の空白を経てさらに加速したようだ。
マ「それにしても、海賊女帝に好かれるなんてすごいね。」
ル「そうかぁ?特別なことなんもやってねェけどな。」
(ルフィのことだ。きっと七武海の人に刺さる行為を無意識にいくつもこなしたんだろうな。
…まあルフィが好かれるのは嬉しいけど、さすがの私も嫉妬とか、そういう感情は湧く。
しかも絶世の美女って言われてる人か〜ちょっと相手が悪い気もするけど、ルフィがそう簡単になびくような男じゃないことも知ってる。
そのハンコックって人のことは全然知らないけど、女の勘ってやつかな、かなり手強い気がするんだよね。
…ちょうど本人が近くにいるし、牽制しておこうかな。たぶん伝わる。)
少し思考を巡らせたマリアンヌは、ふと九蛇海賊団の船へ視線を向ける。
そして他の誰でもないハンコックに視線を合わせて、優しく、そして妖しく微笑んだ。
まるで“ルフィは渡さないよ”と言わんばかりに
※こっから蛇足
砲弾を沈めたあと、ハンコックはサニー号を凝視していた。彼女が最初にルフィに求婚したときに言われたのだ。
“もう決めた人がいるんだ!!”
…と。だがそれで大人しく引き下がれるだけの経験や余裕を、この女帝は持っていない。
なので一味が集合した今、果たしてルフィの“決めた人”が誰なのかを探している。本人に聞けば一発だろうに。
「(どこの誰じゃ!?妾より先にルフィの心を射止めたという憎き女は!)」
「(蛇姫や、とても人に見せられたもニョではない顔になっておるぞ…)」
「(あの橙色の髪の女か!?それとも黒髪のほうか!?もう1人女…いや女子がいるが、流石にあやつではないだろう。)」
確かにマリアンヌは見た目だけなら少女だ。しかしこのマリアンヌこそ、他ならぬルフィの恋人である。
マーガレット「あ、ルフィが小っちゃい女の子に正座させられた。」
スイトピー「説教されてるのかしら?あの男をあんな風にさせるなんてすごいわね。」
「(あの小さい女子が!?しかしルフィ!なぜかような者になすがままなのじゃ…?)」
「ふむ…どうやらあニョ小さき者がルフィ殿ニョ決めた人とやらニョようですな。」
「!?ニョン婆、なぜそう言える!?」
「ルフィ殿が特に反抗ニョ意思を見せていないことが何よりニョ証拠…男とは惚れた女には抵抗できない生き物なニョです。」
「そ、そうなのか。し、しかしあのような女ならば勝機は妾にあるはず…!」
「さて、それはどうですかな。」
「…どういう意味じゃ?」
「あニョ女子ニョことは何も知らぬゆえ、完全なる勘にはなりますが、あやつは手強いですぞ。」
「…ふん、老いぼれの勘なぞ当てにならん。妾は諦めんぞ!必ずやルフィの心を射止めてみせる!」
マーガレット「あ、あの子こっち見てる。」
改めて決意の表明をするハンコックの耳に、マーガレットの気になる呟きが入る。
「(…なんじゃ!?どう考えても妾を見ておるぞ!どういうつもりじゃあの女!?)」
その直後にマリアンヌが微笑む。まるでハンコックの気持ちをわかっているかのように───
「!?」ゾワッ
海賊女帝であり絶世の美女とも呼ばれるハンコック。彼女の前では同じ女性ですらその美しさに見惚れてしまう。
━はずだったのだが、小さい女子…マリアンヌはハンコックに、“女帝”に微塵も怖気付く素振りを見せなかった。それどころかまるで宣戦布告でもするかのような態度を見せた。それが、ハンコックにはとてつもない衝撃だった。
「…ふははは!面白い!“海賊女帝”たる妾にも怯まぬその心意気!しかと受け取った!」
「見ておれ!最後にルフィの隣にいるのはこの妾じゃ!」
ハンコックは船の柵に片足をかけながら、例の見下す姿勢を取りながらそう叫んだ。彼女はいまこの時、『恋のライバル』に出会ったのである。
同じ男を愛する者として、時に高め合い、時に慰め合う“対等な存在”を────