“宝物”を拾ったキッド海賊団
・キッドがルフィとロー似の子供を拾うスレに触発されたSS
・元スレのネタの性質上、上記2人の死を匂わせる部分があるので苦手な方は注意
キッドがその“宝箱”を拾ったのは全くの偶然だった。
偉大なる航路特有の異常気象の嵐地帯を抜けて一息ついたキッド海賊団の面々が看板に見つけたのは、大の男が持っても一抱えもある大きな箱だった。
普段ならこんなあからさまに怪しいモノは無視して厄付きだと海に流してしまうのだが、そのときばかりはなぜか「これを今開けなければお前は後悔するぞ」と自分の直感が告げていた。海賊王にまで上り詰めたその男は自分の直感を信じていた。自分の直感が開けろと言うなら、まあ開けるべきなんだろう。
軽く揺すってみた宝箱は持てないほどの重さではなかったものの、それなりの重量があるようだった。
「おう、お前ら怖ェんだったら離れてろ」
クルーたちには一応距離を取らせる。普通ならこういう確認作業は下っ端にやらせるものなのかもしれないが、不測の事態に対してこの船で一番対応できるのはキッドだ。それにこれはキッドの勘一つで半ば無理やり開けるようなものなのだから、自分で確認するのが筋だろう。
面白そうだ、いや危険だと口々に騒ぎながらも結局は興味津々な様子を隠せないクルーたちを尻目に、なぜだかふと、今から1年近く前にこの世を去ったライバルたちのことを思い出した。
麦わら帽子をかぶったあの男なら、真っ先に腕を伸ばして開けてクルーに怒られるのだろう。
反対にユキヒョウ柄の帽子をかぶったあの男は、こういう胡散臭いものにはクルーの安全を考えて一切手を出そうとはしない。
(ケッ、どいつもこいつもさっさといなくなりやがって)
(おかげでおれ様が空いた席に座る形になったじゃねぇか)
(さて、何が出てくるもんか…)
宝箱を揺すったときの様子からして、財宝がたんまりというわけではなさそうだが、何かしらのモノが入っているようなかすかに鈍い音がしたので、“何か”は入っているのだろう。何が出てきてもいいように覚悟だけはして、心持ち慎重に箱のふたを開ける。
「ん…?んんんんん???」
「なんだこりゃあ!!??」
入っていたものがあまりにも予想外すぎて思わず大声を上げてしまう。
「キャプテン!大丈夫ですか!?」
「あ? あ゛ー………、いや、お前らこっち来て見てみろ。あー、まあ、危険なもんじゃねぇよ」
入っていたものは何とも説明に困るものだったため、百聞は一見に如かずだと下がらせていたクルーたちを呼び寄せる。キッドの言葉にクルーたちは困惑しながらも恐る恐る宝箱に近づいて、中身を確認する。
「は?」「え??」「はぁ!?」「なんだこりゃ!!」
箱の中身を除いたクルーたちの口からも次々に困惑の声が上がった。
だってそうだろう。なぜなら嵐とともにヴィクトリアパンク号にやってきた頑丈そうな宝箱に入っていたのは、黒髪の双子の赤ん坊だったのだから。