安らかな眠り
いつもの悪夢で目が覚めた。
身体を起こそうとしたが自分のものではない体温を感じて動きを止める。
ファーミンさんが私を抱きしめて眠っていた。
「また勝手にベットに入り込んで……」
そう呟いてファーミンさんに手を伸ばそうとする。
しかしその手は動かなかった。
偶に思う時がある。
本当に私の身体は無事なのかと。
これは死にかけの私が見ている白昼夢なのではないかと。
「オーター……」
私は思わずビクッとしながらファーミンさんに目を向けた。
「ネズミは美味しくないから食べちゃダメ……セルの作ったご飯あげるから……」
「……何の夢を見ているんですか」
そっとベットの近くの棚に手を伸ばす。
今度はちゃんと動いた。
ベットの棚に置いてあった手錠型の魔道具を取り出す。
その魔道具を私とファーミンさんの手に嵌めた。
その瞬間身体に走る快楽に悲鳴をあげそうになったが何とか噛み殺す。
ファーミンさんの方に顔を向けるといつもよりも穏やかな顔で眠っていた。
他者との感覚を繋げて平均化する魔道具。
貰った時は何に使えばいいのだろうと思ったが、ファーミンさんとこういう関係になってからは時々使っていた。
前にファーミンさんと身体が入れ替わった時のことを思い出す。
あんな身体で普通は動けるはずがない。
きっと目の前の人はいつも無理をしているのだろう。
……無理をしているのに、私を手伝ってくれているのだろう。
少しでも代わりに背負いたいと思った。
だってファーミンさんと一緒だとあまり悪夢を見ないから。
ファーミンさんにも安らかに眠ってほしいとそう思ったのだ。
ファーミンさんと繋がっていない方の手を彼の背中に回してから目を閉じる。
今度は悪夢を見なかった。
※
翌日
ファーミン「この手錠なに?」
オーター「内緒です」
ファーミン「そうか」
オーター「はい」