孤島の聖杯戦争の後日談的なの

孤島の聖杯戦争の後日談的なの



秋口になれば熱燗での晩酌が美味い季節になる。


「そろそろ結婚がしたい!!!」

「大声を出すな、近所迷惑になる」

「だいじょぉぶ、防音設備しっかりしてるからウチ!」

「……そうか」


居間の机の上には、空っぽになった酒とほぼ食われたおつまみ……つまるところ、晩酌もたけなわと言った状態だろうか。

生まれついて祖先から受け継ぐ呪いのせいで酔えなかったマスティハは、いざ呪いが解かれて酔えるようになるとブレーキがなかなか効かなかった。

知識として大体どのあたりまで飲むと不味いのかくらいは仮にも酒のプロフェッショナルなので知っているが、体験としては全く知らなかった事に加え今まで知らなった感覚を面白がり飲み過ぎてはカルナに介抱されるという事をちょくちょく繰り返してしていた。


あの島での聖杯戦争より前と比べると晩酌の際に目を配らなければいけない事が増えたカルナは、健康面の心配も相まり普段よりも酒で少し饒舌になった口からチクチクと独特の喋りで毎回止めている。いるが、それはそれとして止められていない。


「結婚、伴侶を得るか。お前が……いや、結構な事だ。己の事しか考えてないようだと思っていたが、そうではないと知り安心した。」

「なんかさりげなくグサッと刺された気がする」

「気のせいだ、気にするな。だが、その発言はいささか周りの見えていない浅慮であると言わざるを得ない」

「気のせいじゃないだろこれ、言葉で刺してるだろ」


お互い酔いが回っているのか、赤みの差す頬でずかずかと言い合っているがカルナの言いたいことは別のところにある。


「……となりに住んでいるあの男はどうするつもりだ」

「あっ」

「白昼夢を見るが如く狂気的な男だ、人生の岐路に立つのならば何かしら伝えなければ後々災いが降りかかるだろう」


島での聖杯戦争から諸事情あり、受肉したディオニュソスが(勝手に)マスティハの家の隣に引っ越してきている。

ところがこのディオニュソスがマスティハの先祖由来で因縁があり、愛憎やら狂化や諸事情によりその因縁のある先祖とマスティハを混同して認識している。

そのような情緒があまり安定しておらず、しかも出力が半神かつ受肉サーヴァントという本気で暴れたら何が起きるか分からない存在なため扱いは慎重にならざるを得ない。というか慎重にならなかったらDead or Dead。つまり人生が詰む。


「いやぁ……でも……怖くない?」

「仕方あるまい。何か先んじて伝えておくなら俺が傍に居よう」

「お前が居ても怖いもんは怖いわ~~~いやだ~~~結婚したいし子供欲しいけどそれ伝えたらなんかどっかから子供持ってきそうな感じがしてやだ~~~」

「……(どっかから持ってくるどころか最悪お前とあの男の間に子供ができる羽目になりそうだが)そうならないように務めるしかあるまい」

「なんか今物凄い内容ハショられてる気がするが……いや、でも何もしてない今の段階で悩んでも仕方ないな。飲むか!!!!」

「もう飲むな、そろそろ無秩序な酔っ払いができる頃合いだ。お前は酔うと普段から輪にかけて鶏のように不明瞭な言動を繰り返す事になる」

「誰が鶏じゃい誰が」



数時間後



「あぁ〜〜〜やっぱけっこんしたいしこどもほしいよ〜〜〜〜!!!」

「寝ろ。その話はもう聞いた。早く寝ろ。動くな、ジタバタするな」

「わぁ……」


案の定、酔いが回りすぎて呂律も回らなくなれば顔も熱を出したように真っ赤で目も潤み、言動も覚束ない典型的な酔っぱらいが爆誕した。カルナからすれば大体いつものマスティハだ。

もうこれ以上付き合ってると急性アルコール中毒待ったなしだと判断したカルナは素早くマスティハを掴んで寝床に投げた。

寝床に入れられ毛布を被せられるとすぐ瞼は重くなる。


「誰を連れて来てもいい、お前の人生だ。愛したい者を愛し、人生の共づれにするがいい。だが、契る前に必ず俺にも一目会わせて欲しい」

「おぁ……おう……なんでぇ、そんな……」

「どうも、オレとは違いマスターは奇妙な不運と巡り合う運命にあるらしい」

「お、おまえに〜いわれたくねえ〜」

「つい数ヶ月前の聖杯戦争の事といい、何があるかわからん。約束できるか?」

「わかった、わかった……」

「よし」

「おやすみー……」

「ああ、おやすみだ。マスター」



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