子供のやることなので

子供のやることなので



うぇこむんどのらすのーちぇすとか言う所に連れて来られてから恐らくは10日くらい経っただろうか

窓のない部屋に放り込まれて時間の感覚は正直怪しいが差し出される食事や睡眠の回数からして多分あっているだろう


連れてこられた当初はどんな酷い目に遭わされるのか戦々恐々としていたし、いざとなったら自爆でもなんでもしてやろうとオカンたちに聞かれたら正座で3日は詰められるだろう覚悟も決めていた

けれどそんな覚悟は無駄だとでも言うように部屋に放り込まれたアタシにあいつが告げたのは『ここから出ないこと』だけだった


恐らくはオカンたちをおびき寄せるための囮にでも使うつもりなのだろう

糸目の銀やら金やらいう奴がアタシのことを指して『あの人の子』とか何とか言ってたし(父親目当てやったら是非とも捕まえてアタシの目の前に引きずり出してくれ)


使い道があるせいか我儘も多少であれば許されているようでほしいと言った物は与えられたし、部屋から脱出しようと暴れてても咎められない

後者は部屋から出られていないことが答えなのかもしれないが、まるで『お前如きが暴れようが暴れまいが同じだ』とでも言われているかのようだ


「こんなことなら日めくりと時計も用意してもらえばよかった」

与えられたぬいぐるみを抱えてベッドに座り込む(頼んでないのにぬいぐるみや絵本やらは用意されていてあいつらはアタシのことを舐めてると思う)

100年単位で生きてる老人には分からないだろうが正直現代っ子には時間が分からないというのはストレスなのだ


「ルキアちゃんや一護達が気に病んでないとええんやけど……」


自分でも無理だと思いつつそんなことを呟く、友達を助けに来て自分が誘拐されたなんてとんだ笑い話だ

きっと彼らは自分が捕まってたせいだとか自分が頼ったせいだとか考えているだろう、早く帰って心配をかけたことを謝らなくては


そう思っているのに今の自分は部屋から出ることすら出来ておらず自分の無力さを痛感する

そんな後ろ向きな考えのせいか、それともこの部屋に何か仕掛けられているのかここに連れて来られてから内側でぐるぐると何かが渦巻いている気がする

力を使おうとすればするほどそのぐるぐるも大きくなって飲み込まれそうになる


「呑まれたら、どうなるんやろ……」


ここに来てから独り言が増えた気がする、誰からも返事がないと分かっているのに口から言葉が飛び出てしまう

今までは周りに皆がいたから一人というものがどれほど心細いか気づかなかった

このままだと不安に飲み込まれそうだと頭を振って立ち上がって、ぐるぐるに飲まれない程度に力を使って扉を殴打する

いつも通り扉は無傷……かと思いきや塵も積もれば山となる、雨垂れ石を穿つの言葉通り苦節100回目(ということにした)にして漸く道が開けたのだった


何かの罠じゃないのかと思いつつ恐る恐る部屋の外を見てみる、外はどこまでも続くのだと思うほど長い廊下でそこにも窓はなかった

ひょっとして窓が無いのは地下だからだろうか?そんなことを考えつつやっと巡って来た脱出の機会だ、次があるかも分からないと部屋を飛び出した


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なお直ぐに連れ戻された模様

藍染は自分の目の届く範囲にいるので自由にさせてるし、娘ちゃんがおねだりすれば大体のことは聞いてくれる

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