嫉妬=惚気

嫉妬=惚気



「おかえりなさい、あなた……?」

帰ってきたトレーナーを迎えるとカフェは違和感を感じた。

「あなた…?服からウマ娘の匂いが…」

「あぁ、今の担当してる子のだね。人懐っこいと周りから有名でね」

カフェと結婚した今も現役でトレーナーを続けているのだから当然である。そのうえ複数人を担当しているのだから匂いの一つは付くことはカフェにも重々承知の上である。

しかし負けず嫌いのウマ娘の性故だろうか、カフェの心は嫉妬の炎が広がっていたのだ。

「……浮気ですか?」

「いやいやそんな事ないって!」

「口では何とでも言えます!そうでないのなら私の質問にも答えられますよね!?」

「なら受けて立とう!どんとこいだ!」


お互い真意は分かっている。しかし収まるためには必要な事であると理解したのだ。そしてその後の事も…

「今日、朝私が淹れたコーヒーの味は?」

「簡単だ、砂糖小匙1.5回分!それとあのメーカーのガムシロップ一つ!」


「……正解です…しかし次はどうですか!?先週の休みにレストランでタキオンさんと出くわしたあの日!何回お互いの料理を口移ししましたか!?」

「自分は10回!カフェは13回!それとお互いの飲み物を交換して飲んだのを5回!」


「……なら、今日の朝!行ってきますのキスをしましたが普段とは違いましたよね?普段との理由を答えて下さい!」

「普段のキスは1〜2分!今日は4〜5分!そしてその間にカフェが5〜6回自分のを流し込んで、俺のを啜った!」


「最後の問題です!それが分かっているなら!今私に言う言葉は分かりますよね!?ヒントは無しです!」

「俺は!どんな事があっても君だけを愛して!君だけを護る!一生!ずっと!その先も絶対!」

「………あなたっ!」

そうトレーナーが叫ぶのと同時にカフェは抱きつき長く深く熱い口付けをした。

「不安にさせてごめんねカフェ」

「良いんです…分かっているのに私が勝手に嫉妬してしまっただけですから…」

「確かにカフェの言うことも分かるな…俺が君なら多分同じ事をした」

唇を離して抱き合いながら互いに謝る二人。ふとトレーナーがカフェの方を向くと下目遣いで紅く顔を染めてこちらを見つめていた。

「……ならお願いがあります…他の人にも分かる様に私をあなたの身体に染み込ませて下さい…」

「学生だったあの頃…あなたへの想いを抑えていたあの頃とは違うんですよ…?」

再び唇を奪い、そう囁く様に懇願するカフェ。

「ならそうだな。俺も君に自分自身を染み込ませたいな。独り占めしたいのは俺も同じだからな!」

その日の夜、二人の寝室からは獣の様な物音と嬌声が木霊し、朝日が昇るまで止む事は無かった…


———後日某喫茶店にて

「という事がありましてね」

「……おかしいねぇ…私の味に合う紅茶を選んだというのに…どうしてこんなに甘味が強いんだろうねぇ…」

「ならコーヒーでも頼みましょうか?とびっきりブラックのものとかオススメですよ?」

「それはどうかと思うねぇ!絶対頼ませないねぇ!やめておくれよぉ!」

「それにその話は数週間前のだろう!?なんで君の旦那の匂いがまだ残ってるんだい!?」

「あの日から…毎日ではないですが…その…マーキングとして5〜6日連続とか…でも直近は2日前ですから」

「でもそうですね…互いに焦らして昂め合って上り詰めた果てでその分を貪り合うのも中々…」

「……だれか丁度良い紅茶を持ってきておくれよぉ…」

「すみませんブラックのコーヒーを…」

「アールグレイで頼むねぇ!」

ため息をつきながら友人の甘々な惚気話を聞かされているのはアグネスタキオン。カフェの話によるとあの後、トレーナーに染みついた彼女の香りが効いたのか、学園内でも話題になるだけでなく今の担当の子もスキンシップはなりを潜め、逆に自分とカフェについての"甘々な)話を延々と質問されているようだ。

カフェも時折り学園に赴き様々な話をした結果、担当の子からも応援されるようになったとか。

「でも丁度良いねぇ。クククッ!モルモット君に私からもマーキングをしてみようかねぇ…精がつく何かでも作ってもらうとするか…カフェはどうしているのかい?」

「え?そんな事は一度も…」

「ええーーーっ!?」

友人の"ソレの"底知れなさに改めて驚かされるタキオンなのであった…

尚、タキオンがそれを決行した翌日の朝に真っ白に力尽きているタキオンの姿があった事、そして何処からともなくアメリアの遺言が流れていたのはまた別の話…


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