始まりのエピローグ
「お久しぶりですね、先生」
「ご存知かと思われますが、例の事件での功績が認められましてね。こうして無事連邦生徒会に返り咲いたと言う訳です───最も役職はありませんが」
「お陰でこうしてシャーレに使いっ走りをする羽目になって……知らなかった?事件の後処理が忙し過ぎて?……そう、ですか」
「…まあ、今はこの様な立場に甘んじていますが、超人には超人に相応しい立場があるというもの。直ぐに登りつめてやりますよ」
「……は?“役職”ならちゃんとあるだろうって?皮肉ですか?違う?なら一体何だというのです」
「───いえ、答えなくて結構です。結構ですとも。無駄話は辞めて、さっさと本題に入りましょうか」
「幸か不幸か、例の事件で起きた通常ではありえない交流がきっかけになったのか、今現在トリニティゲヘナ間で未曾有の融和ムードが漂っています」
「それは事件被害者を発起人に、トリニティで有志らの手によって立ち上げられた二校間で交流するための会。その活動が精力的に行われ始めたのも要因でしょう」
「ああ、その影響はこの連邦捜査部シャーレが拠点を置くD.U.地区でも散見されるようになりましたね。なんとトリニティ生とゲヘナ生が仲良く揃ってショッピング!なんて光景も、もう珍しいものではないのです」
「これはとある物事のやり直し、その機運が高まってきたと言えるでしょう」
「……ねえ、先生。覚えていらっしゃいますか?」
「“エデン条約”」
「過去連邦生徒会長が提唱し、現在、実質破棄状態に陥っているこの条約」
「それを今こそ再編して調印すべきではないかという声がトリニティ、ゲヘナ内問わず上がり始めました。連邦生徒会でも同様に」
「そして上はあなたの無駄に広い顔と人脈があれば可能だと判断したようです」
「……ここまで言えばもう分かりますよね?連邦生徒会はエデン条約の締結について再び二大校に提唱するつもりです」
「言うなれば現在の状況に即した新たなエデン条約───新エデン条約機構(New Eden Treaty Organization:NETO)を構築するにあたり、トリニティとゲヘナ間の仲介役としての働きをあなたに期待しているという訳です」
「可愛い生徒たちの望みです。勿論協力して頂けますよね、先生?」
「───快い返事、ありがとうございます。あくまで本日は触りを伝えに来ただけですので、詳しくはまた後日追って伝えます」
「では、私はこれで……まだ何か話足りないことでも?」
「……私の役職について?それ、掘り下げる必要ありますか?」
「はあ、まあ良いでしょう。どうせ早く帰ってもつまらない雑用を押し付けられるだけですし…あなたの力強い断言に免じて特別に聞いてあげますよ、どうぞ」
「“勇者パーティの遊び人”?」
「……………」
「───“賢者”の間違いですよ、先生!」