始まりの2人
逃げないと、逃げないと、逃げないと…ひたすら走った。
あの人から、あいつから、それで…
走る。まだ、朝は来ない。
「お前、迷子か?」
ふと、子供の声が聞こえる。
「…別に迷子じゃねぇ。」
軽く気配を探るが敵意も無い、ただの子供の声だ。
けれども自然と足を止める。
「だってスゲェ寂しそうな顔しているし!」
「………」
振り返る、そこにいたのは思っていたよりは年が上そうな麦わら帽子を被った人間の子供だった。
「そんなことはねぇよ」
その子供におれは言葉を返す。
「してた!」
「してねぇ」
「してた!」
そんな問答を繰り返す。
逃げ切れたと油断していたのか悪かった。
「ロー」
声がふと耳元で聞こえる。
「!」
咄嗟に子供を移動させる。
「ぐっ…」
血による杭に撃ち抜かれる。
「油断はいけないと教わっただろう?」
「あいにくおれ(・・)は教わってはいないな…」
幸いにも足は繋がっている。
「おい、ガキ。さっさと逃げろ。」
子供を背後に庇う。おそらく俺では勝てない。それに、"おれ"はこの人を殺せない。
「いやだ!」
子供は否定をする。
「邪魔だ。」
「だって、お前すごく怖がっている!」
「…」
思わずおれは黙る。
傷つけたく無いのも、あの人が怖いのも本当だ。
「一緒に逃げる!」
子供はおれの手を握る。
「吸血鬼を庇うなんて馬鹿なやつ…」
「そんなの関係ねぇ!」
ため息を吐く。
「ずいぶんと仲がいいなぁ」
声が聞こえる。目の前の男は笑う。
「なら、そいつを殺せばお前は帰るか?」
笑いを消しその業血鬼はおれに向かいそう話す。
「……帰るつもりはねぇ。」
おれも"おれ"もそのつもりはない。
「そうか。なら…」
複数の杭は子供を目掛けて飛ぶ。
「ちっ!」
庇わない選択肢はない。が…
「っ…」
捌き切れず腕がもがれ、子供の身体へと掠った。
「おい!大丈夫か!!」
「大丈夫だ!お前こそ、腕が!」
「平気だ!」
子供を庇いながら前へと立つ。
次の攻撃へ備えて武器を構える。
「やっぱり優しいなぁ。"ロー"…だから、お前をおれの…」
「こいつはモノじゃねぇ!!」
目の前の業血鬼が何かを言う前に子供はおれの前から出ていき拳を突きつける。
「?おい!なにを……!?」
「ぐっ…」
業血鬼を殴ったと思ったらその業血鬼は少しだけ苦しみを訴えるかのような不快さを出した。
「もしかして、棘血体質…」
"おれ"に刻まれた知識はおそらくの知識を示した。
「珍しい体質だが…この状況なら…」
「いたぞ!業血鬼だ!」
付近から誰かの声が複数聞こえる。
「時間切れか…。流石にあの数は面倒だな…」
逃げるように業血鬼は去っていく。
「おい!待て!」
追いかけようとするが、
「おい!お前ボロボロなんだぞ!」
「だから、平気だ!」
「嫌だ!ほっとけねぇ!」
「平気だ!」
「嫌だ!」
「あの…保護したいんですが…」
「「あ」」
それがおれと子供ーーー麦わら屋、いやルフィとの出会いだった。
あいつともどもあいつの祖父に拳骨と説教を受けたたり契約を結ばされたりとか暮らし始めたとか色々とあった。
契約の理由としてはお互いにほっとけなかったこと、痛感のないおれと棘血体質のルフィの組み合わせだったことがあったり、他にもあったり、約束事でもめたりなどがあったが割愛する。
ロー:屍鬼/界律 欠落 痛覚
傷号 満月の瞳
《無垢なる赤》を持っていた少年の遺体と《聖血》を持っていた吸血鬼の遺体を組み合わせて生まれた青年
人格や記憶のベースはどうやら少年の方であり、名前もそちらから借りている。
(早く自由にさせてやらないと)
ルフィ:求道/戦衛 喪失 善悪
傷号 棘血体質
たまたま探検に出掛けている時にローを見つけた。
自身の体質に自覚はなかった。
(簡単には死なせねぇ、おまえはおまえだ)