姉妹は一緒プロローグ
エレジアの海のそばの崖の上でウタは悲壮な決意を固めていた。
ネズキノコはある程度確保した念の為後日もう少し採取するつもりだ。スポンサーへの根回しも済んだ。後は計画を実行するだけ…この島で自分が犯した罪。自分に縋るファンの願い。自分を庇ってくれた父への想い。その全てにケジメをつけるために…
心残りがあるとすれば新時代の夢を誓い合った幼馴染ルフィと…自分の半身であるアドのことだ…
この二人ともう一度出会えれば…
そんな迷いを振り切るように何度も首を振った。
ビュウウウッ!
今日は風が強い…
身震いをしたウタは大事の前に体調を崩すわけにはいかないと帰路に着くことにした。そして海賊船で育った自分には馴染み深い海の景色を噛み締めるように見ながら海岸沿いを歩いていた。
「お姉…ちゃん…?」
ふと誰かの声がした。この島には自分とゴードンしかいないはずなのに…⁉︎
慌てて声がした方を振り向くとスーツを着た女が呆然として立ち尽くしていた。その髪は自分と同じ二色に分かれていて懐かしさを感じ…
「…アド?」
最愛の妹の名を呼んだ。
「お姉ちゃん!」
「あ…アド⁉︎アドなの⁉︎」
二人はお互いの存在を確かめるよう涙を流しながら抱き合った。
「信じてた…いつか会えるって…ずっと信じてた…!会いたかった!会いたくて…会いたくて…私…!お姉ちゃん!」
奇跡だ…最後に奇跡が起こったんだ…
「本当にアドなんだ…!私も…ずっと会いたかった…」
二人は離れ離れだった12年を埋めるように強く強く抱きしめあった。
しばらくして落ち着いた後二人はお互いのことを話し合った。
父に置き去りにされたこと。療養で降ろされた街が海賊に襲われ父と離れ離れになったこと。
この島で歌手の勉強をし配信で世界に歌を届けたこと。賞金稼ぎになって悪い奴らをたくさん捕まえたこと。
そして離れてしまった自分の半身をずっと求め続けたことを…
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「つい話し込んじゃった。暗くなってきたね?」
「そうだね…っあ!大丈夫だよ自分の船で寝るつもりだから。」
そう言われてウタは「ダメよ何言ってるの⁉︎」と怒って自分が住んでる古城に泊まるよう提案しアドは二つ返事でOKした。
早速帰ってゴードンに報告しないと!今日は私の部屋で一緒に寝ようか?12年ぶりなんだ二人で寝るの…!
計画実行までの短い間であれど最愛の妹と過ごせることに喜びを感じながら古城へと向かうウタは後ろのアドの様子に気づかなかった。
最愛の姉にドロリと濁りきった目を向けてることに…
終