姉妹
お姉ちゃん、家族との縁を切り方って知ってる?
突然どーしたの???
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「……なるほどねぇ」
「ま、そういう事」
「お父さんとお母さんには?」
「内緒で、上手くいかなかった時に備えてだから」
「りょーかい」
恐ろしい妹を持ったもんだと、不知火ころもはスマホ片手にポチポチと弄び、
不知火フリルは爆弾発言した本人とは思えぬ真顔でカリカリとメモを取る。
ただの日常風景、それなのに写真で撮ればかなりの評価が貰えそうなほど、二人は映えていた。
「……ねぇ、フーちゃん」
「なに?」
「好きなんだね、本当に」
「そうだね、まず顔が良過ぎる」
あまりにど直球にそう言う妹に、姉はニコニコと笑う。
花が咲いたように笑うソレは、“彼”絡み以外で見るのは久しい。
「ホント、フーちゃんは面食いだねー。内面も大事だよー」
「お姉ちゃんは内面見過ぎ、内面も良いけど顔だよ顔」
「ゆーくんは顔も良いから〜、磨けば無限に光る原石だよ」
「あーくんも内面良いの、本心曝け出したら百億ドルは余裕」
…………
「「………あははっ/ふふっ」」
沈黙の後に春が来る。
間反対の見た目に、異なる中身。
されど揃いも揃って、似た雰囲気の似た性格の男を好きになったのだから、笑いが込み上げるほど可笑しく感じて止まない。
「やっぱり姉妹だね。真逆なようで、変なところでおんなじ」
「内面と外面、見てるところは違ってるのに結果は同じ、ってところが本当に」
──ホント、似てるよ、私達。
その言葉がどちらから出たのか、二人にも分からなかった。
どっちが言ってても不思議じゃなかったから。
……白と黒とで、こんなにもハッキリ違うのにね。
「フーちゃん」
「なに?」
「失敗しても良いよ、居場所作って待ってるから」
「待ってなくて良いよ、失敗したら未来なんて無いからさ」
「……それ、どっちのー?」
「どっちでも同じでしょ」
「それもそっか」
「……ふふっ、お姉ちゃん」
「?」
「“こういうところ”も、そっくりだね」
「……あははっ」
──『不を知らぬ火』と書いて不知火と読むように、姉妹は不可能を知らない。
知る機会が無かったほどに完璧で、知る必要も無い程に究極で、だからこそ今も絶やす事なく火を燃やし続けた。
そして燃え続けたからこそ……失敗することが何なのかを姉妹は知っているのだ。
「じゃあ成功した時の話しようかー、まず式はどうするのー?」
「当然、ウェディング」
「白無垢にしなよー」
「やだ、絶対に、ドレス着る」
「ふふっ、フーちゃんらしいね」
「お姉ちゃんだってウェディングドレスの方が好きでしょ?」
「んー?私は別にどっちでも大丈夫かなぁ〜」
「ズルくない?その返し」
「どっちも似合うから仕方ないねー」
故に、成功を掴む。
これまで通り、これからと同じように。
……そして全部が終わったら
その時の笑顔は、きっと。
どんな宝石よりも輝いて見えるはずだから。