妖眼の相剣師をお嫁さんにする話

妖眼の相剣師をお嫁さんにする話




おぉ、やけに賑わってる場所があるな。

旅の商人がいい品を仕入れたのだろうか?

もし名工の武具だとしたら買いだぞ、様子を見てみよう!

どれどれ…?ほぅ…これは…

武具ではないが…金剛石の指輪か…

とても…綺麗な細工が施されている…

皆の目を惹くのも納得の品だ…

コレを贈られたら…女性はさぞ喜ぶだろう…

「アヤメはあの指輪が欲しいのか」だと?

そうだな…あんな綺麗な物が貰えるなら…嬉しい…かな…

もっとも、あんな高価な物を渡してくるような相手に心当たりはないし、第一私のような無愛想な女にはもったいないだろうか?

いやはや、いい物を見せてもらったよ。

ん?お前はもうちょっと見ていくのか?

分かった、先に行って準備しているからな。

流石に出発には遅れるなよ?







おぉ、戻ってきたか。

欲しいものは買えたか?

そうか、なら次の目的地に向かうと…

どうした?

なに?「手合わせをしてほしい」だと?

お前から誘ってくるとは珍しいな…

ははん?さては先程の商人から指南書でも買ったな?

面白い…受けて立つぞ!

終わったらその書の中身、見せてもらうからな…!






やり方はいつも通りでいいな?

使うのは木刀1本のみ、先に木刀を手放した方が負けだ。

ほぅ?「今日は勝った方のお願いをなんでも聞くを追加しよう」と?

よほど自信があるらしいな…面白い…!

私が勝ったら今まで以上に鍛えてやる…!

では、行くぞ────

っ!!!


カッ…!ズサッ…!カッカッ…!


ふっ…!


(やるな…初めて会った頃から…だいぶ強くなった…!

だが…特に目新しい技はないな…コイツがここまでのやる気を見せるのは何故だ…?

まぁいい…コイツがやる気を出したのだ、私もそれに応えるまで───!)


カカッ…!カンカンカンッ…!


どうしたどうした!その程度では私は捉えられんぞ!












カンッ!カンカン…ズサァァァ…!


くっ…!


(コイツ…ここまで粘るようなヤツだったか…!?

いつもならとっくに音を上げる頃合だ…!

結局、新しい技の類はなかった…しかも…

既に肩で息をしているではないか…!

もう限界のはずじゃないのか…!?

まぁいい…疲れからか、お前の構えに隙が見えてきたぞ…!)


まさかお前がここまで食らいつけるまでになったとはな!見直したぞ!

だが今回はここまでだ!

次で決め…


シュタッ…!


……何っ!?

(一気に懐まで間合いを詰めてきただと!?

まさか敢えて隙を見せて私を誘ったのか!?

それとも最後の力を振り絞って…!

不味い…どちらにせよこれは捌ききれん…っ!)


パァン!!カッ…カッ…カッ…


ふっ…ふぅ…

本当に腕を上げたな…!

まさか私が…剣を弾かれるとは…!

今日の所は…私の負け…


バタッ…


お、おい!?大丈夫か!?














やっと目が覚めたか…?

馬鹿者…無茶し過ぎだ…

そんなに私に勝ちたかったのか…?

「手合わせの…結果は…?」お前覚えてないのか?

最後の一刀、私はアレを捌ききれなかった。

誇れ、お前の勝ちだ。

さて、何でも言う事を聞く、だったか。

良いぞ…言ってみろ…

今日は特別に…その…

え…えっちなことでも…聞いてやらんことも…ない………ぞ………?

「アヤメはむっつりさんだね」…!?

う、うるしゃい!それはお前がいつも女に鼻の下を伸ばすからだろ!?

だから私が…仕方なく…お前の相手を…!

って…言わせるなけだものぉ…!


はぁ…全く…

それで…私は何をすれば良いんだ…?

「受け取って欲しいものがある」…?

それは構わんが…一体何を…




パカッ…




コレは…さっきの商人が売っていた…

金剛石の…指輪…!?

お、お前っ、どうして!?

「アヤメが欲しそうに見ていたから」?

だ、だからってこんな高価な…

そんな金、一体どこに…

「いつかアヤメに恩返ししたいと思ってずっと貯めてた分があった、全部使ってしまったけどアヤメのためなら本望だ」…?

む、むむむむむ…!

そ、それなら普通に渡しても良かっただろ!?

なんで…その…私に勝った時のお願いだなんて…まどろっこしい真似を…

「アヤメの事だから私には勿体ないなんて理由を付けて受け取らないと思った、だけど…絶対似合うと思ったから…どうしても受けとって欲しかった…」?

ぐぅ…何も言い返せん…!

「もしかして…自分の勘違いだったのだろうか、だとしたら自分は…」い、いや!違う!待ってくれそうじゃない!

嬉しい!嬉しいんだ!ホントに!

でも、その、えっと…

まさか…私みたいな女に…こんな贈り物…

それも…お前から…受け取る日が来るとは…

思ってなくって…その…

心の…準備が…出来てなかったんだ…

大丈夫…今なら言えるから…

うん…嬉しいよ…ありがとう…!


それで…だな…

せっかく…お前が用意してくれたのなら…

この…指輪…

お前に…嵌めて…欲しい…

ダメ…か…?

あぁ…頼む…好きな指に…


スッ…


あっ…薬…指…

お前…分かって…嵌めたのか…?

…その顔は気付いてないようだな。

はぁ…全く…

構わん、今から教えてやる…

いいか…よく聞くんだぞ…

相手の薬指に…指輪を着けるということは…

その…

こ…婚約…を…意味…する…

そう…結婚してほしい…っていう…

愛の…誓い…だ…


それで…その…


わ、私は…この…指輪を…


お前からの…感謝の気持ちとして…


受け取っていいのか…?


それとも…


私を…


娶りたいって…


私が…


嫁に欲しいって…



お前からの…



愛の告白として…




受け取れば…




いい…のか……?♡




「自分は…アヤメが欲しい」




ほ、本当にいいのか…?


私は、その、相手をすぐ怖がらせてしまうらしいぞ…?


「その時は自分が相手との橋渡し役をするし、望むならアヤメに優しい会話の仕方を教えるよ」


そ、そうか…♡

それなら…もう…♡

肉体言語に頼る必要は…ないな…♡


だ、だが、私は騙されやすいらしいぞ…?

その…お前に…迷惑を掛けてしまう…かも…


「それだけ人を信じられるって事だから、それはアヤメの美徳の1つだよ」


そ、そうか…私の…美徳…か…♡


で、でも、私は財布の紐が緩いみたいだぞ…?

二人揃って力尽き、地べたに突っ伏すかも…


「これでも金のやりくりには少し自信がある、アヤメに贈ったその指輪が証拠になるはずだ」


そう…か…♡

なら…お前と一緒なら…大丈夫…かもな…♡


いや、待て…私の料理は…その…野性味に溢れ過ぎているんだろう?

食べられはするはずだが…その…お前を満足させてやれる自信なんて…


「それなら一緒に料理を覚えよう、アヤメとならどんな料理でも美味しく作れるはずだ、いつかアヤメの作った夕餉を食べたいな」


くぅぅぅぅ…♡

いつか絶対「美味しい」って言わせてやるからなぁ…♡


だけど…えっと…その…

私は…学の無い男共に襲われてしまうくらい…

無防備を…晒すらしい…ぞ…

身動きが取れない時に…襲われてしまったら…

私…どうなってしまうか…


「大丈夫、そんな奴らに指一本触れさせない、アヤメの事は自分が必ず守る」


………っ♡♡♡

そっか…♡

お前が…守ってくれるんだな…♡

確かに…私から一本取ったのだから…♡

腕は…申し分…ない…♡


「他に、心配な事はある?」


………♡

な、ない…♡

どうしよう、私…♡

もう…お前なしじゃ…生きていけないかも…♡


「自分もだ、もうアヤメの居ない人生なんて送れそうにない」


「だからアヤメ、もう一度、改めて伝えるね」


「自分はアヤメが好きだ、愛している」


「どうかずっと、傍に居て欲しい」


「この指輪、受け取ってくれますか…?」




はい…♡


私を…お傍に置いてください…♡




旦那様…♡



























「急な頼みだったのに、快く応じてくれてありがとう、莫邪さん」


もー!そんな他人行儀な事言わないで下さいよ!

むしろお二人の門出をこんな形で祝えるなんて…!

こちらこそありがとうって言わせて欲しいくらいです!

あっ!それとお兄さん!前から言ってますけど『さん』は要りませんから!

あっ、妖眼さんそろそろ来るみたいですよ!




カッ…カッ…カッ…




す、済まない…遅れてしまった…

こんな…綺麗な服…着るなんて…思ってなくって…

に、似合うか…?

………そうか。

それは…良かった…♡


わぁ〜〜〜!

妖眼さんっ!ドレスとってもお似合いです!


莫邪…お前には本当に苦労を掛けてしまったな…


いいんですいいんです!私が見たかったのもありますから!

土地柄としては白無垢の方が良かったかもしれませんが、お二人の話を聞いて、そして指輪のデザインを見たら、どーしても妖眼さんにはウェディングドレスを着てもらいたかったんです!

それにお兄さんのタキシードもばっちりです!

いやぁー頑張ってあちこち探した甲斐がありました!

それでは、本日の主役お二人が揃ったことですし、始めますか!



コホンッ…




お兄さん、

あなたは妖眼さんを妻とし、

健やかなるときも、病めるときも、

喜びのときも、悲しみのときも、

富めるときも、貧しいときも、

妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、

その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?




「はい、誓います。」




妖眼さん、

あなたはお兄さんを夫とし、

健やかなるときも、病めるときも、

喜びのときも、悲しみのときも、

富めるときも、貧しいときも、

夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、

その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?




はい、誓います。




では、お二人の上に神の祝福を願い、

結婚の絆によって結ばれたこのお二人を、

大霊峰の神が慈しみ深く守り、助けてくださるよう、ささやかながら私、莫邪が祈ります。


二人とも、ご結婚…おめでとうございます!




ところで…その…大変恐縮なんですけど…

誓いの…キス…とか…

やって頂けると…嬉しい…なぁ…と…




なっ、莫邪!?何を突然…

ひゃっ!?ば、馬鹿者、急に抱き寄せるな…

鼓動…止まらなくなるだろ…♡


なぁ…お前は今…幸せか…?♡


私は今…この上なく幸せだ…♡


ずっと一緒に居ような、旦那様……♡


愛してるぞ………♡





チュッ…♡♡♡




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