奪還

奪還


「ぬう!」

崩れ落ちた城の瓦礫を火炎剣烈火にて切り払い、姿を現すアスモデウス。

「貴様……よくも」

地に引きずり降ろされた魔王は、怒りに燃えていた。

 

「お兄様を……返してもらうよ……!」

神々しき光を纏って降り立つライスシャワーを睨みつけながら、アスモデウスは吐き捨てた。

「貴様ごときに何ができる!?全知全能の書に選ばれた『主人公』の座を得たこの私に、敵う者などいない!」

『主人公』。アスモデウスのそんな言葉が、ライスシャワーの脳裏にかつての記憶を思い起こさせる――

 

「もういいよ……ライスは結局、ヒールにしかなれないんだ。誰かの夢を奪うヒールにしか……!」

それは、かつて自身が心無きバッシングを受けていた頃のこと。ミホノブルボン、メジロマックイーン――名だたる強豪を制し、勝利を得た彼女を待っていたのは祝福ではなく、罵詈雑言の数々であった。

それが引き金となり、すっかり自信を無くしてしまい走ることすら辞めてしまいそうになっていたライスシャワー。

そんな彼女に、飛羽真は言ったのだ。

「それは違うよライス。確かに、レースは勝ち負けの世界だ。けど――そこには、正義も悪もない。誰かの夢を奪うためじゃない。必死に自分の夢を掴もうとしているだけの主人公なんだ。ブルボンも、マックイーンも。そしてなにより、君も」

「主人公……?ライスが?」

「ああ。だから君が諦めちゃ、『ライスシャワー』という物語はバッドエンドを迎えてしまう」

「……なれるのかな、主人公に。皆を笑顔にできる、ヒーローに」

「なれるさ。物語の結末を決めるのは――君自身なんだから」

 

――そうして、ライスシャワーはアスモデウスへと言い放つ。

 

「あなたは、主人公なんかじゃない。お兄様の身体を奪っただけで、あなた自身は何もしていない。そして何より――進んで誰かの夢を、絆を、世界を壊そうとするあなたこそ、本当のヒールだ……!」

「小娘が、黙っていれば言いたい放題に!」

「あなたにだけは……絶対に負けない!」

 

『天馬ノ装!』

始まった決戦。ライスシャワーは一度距離を離し、小回りの利く天馬ノ装を展開。空へと飛び立つと、素早く動き回りアスモデウスを撹乱する。

それを撃ち落とすべく黒炎を纏った三日月状の斬撃を飛ばすアスモデウス。

彼女は大きく弧を描いて飛ぶことでそれらを回避すると、アスモデウスの背後へと位置取り、翼を格納して地上へ立つ。

「はっ!」

そして反応されるよりも先に、蒼炎を纏った掌底を放った。

ぐぅ、と呻きを上げるアスモデウス。しかしすぐに立て直すと、今度は反撃の剣を振るう。

それを炎で作った短剣で受け止め、打ち払うライスシャワー。

そこからは、剣の打ち合いとなった。

蒼炎と黒炎とが交互に吹き上がり、互いの鎧をかすめる。そして幾許か打ち合った後――ライスシャワーの体勢が崩れた。右手に出現させていた短剣が消え、膝をつく彼女。

 

「もらった!」

勝利を確信し、大振りに火炎剣烈火を打ち下ろすアスモデウス。だが――

「な……っ!?」

それこそがライスシャワーの策であった。剣が振るわれるより前に再び短剣を作り出し、アスモデウスの懐に飛び込むライスシャワー。そして――

 

「てやあぁぁぁーっ!」

縦一閃、渾身の一撃を浴びせた。

 

「が、ぐ、うぅ……なんの、これし……き!?」

腰元から胸をつたって肩まで切り裂かれてダメージを負いながらも、戦意を無くさないアスモデウス。

が、そこで彼に異変が起こった。身体が思うように動かないのだ。違和感を感じ、ソードライバーを見やる。すると――

 

「何だと……!」

彼が左端に装填していたアルターライドブック、[仮面ライダーセイバー]に亀裂が入り、今まさに壊れんとしていたのだ。

 

そうするうちに亀裂はどんどんと大きくなってゆく。そしてアスモデウスの傷口から眩い光が放たれると同時に、アルターライドブックは粉砕された。

 

「お兄様!」

噴き出す赤黒い本のページと共に、ブックへと封印されていた飛羽真が飛び出してくる。

彼をしっかりと受け止め、ライスシャワーは叫ぶ。

「ライス……?」

おぼろげながらも意識を取り戻し、彼女の名を返す飛羽真。

ライスはそんな彼を強く抱きしめ、涙を流す。

「よかった、よかったよぉ……」

先ほどまでの勇ましさとは一転し、一人の少女として嬉し涙を流し続けるライスシャワー。そんな彼女の頭を、飛羽真は優しく撫でる。

「そうか、ライスが俺を助けてくれたんだな……ありがとう」

「ううん、ライスだけじゃないよ。力を貸してくれた、みんなのおかげ」

互いに笑顔を見せ、向かい合う二人。

 

「貴様ら……!もう許さんぞぉーっ!」

そんな二人の間に、横槍を入れる無粋な輩が一人。アスモデウスである。

傷を修復し終え、激昂する彼。飛羽真を解放され資格を失ったのか、その腰にソードライバーはもうない。

 

「後は、アイツを倒せばハッピーエンドだな」

「うん!」

入れ替わるように、飛羽真の腰にはソードライバーが装着される。

彼は[ブレイブドラゴン]のブックを開き、装填。そして聖剣を引き抜き――変身した。

烈火を構えるセイバーに合わせるように、ライスもまた炎の短剣を構える。

見据えるは、悪の魔王――アスモデウス。


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