奪い奪われ

――お母さん
――ゴドイさん
――ごめんね、もうどうしたらいいかわからなくなって
――無力な僕がいけなかったのに
――止めてもらえてよかった…
――間違えた進みかたをしなくてよかった
――だけど…恐いくらい眠いんだ…
――何かをするはずだったのに…とても大事なことを忘れている気がする

――でもこの記憶は取らないで、お願い取らないで



――ああ…ダメだ………
――◼️◼️◼️先輩、ごめん……貴方のところに、行きたかっ………
―――――

「…何が起きたんですか……?」
「キャリバン・エイクがやってくれたらしいわ…。」
そう話すプロスペラとアイリスを背負っているゴドイ。

「お母さん!」
呼び掛けたのはスレッタだった。妹が来たことを知って駆けつけたらしい。
「あの子とここにいるって聞いたよ…」

「いるわ、ここに。」

「外傷はないはずです。」
「!
どうしたの!?やっぱりさっきの人達と戦ってそうなったの?」
「さぁ…私たちにはわからないわ。
どうなのかしら…。」
キャリバン・エイクが何かを起こしたのは事実だが、この場では確認はできない。

「とにかくここを出ましょう、安全なフロントでアイリスを置く必要があります。」

「ゴドイさん、その子をお願いします!」
――――
レスキュー隊が管理する一部のフロントに戻る。
「ここでなら安静にいられるわね。
アイリスはここで私たちが見ているわ。
スレッタ、貴方はお友達がいないか探しに行きなさい。」


「そうだ、地球寮…!
…うん、わかった。」
「世話の焼ける子たちよね…」
「全くです…。」
そう言ってゴドイは眠る義娘の頬に触れる。

「殺生に躊躇わないよう育てましたが、間違いでした、申し訳ございません。」
「いいえ、その育て方が役に立ってくれたのは事実よ。
私たちが生き残るには奪うしかないのよ。
貴方は彼女に生きる術を教えたまでよ。」
―――
「あ、いた!みなさーん!」
「スレッタ!無事だったんだな。」

「みなさんも無事でよかったです!」

「安心したよ…流石だな。」

「聞いたよ、ここを守ってくれたんだね。」

「よくあんなテロリスト相手にできたよな…」

「私なんて恐くて何もできなくて…ありがとうございますスレッタ先輩。」

「そ、そう言えばよ!
ミオリネもいたんだけどよ…」オジェロは周囲を見てみるが「いねぇ~~。」
「なあマルタン、見なかったか?」
「いや、見てないよ。」

「ニカは?」
「……ごめん、わかんない。」

「ミ、ミオリネさんはきっとお父さんのこと見に行ったんだと思います……心配ですもんね。」

―――
スレッタを見送りプロスペラはアイリスを振り返るとそこには目覚めた彼女がいた。

「こんにちはっ!」

「アイリス、もう目覚めて…体に異常は…」

「………。」

「アイリ…いや、お前は誰だ?」

「ひっ こわい…
…わかんないよ。」
「まさか……。」
「コメットさん!無事だったのね!?」
遠くから女性たちがやってきて、彼女に抱きついたり泣き出したりとせわしない。
「あははっもみくちゃ~」

笑顔だった。
まるで子供が笑うようなあどけない笑顔。
「ああもう!心配したんだから!」
「えへへ…ごめんなさ~い。」
カシタンカの艦長は“コメット”に話しかける。
「ボブ!ボブは一緒にいないのかコメット!?」
「ボブぅ……だれえ?」

「え」
その言葉で今までの和やかな空気が一気に冷えた。
「え、嘘…」「ここまで重症だなんて…」「かわいそうに…」「仕方がないさ、まだ子供なんだ」

「アイリスっ!
ご、ごご、ごめんなさい、その子の姉です。」
間を潜り抜けてきたスレッタはアイリスに寄り添う
「怪我とかない?
もう安全だからね。」
その言葉で安心したのか“コメット”はキャッキャと笑顔で言った。
「はじめましてお姉ちゃん!
あそぼ?」

「え…………。」

続く