奇縁
俺と糸師凛は知り合いだ。
青い監獄に来る前から。
玲王に出逢う前から。
中学に入る前から。
でも友達とかなのかと言われるとそうでもない。
ゲーム上ではフレンドだけど、リアルでもそうだという訳ではない。確かにゲーム上では遊んだことがあるけれど、現実で凛と遊んだことはない。
つかず離れずの関係。ゲーム上で遊んだり、たまにメッセージを送るだけの関係で、よく高校に入るまで途切れなかったなと思う。
凛はリアルで人と深く関わることが嫌いだったのもあるけれど。
まぁ、俺も現実であれこれするのはめんどくさかったから、同じようなものだった。
そもそも、過去に顔を見て会ったのなんて数回しかない。
小学校の頃。入院していたばーちゃんのお見舞いに行ったら、偶然凛がいて知り合っただけ。
その頃の凛は色々抱えていたから、俺たちはゲーム機でコミュニケーションを取ってた。
ばーちゃんからの宿題をするために、その時の俺は凛の抱えていた“めんどくさい事情“を解決するのを手伝った。
それで人の命と凄惨な境遇にいた兄弟を救うことができたらしい。宿題の成果を容態が安定したばーちゃんに話していたら、頭を撫でられた。
宿題はめんどくさかったけど……まあいいか、と思ったのを覚えてる。
宿題も無事に終わって、めでたしめでたし……で終わる関係かと思ったら。後日凛から新しいゲーム機のIDとソフトが届いて。
そこからは細く長い関係が始まった。途中から俺と凛の事情を知った冴も混ざるようになって、俺はあの兄弟が抱えていた深い事情を軽く知ることになった。
でもまぁ。サッカーに没頭しているあの兄弟と、現実でまた会うことは多分ないんだろうなと思っていた。
玲王に出逢って、サッカーを始めて、青い監獄で凛と再会するまでは。