天与の暴君VS険悪コンビ

天与の暴君VS険悪コンビ



 無意識からの一撃、防ぎようがない場所から反応出来ない速度の拳撃が入る。

 何とか攻撃を諸に受けながらも立ち上がる、生来から身体は丈夫な方なのかダメージは少ない。


 「大丈夫、ですか?!那由多さん」


 「大丈夫……ですよ。ちょっと怪我しましたけど擦り傷です」


 「何だ、ピンピンしてるじゃねぇか。さっきの五条のガキといい……」


 不自然な程に気配、存在を感じ取れない男が目の前に立っていた………


 五条悟から逃げた……もしくはあの五条悟を倒した敵が目の前にいる。


 そう予測し、相手を現時点で天内理子の護衛における最大の脅威だと認定した田中那由多は掌印を組む。


 領域展開 『形世一変』

 

 必中必殺の領域が展開、具現化される世界を象る変幻自在の彼の奥の手。


 だが、この判断はミスだった。


 「………いない、何処だ?」


 領域内には田中那由多、黒井美里以外見当たらない……それもその筈、田中那由多には知り得なかった事だが目の前に居た男、伏黒甚爾は呪力を一切持たない天与呪縛の持ち主であり展開した術師が絶対的なアドバンテージを持つ空間。領域展開においても呪力で補足出来ず更には中に入る入らないを伏黒甚爾、彼自身が選択出来るのである。


 (入らないのはそうだが……さっさと此処を離れた方がいいだろ?だが一番の道をこの領域が塞いでやがる……迂回するか)


 目の前に有る黒の空間に見切り付け迂回路へと向かう。


 そして、自身の傷を領域内で治し暫く時間が経過した後田中那由多は脅威が天内理子の方へと向かったという事態を漸く把握した直ぐ様、傍で護衛を行っている夏油傑に電話をかけようとするが繋がらない……ここが結界内のせいかと気付き電話をなおす、少し時間を無駄にしたなと思いつつ彼は駆けて行く。



 結果から言うと……天内理子は死亡した銃弾で一発脳を撃ち抜かれていた。反転術式を持っても損傷した脳を治すのは難しい。更に彼女の呪力、肉体を変質させるにしても領域展開後の術式の焼き切れを治さなくては話しに成らない。


 「……またか、また俺のせいか」


あそこで判断ミスをしたから、結界の中で連絡が取れない事を忘れて無駄な行動をしたから、呪力強化にもっと呪力を注ぎ込ま無かったから、いや……あぁクソッ何で……毎回毎回どうして俺の目の手の届かない所で人が死ぬんだよ。変わらなねぇじゃねぇか!6年前と!!



そんな考えが頭をよぎる中、夏油傑は彼女の死体を奪わせない為に戦闘を行っていた。しかし、相手は那由多が警戒した通りの化物だった吐き出した武器を格納する呪霊から取り出した呪具を繰り夏油の操る呪霊の尽くを打ち倒し生半可な攻撃は何とも無いと言わんばかりに猛進し夏油に対して攻撃を入れようとしている。何とか凌いでいるがあの男の肉体は呪力感じられない、そして、術式無いだけでそれ以外の身体スペックは那由多の知る誰よりも強かった。


 術式の焼き切れが治るまで後10数秒有る……チッと内心舌打ちをしながら彼は戦いに割り込んだ。


 台風に突っ込む、そんな表現が正しいのかもしれない暴風吹き荒れる中に刀を持った男が居た。


 一閃、最初の不意打ちとは比べ物に成らない程の激痛が体を襲う五体がまだ満足にあった事に感謝しなければと思うほどの傷が彼に刻まれた。


 『……魂を斬る呪具か。まさか(任意の一人称)がいるだけで奴を助けてしまうとは。不愉快だ』


 内にいる呪物はそう思っていたが、そんな事つゆ知らずの彼は立ち上がる。


 また手は先程、無駄打ちした領域展開の掌印を結んでいた。


 (ハッ、またかソイツか)


そんな事を考えながら、伏黒甚爾は死体回収の為にそこを離れなかった。油断があった先程自身に対して効果が無かった事が一つ、暗殺の対象を既に殺している事が一つ、そして目の前の相手には継戦が難しい程の重症を負わせており、もう一人の術師も自身に取ってはそこまでの脅威になり得ない事が一つ。


 領域展開 『形世一変』


 自身に無反応の領域が目の前に出現し、そして弾かれる、このまま死体を持って去ろうとも思ったが一瞬で彼は違和感に気づく。呪具、釈魂刀そして格納呪霊がいないという事だ……


 「やりやがったな……」


 領域内にて格納呪霊の性質を変化させ夏油傑に取り込ませ男の持っていた呪具も呪霊に飲み込ませる、そして負った傷を回復を


 ドゴォッ!ガンッ!


 世界が揺れた、否 領域が揺れている自身の領域にそれなりの自身が有る彼だったがこの様子では数分程度で破壊されるだろう……


 「さぁて、どうする?夏油」


 「………」


 「自分が傷治したんだから信用してくれよ、ま、今回だけ共闘って事でさ。死体でも守りたいだろ?」


 「………分かった、だがこちらに対して害意を少しでも感じたら即、私は天内理子の死体を回収して離脱する」


 「了解」


 領域の外殻が破壊されるそこからダメージが全体にも伝播していたのか綻び領域は完全に壊れていいった。


 「よぉ……じゃあ再戦と行こうか」


 仲が険悪な術師と呪霊のコンビを前に天与の暴君は不敵に言い放つ。

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