大阪結界 ➖②
倒れた者と立っている者
勝負ならば誰が見ても勝ちが分かるその景色、違うのは周りの景色と倒れている者の体。傷一つ、出血、危害を加えられた跡は微塵もない。
それも当然で、彼は戦った訳ではない。ただ走り、疲れ、倒れたのだ。
「大丈夫?私の術式って前の時は全く使う機会なかったから勝手が分かりづらくてねー。」
その元凶の子供と見紛うほどの小さい少女は心配を感じられない軽いそぶりで心配してるように言う。
声を掛けられた人間はそれに返す余裕もないように息切れを続けながら必死に睨むがそれすらもどこ吹く風とばかりに受け流す。そして今まさにトドメを刺そうと右手にナイフらしき物を持って近付いた
「あははこわ〜。でも元々読書に勤しんでた私を先に襲って来たのはそっちだよ?だから自業自得ってことで許して、ね!」
『5点が追加されました』
「ふぅ…続き読も」
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「未来に興味はないかい?」
「ないかな」
唐突に現れた事に訝しげな顔をしながらも質問にはとりあえず答えた
自分の人生を振り返った上での紛れもない本心、幼少期は間違いなくろくでもない環境だった、一度抜け出した後も数度邪魔されたがその後は家族と大事なく平穏に幸せに生きることが出来た。
受肉とかいうのにも説明はされたが特段興味は湧かなかった。だが、煩わしいと追い払う前に挨拶がわりと渡された一冊の本は、私がいつの間にか忘れていた空想への感動を思い出すのに充分な感動を与えた。
そのまま離れようとするのを呼び止めるのに、私に心変わりを起こすのに、充分な感動を
「もっと素晴らしい物語は沢山あるの?」
「世界を回ればね」
「未来なら更に良い物はあると思う?」
「ああ、人が増えればそれだけ物語を生み出す者も増える。未来なほど物語が増えるんだからね。」
「……親がそろそろ老衰を迎える。その時また来てくれ」
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「400年だっけ?短い間に面白いファンタジーが沢山生まれたなぁ」
「あいつの誘いに乗って良かった!」
死滅回遊泳者 遮那王 神楽