夢見草と懐古

夢見草と懐古

ソウマとかの中の人

桜が舞っている、日差しが温い。ここは…何処だったっけ。僕は何もわからない、思い出せないまま高い高い石段を登っていく。やがて、鳥居が見えてきた。どうやら、神社に向かっているらしい。

「…ああ蒼真か、おかえり。お前が中学生になってもう1週間か…どうだ、昔のように誰かを傷つけていたりはしないだろうな?」

やがて社の前まで辿り着いたと共に、箒を持ち掃除をしていた男に話しかけられた。袴に和服の風貌を見るに、ここの神主なのだろう。僕の口はこう動く。

「うん、そんなに心配しなくても…俺は大丈夫だよ、父さん」

どうやら、この『俺』はこの人の子らしかった。夢だからだろうか…妙にあっさりと、すとんと理解することができた。

「それならよかった、昔のお前はいつも周りに迷惑ばかりかけていたからな…」

そう言い、『父さん』は『俺』の頭を撫でる。その手は無骨だけど優しくて、満たされたような気持ちになった。

「少し、昔の話をしようか」

ふと、『父さん』は言う。そして、ぽつりぽつりと語り出した。小さな『俺』は身勝手で人の気持ちがわからない子であったと。度々殴り合いの喧嘩や備品の破壊などの問題を起こして、『父さん』や『兄さん』も幼稚園や学校で謝り倒したとか。

「…でも、俺も母さんも紅輝も…もう長らくはお前に関する苦情も悪評も聞いていない。本当に成長したな」

穏やかに微笑む『父さん』。真面目な顔になって、続けてこう言った。

「いつも言っているが…『正しく善く生きろ』よ、蒼真。その体力や知力…特に、飲み込みの速さは素晴らしいものだ。きっと子煩悩などではなく、本当に。その能力は…自分以上に誰かのために使いなさい」

『俺』は…ゆっくりと頷いた。その言葉を反芻するように。


…次に意識がハッキリとしたのは、温い布団の中だった。目の前に見えるのは閑散とした自室。何か、夢を見ていた気がするが…思い出せなかった。きっと忘れてしまうようなくだらないこと、そう割り切ることにしてしまおう。アラームを切って、布団から起き上がる。

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