夢幻抱擁

夢幻抱擁




「マスター」


声の主の方へ振り返ると、小悪魔の姿をした天使が──

もとい僕の精霊、イヴリースが居た。


「今日もお疲れ様でした、私がたっぷり癒してあげますね」


彼女は精霊として舞い降りた日から、いつも僕を癒してくれている。初めこそ片付けの手伝いとか、ちょっとしたカード探しの協力とか、そんなとりとめのないお願いばかりだったのだが…彼女の裏表のない純粋な好意と、そんな彼女の献身に絆されて、今日も僕は彼女に甘えてしまう。


「ふふっ、ではベッドまで…♡」


君がどんなカードの精霊なのか、分かっていても。


──♡──



「すり…すり…♡しこ…しこ…♡」


そうやって僕を労るように、イヴリースは欲望の塊を撫でる。

痛くないように、気持ちいいように、マスターである僕が感じてくれるように。

マスター優先のあまあまプレイ。


「今日は私が全部やりますから、マスターは身を委ねて下さいね…♡」


そう言ってイヴリースはひたすら僕を甘やかしてくれる。

ただの一度も拒絶されず、ひたすらに僕の欲望を受け止めてくれる。

僕のため、僕の反応だけで編まれた全肯定プレイ。

僕の気持ち良さ優先、僕が最上位のあまあま奉仕が、どうしようもなく気持ちいい。


───ヤバい、もう出る。


そんな情けない僕の声一つにも。


「はい…♡マスターどーぞ…♡いっぱい出して下さいね…♡」


なんて、甘い声をかけてくれる。

そして僕を強請るかのように、イヴリースは肉槍の弱い所を責めたてる。

これまでのプレイから、僕の弱点はイヴリースに全て理解されていて。

だけどイヴリースは最初からそこを責めたりはしなくて。

僕が激しくされたい時か、今みたいに我慢出来ない時。

僕の顔色を伺いながら、僕が果てる瞬間の快感を高めるためだけに、イヴリースは手を激しくさせる。

当然、すぐに限界は来て。

イヴリースの手を、僕の欲望が汚していく。

そんな僕の痴態を、君はひたすら愛おしそうな顔で見つめて。


「ふふっ、今日も素敵でカッコよかったですよ♡マスター…♡」


なんて甘く囁いて、僕の心を溶かして。

だからどうしようもなく君に溺れてしまう。

イヴリースという夢幻に溺れていく。




──♡──




そんなイヴリースに溺れる日々を過ごしてしばらく。

僕は今、初めてイヴリースにベッドで押し倒されていた。


「はーっ…♥はーっ…♥」


いきなりの状況に面食らって、どうしたの?と問いかけることしか出来なかった。


「ごめんなさい…♥もう我慢無理です…♥」


そう言い放つと、イヴリースは唇を重ねて来た。

強引に舌を絡めて、イヴリースは僕を貪る。

そうして暫く、イヴリースが僕の唇を解放すると。


「マスター…♥ひとつになりたいです…♥」


初めて、君の欲望が顔を出した。


「ご存知ですか…♥カードの精霊って…♥どうしようもなくマスターの事を好きになっちゃうものなんですよ…♥だってそれは…♥マスターが私のことを…♥夢幻崩界イヴリースを大切にしてくれてるの…♥知ってるからです…♥」


君は饒舌に語る、自らの想いを。


「でも夢幻崩界イヴリースは…自らの欲望のために…イヴという女の子を犠牲にした姿…罪の体現…そんなカードから産まれた精霊は…マスターの寵愛を受けていい存在じゃないんです…」


イヴリースの口は紡ぐ、君の秘めた悲しみを。


「だからせめて…マスターに嫌われないように…マスターのためになりたくって…マスターの幸せ…あげたくて…!」


イヴリースの感情が、次々零れていく。


「でも駄目なんです、抑えきれないんです、マスターと繋がりたいんです…!お願いしますマスター…今日だけ…許して下さい…私のこと…嫌わないで…」


あぁ、そういうことだったのか。

君はずっと、夢幻崩界イヴリースというカードの精霊であることに苦しんでいたのか。

なら、やることは一つ。

僕はイヴリースを抱き締める。


「えっ…?マスター…一体…」


君は戸惑う。僕は構わず告げる。

───イヴリース、好きだ。


「はぃ…!?♡」


───第一、カードの精霊にするくらい好きなんだから、今更何されたって嫌うわけないよね。


「あ…♡いや、その…♡」


───なのに知らないフリして強引に襲ってくるなんて、『僕のイヴリース』は悪い子だね。


「………はい♡ごめんなさい♡『貴方のイヴリース』は♡そんな簡単な事にも気付けない悪い子です♡これから私♡どうなってしまうんですか♡教えて下さいマスター♡」


───怒られてるのにマスターを誘惑する『僕のイヴリース』には、お仕置しなきゃ。


「〜〜〜♡はい♡お仕置して下さい♡『貴方のイヴリース』は♡怒ったマスターに躾られたいです♡」



──♡──




「あっ♡あっ♡マスター♡すき♡」


君は乱れながら、僕に愛を向け続ける。

酷く乱暴に突き上げているのに、痛いとか苦しいとか一言もなく、ただ嬌声と好意だけを僕の耳に流し込む。

もっと乱れろ、もっと感じろ。

今までの分まで、僕で乱れてしまえ。

イヴリースの腰に手をやって、決して離さないよう必死に掴む。

…思えば、イヴリースの姿はとても露出が多い。

『僕のイヴリース』も、初めて会った頃は恥ずかしがってエプロンなどで隠していたが、僕の興奮を煽るためには惜しげも無くその姿を晒していた。

君は「こんな貧相な体でごめんなさい♡」なんて言っていたが、その滑らかな流線と、ほんな微かな膨らみが僕を狂わせ続けた。

そして僕を揺さぶる膨らみは、いつも以上に己を主張させている。

…違うと分かっていても、イヴリースがここを責めて欲しいと誘っているようにしか見えなかった。

だから───


「っ!?♡マスター♡らめぇ♡」


その突起を、さらけ出して、撫でて、擦る。

舐めて、しゃぶる。

吸う、ねぶる、摘む。

その度にイヴリースの身体は跳ねる。僕を離すまいと強く締め付ける。

当たり前だ。逃がさない。君は僕の精霊。僕の愛するイヴリース。

イヴリースの口から漏れる艷声は、甘さと艶めかしさを増していく。


「マスター♡それだめ♡イっちゃいます♡」


その声だけで、僕の溶けた理性が更に流れる。

イヴリースの腰を掴む強さが増す。跡がついてしまうほどに。

頂点への愛撫を加速させる。君の身体は更に跳ねる。

イヴリースへの抽挿が止まらない、止められない。止めたくない。

もうすぐイヴリースが果てる。僕で絶頂する。遂にその姿が見られる。


───イけ。


そう囁くと、イヴリースは大きく仰け反って、絶頂した。

そしてイヴリースの身体の痙攣に誘われるように、もしくは蕩ける君の姿に興奮したように、続けて僕も思いの丈を流し込んだ。




──♡──



「マスター♡」


声の主の方へ振り返ると、色欲を司る僕の精霊、イヴリースが居た。


「今日もいっぱい、私で癒されてください♡」


僕の天使は、僕に堕ちた。


「ではベッドまで…♡きゃっ…♡」


僕は今日も、君という夢幻を抱く。


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