夢ノ深淵ニテ彷徨ウノハ
シュロは怪談家である。
怪談がなければ怪談家としての仕事がなくなってしまう。
だからこそ怪談を話すだけじゃなくて、怪談の材料の調達も頑張らなければならないのだ。
シュロは頑張って、相手の心もしくは夢に乗り込んでトラウマとかを見えるようにする術を開発した。
そんな術をナグサにかけようとしたらセイコっていう知らない人に邪魔された。
気進まないがせっかくだしそいつの内情見ちゃえ。
―――楽園は、もう滅んだ。
静かな無間地獄。
無数の銃がそこらにただ刺さっているだけの赤い大地。
風もなく草もなく水もなく
そして―――生命の音もない。
灼熱の無間地獄にてただ立つだけの自分。
―――冥世は、もう存在しない。
■■■■■■■■■の世界。
彷徨う魂はやがて全ての始まりに還る。
死もなく生もなく運命もなく
そして―――希望も絶望も過去も未来も現在もない。
正気と狂気の間際にて彷徨う自分。
シュロ「これはこれは…え?」
シュロはその光景に良い素材を見つけて舌なめずりをしようとしたところに口から血が流しているのを気付いた。
そして突然手足の感覚がなくなり倒れてしまう。
シュロ「――――?(何をされた?)」
喉もいつの間に潰されていた。さらに全身の穴から目から血が流しているのを感じた。
シュロ「―――――?(いつ攻撃された?それが全く感じなかった…?)」
全身にあるはずの感覚が死滅していくのを感じた。
「―――――?(まさかこの環境そのものがキヴォトス人にとって有毒なのか?)」
地に流れていく自分の血を見て気づく。その血はすでに固まられており、炭の固まりになっていた。
…シュロの感覚が死滅しているため気づいていないのだろうけど、髪と歯と爪と皮膚には溶けられ、露出した肉には焦げられ、果ては骨がボロボロになっていた。また、手足はすでに塩化/凍化/爆散/極限圧迫(片腕か片足そのものが太さ1ミリ以下になっている)されていて使えるものではなくなった。さらに水分と脂肪を急速に失っているためどんどんと瘦せていく。空腹感もひどくなっており嘔吐が止まらなくなっていた。
微かに見えている人に対してシュロはこう感じた。―――こんな地獄な環境なのに普通に立っていること自体が異常なのだと。
セイコ?『…』
倒れているシュロを気付いたセイコ?はシュロの顔を手で掴もうとゆっくりと近づく。
シュロはゆっくりと掴んでくる手の隙間からセイコ?の顔を見てしまった。
シュロ「――――――――――?(手前、何する気、だ…?)」
手前は言いきる前セイコ?の顔を見た瞬間絶句し恐怖してしまった。
―――あいつは、人間なんかじゃない。
怪異とかでも怪談とかでも黄昏関連でもなくもっと恐ろしい何か。
それだけは断言できる。
理解しようとしても理解するのを、心に、脳に、本能に、それをやるのを拒否される。
怪談家としてのブライドが完全に打ち砕かれるのを痛みと共に感じた。
それでも怪談家としてそれを確認しないといけない。潰された喉からどうかに絞り出した声で構成した精一杯な質問をセイコに問いかける。
シュロ「て、手前、何者、だ。」
あまりの恐怖から腹から出した質問には答えてもらうことはなく。
口から大量の血を吐きながら、すでになくなった手足を使い後ろへ這いずりセイコから逃げようとするシュロの顔を掴まられてしまう。
■■■■「―――捕まえた。」
その掴んでいる手がメキメキと力は入りながらシュロの頭を圧迫していく。シュロはそれを抵抗しようとしたが、深刻なダメージなせいで抵抗したくても手足をまともに動くこともできなくなっていく。
その同時に掴まられている手からシュロの脳に何かを流れ込まられるのを分かる。その何かを見た瞬間―――
シュロ「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
シュロの視点はノイズになり、その後全て黒くなりこの世界での出来事を忘れていく。
■■■■『…やがて全てはここに集まりそして還っていく。』