夢の続き
有マ記念関連の皆の話
※(🎾と🌓中心になります)
わ
ん
く
🌓「___さっむ…」
12月24日、クリスマスイブ。冷たい空気が辺りを包んでいる。冷え切った手を温めようと息を吐いてみても、気休め程度にしかならなかった。
🖼️「イクイ、寒いならオレのマフラー使う?」
🌓「………いや、そしたらジオが寒くなっちゃうでしょ?大丈夫だよ」
隣から、ジオが身につけているマフラーを僕に巻こうとした。流石に申し訳ないから断ったけど。
✌️「___えーっと、今日出走するヤツらは…」
英雄「パレス!!しかもついにGⅠで1番人気だよ!!」
🐬「…あとドウデュース」
🌹「あら、アタシたちのアースを忘れてもらったら困るわよ!」
%「ライラックちゃんも〜」
♌️「プラダリア!プラダリアもお忘れなく!」
僕たちは今、中山競バ場にいる。目当てはもちろん、1年を締め括るレース、有馬記念だ。
(本当は僕も出走してみたかったけど………)
でも、先月のジャパンCで引退してしまった僕には叶わぬ願いだった。
…………………………
🏹「___あ!皆が本バ場入場してきたよ!」
オリオンが大きな声で言う。一斉に視線をターフの方に向けると、1年を締め括るのに相応しいメンバーたちが、力強く歩を進めている。
___ワアアアアァァァァ!!
瞬間、大歓声を上げる観客たち。
🌓「___!!」
他の誰よりも僕の目に映ったのは、ドウデュースだった。去年の日本ダービー以来、秋の天皇賞、ジャパンCと戦ってきたライバル。
(………たしか、今日はトレーナーさんも復帰してたはず)
久しぶりの再会だった秋の天皇賞直前、彼のトレーナーは怪我を負い一時戦線離脱となった。次戦のジャパンCでも、トレーナーの怪我は治っておらず、あの時___ダービーと同じような状態で戦うことはできなかった。
(………本当は、万全の状態のお前ともう一度戦いたかった)
そんな願いを打ち消すように、ファンファーレが鳴り響いた。
…………………………
🎾「………」
今日は、12月24日クリスマスイブ。そして、
🌏「___ついに来たね、有馬記念」
1年間の締め括り、有馬記念の日だ。
🎾「…だね〜!てかてか、ボク秋古馬3戦全部出てるんだけど!偉くない?」
🌏「はいはい、偉い偉い………私は、秋天は出れなかったしジャパンCも今回も大外で軽く泣きそうなんだけど?」
🎾「それは………ドンマイ!でも、アースすっごい強いからきっと大丈夫だよ〜それに、ボクのウマ番も50年くらい勝ったウマがいないらしいし!」
🌏「………いっそのこと、同盟でも組む?」
🎾「ははっ!それもいいかもね!」
ボクが抽選会で引いた番号は5番、ここ最近勝った馬はいない番号。
(………でも、今のボクにはそんなことどうだっていい)
関係者席の方に視線を向ける。そこにいるのは、ボクの大好きな、元気な姿になったトレーナー。思わず手を振りそうになるのをグッと堪えて、ファンファーレを待つ。
宮殿「___やーっと、お前たちの人気を上回ることができた」
背後から、肩を組まれる(まあ、ちょっとだけ身長届いてなかったけど!←)。ジュニア期、クラシック期、そしてシニア期を迎え、見違えるほどに強くなったパレスくん。
🌏「………ふふっ、人気で上回ったからって舐めてもらったら困るかな?大外だからって、負けるつもりは全くないから」
🎾「そうだそうだー←」
🌱「___てか!おれたちもいるからな!」
🌸「人気低いからって私とプラダリアくんを忘れてもらったら困るわよー!」
宮殿「もちろん忘れてねえよ。ここにいる奴らは皆、平等に『ライバル』だ」
(………『ライバル』)
ボクは、不意にイクイとの会話を思い出した。
…………………………
🌓『___僕、このレースで引退するかもしれないんだ』
ジャパンC後、イクイは少し寂しそうにそう言った。
🎾「………えっ、そうなの!?」
🌓『あ、いや、まだ完全に決まったわけじゃないんだけど』
🎾『ん〜………でも、だとしたら、ボクは最後までキミに追いつけなかったなあ』
ダービーと同じ上がりで駆け抜けた直線。でも、イクイはそれよりもずっと先を、ずっと速い脚で、ダービーの時より0.1秒だけ速く駆け抜けた。
🌓『………ボクには、3人のライバルがいる』
🎾『へ?』
突然、イクイは話し始めた。
🌓『1人目はジオ』
(………あ〜たしかに、イクイが1番最初に負けたのって皐月賞だったもんね)
🌓『2人目はパンサラッサ先輩』
(へえ〜ちょっと以外かも!でも、イクイが最初に勝ったGⅠの2着だし、大逃げって印象に残るもんね)
🌓『___3人目は、ドウデュース。お前だ』
🎾『うんうん………って、え?』
頷きかけた体が一瞬にして固まった。
🌓『「え?」って、僕天皇賞の時言ったじゃん!「お前が1番のライバルだ」って』
🎾『………あれ〜?そうだっけ?』
🌓『嘘でしょ………』
固まった空気が、一気に気が抜けたように和らいでいく。
🌓『………ところでさ、ドウデュースって有馬記念も走るんだよね?』
🎾『?うん。ボクは出るつもりだよ』
🌓『そっか………じゃあ、このことを忘れないで』
徐に、イクイが拳を突き出してくる。
🌓『「ドウデュースとイクイノックスは最高のライバル」ってこと』
🎾『___!!』
その言葉を聞いて、ボクも拳を突き出す。
🎾『…うん。ボクは、「イクイノックスのライバルのドウデュース」だ』
そして、お互いに笑い合って拳を合わせた。
…………………………
🎾「………よし」
手をギュッと力強く握り締めて気合いを入れ直す。そして、今度は観客席の方へ視線を向ける。
(___いた)
最後には追いつけなかった『ライバル』は、たしかにそこにいた。
(………今日は、)
🎾「キミに追いついてみせるから」
…………………………
🦂「………そろそろゲートに入るな」
着々と、各ウマたちがゲートに入っていく。皆、今のところスムーズに入れてそうだ。
🐱「うわ〜なんかこっちまで緊張してきた………」
🏝️「まー、1年間の締め括りみたいなもんだしな有馬って。客の盛り上がりもすげーし、全く緊張しないわけねーよ」
実際セリフォスの言う通りで、レースなんてものはただでさえ緊張するのに、GⅠ____それも有馬記念となれば、緊張しないわけがない。それは、身をもって分かっている。
才能「___始まるね」
全てのウマがゲートに入り、スターターが構えるのが見えた。
______ガコンッ!!
🌹「アースめっちゃ良いスタートじゃん!」
大地「うおー!パレスちょい後ろ!」
🐬「あーあー、ドウデュースの奴出遅れたか………?」
才能「プラダリアも結構前に行ったな」
%「ライラックちゃんは………ほんの少し後ろ?」
スタートして、各ウマたちが一斉に駆け抜ける。まず最初に目に入ったのは、スターズオンアースの好スタート。16番スタートという不利をなくすかのように前目につけ、内側へと入っていった。
✌️「うわ〜アース上手いな………」
英雄「あっ!パレスのヤツ1番後ろに行きやがった!」
%「ライラックちゃんとドウデュースくんも後ろの方だ〜」
♌️「プラダリアとアースは逆にめっちゃ前!両極端だなオレらの同期!」
僕たちの前を、皆が駆け抜けていった。
🦂「___1000m60.4秒か」
実況者が読み上げたタイム。それは、僕が勝った時よりも少し速いタイムだった。
(タイトルホルダー先輩のリードもスピードも、去年僕が戦った時より良くなってる)
その何バ身か後ろ、相変わらずスターズオンアースとプラダリアは前目、ライラック、ドウデュース、パレスは後ろの方につけている。
🖼️「お〜後ろの方は間に合うか………?」
%「アースちゃんもスタミナ保つかなあ?こんなに前の方にいるの見たことないかも………」
興奮の狭間にたしかにある、いくつかの不安。『色んな情念が渦巻く有マ記念』というべきか、とにかく気が気でないようなそんな気分。
そして、第3コーナーと第4コーナーの間に差し掛かった。
「___ドウデュースきた!ドウデュースきた!ドウデュースきたぁ!!」
🌓「______!!」
…………………………
🎾『___えっ!トレーナーって3回も有マ記念勝ったことあるの!?』
『ははっ、まあな』
ある日の練習前、過去の有マ記念のデータを見ていた。歴代勝ちウマの隣には、たしかにトレーナーの名前があった。
🎾『しかも皆引退レース!?それにこのウマたち全員顕彰バでしょ!?トレーナーすごすぎない!?』
『そうなんだよな〜だから俺は「顕彰バの引退有マ以外勝てない」とかいうジンクスがあるんだよ」
ニヤニヤと笑いながらトレーナーは言った。
(………あれ?ということは、ボクもしかして勝てない?)
そんな不安が、頭をよぎった。
(___いやいや!ボクなら、トレーナーがずっと勝てなかったGⅠレースを勝てたボクなら、きっとできる!)
浮かび上がった不安を打ち消すように頭を振って、トレーナーに向かい合う。
🎾『___トレーナー!今回も、ボクがジンクス破ってあげる!』
その後の抽選会では5番を引いた。なんと、その番号は50年以上勝ちウマが出ていないらしい。
(………どんなにジンクスが増えても、絶対に破ってみせる!)
…………………………
🎾「___はあっ!!」
第3コーナーから第4コーナーにかけて、一気に大外から捲り上げていく。何人ものウマたちを追い抜いていって、前に見えるのはアースちゃんとタイホセンパイだけになった。
(………すごい歓声)
コースも距離も違うのに、何故かダービーの時を思い出してしまった。あの時の栄光があまりにも眩しすぎて、正直今のボクには重すぎるような気もしてしまう。
(___でも、)
今日のために戻ってきてくれたトレーナーのためにも、『ライバル』のためにも、
🎾「___ボクが勝つんだ!!」
…………………………
🌏『………』
『oh………そんなに落ち込まないでくださいアースサン』
🌏『トレーナー………いや、それはちょっと厳しいかな』
抽選会後、帰り道。私は絶望していた。
🌏『___なんでジャパンCに続いて有マ記念も大外なの!?』
しかも、私が引いてしまったのは16番。それも、勝ちウマはおろか、2、3着に入ったウマすらいない悪夢のような番号。
『たしかにそれは残念デス………が、アースサンはとても強いウマ娘。アースサンならきっと、勝ち筋はありマス』
🌏『………本当?』
『エエ、モチロン!それは______』
…………………………
(___よし、まずは内側に入れた!)
トレーナーが言った作戦は、『好スタートから一気に内側に入る』こと。正直、そんなにスタート得意ってわけじゃないから不安はあったけど、なんとか上手くできたみたい。
(流石に、タイトルホルダー先輩は抜けないかな)
一瞬、ハナを奪ってしまおうかとも思ったけど止めた。いくらなんでも無謀すぎるから。
(………私が2番手だから?)
観客たちの歓声が、風を切る音に混じってよく聞こえてくる。
___『ウマ番16番のウマは勝てない』。そんなジンクスがある。
(………そんなの知らない!)
大外だから負ける?大外だから人気を落とす?そんなの知ったことじゃない。
🌏「___っ!!」
コーナーを曲がる時、僅かに内ラチ側に体が当たった。よろけそうになる体を支えて、再び加速する。
🌏「___勝つのは私だ!!」
…………………………
✌️「___ドウデュースの走り、お前に似てる」
🌓「………僕も、正直思った。」
第3コーナーから第4コーナーにかけて、大外から一気に捲り上げていくドウデュース。それは、去年の僕によく似ていた。
そして何より、
🐬「___アイツの走りだ」
かつてのダービーを思い出させるような、少し姿勢を低くする、猛獣のような走り方。他のウマよりも豊かな筋肉が、輝いて見えるような髪が、長い手脚が、全てが完璧でしかなかった。
🌹「あとちょっと!!ドウデュースもアースも、先頭まであとちょっとよ!!」
%「いっけー!!アースちゃん!!」
🐱「わあああ!!みんながんばれー!!」
🏝️「おい、アイツら届くか!?」
才能「あと100m!!」
🖼️「2人ともタイホ先輩抜いた!!」
🏹「待って待って本当にどっち!?」
英雄「わー!!パレス届く!?」
大地「いや、もうダメだ!!」
🦂「ドウデュース!?アース!?」
✌️「あー!?ちょっとだけドウデュース前!?」
🐬「あ___!!」
🌓「______『僕のライバル』だ」
___ドウデュース。
…………………………
🐬「___ドウデュース!!」
有マ記念が終わった。勝ったのは、ドウデュースだった。
🎾「えへへ〜ダービーウマ復活ー!!なんてね」
優勝レイを手に、ドウデュースは控え室から戻ってきた。
大地「おまっ………お前、マジでやりやがったなー!?」
✌️「何オレらのこと感動させるんだよー!?」
英雄「最高のクリスマスプレゼントかよ!おい!」
宮殿「ちょいちょいお前ら、そんなにグイグイ行きすぎんな」
♌️「お前ちょっと出遅れたくせに何言ってんだよー!」
宮殿「うっせー!最終的には4着だから貶すなー!!」
%「ドウデュースくんおめでとう〜!アースちゃんも、パレスくんも、ライラックちゃんにプラダリアくんもお疲れ様〜」
🌏「………ありがと、ナミュール」
🌱「くっそ〜途中までは前目につけれてていけると思ったのに!」
🌸「私も悔しい〜!やっぱり有マ記念って凄いんだなあ………」
🌹「___てかアース!アンタあのウマ番でよく2着に来れたわね!?」
🖼️「それを言うならドウデュースもだぜ!5番って50年くらい誰も勝ってなかったんだろ!?」
🎾「へへ、ボクたちレース前に同盟組んだもんね〜」
🌏「そうそう、『やばいウマ番同盟』」
才能「えっ、何それは………」
レースが終わっても尚冷めぬ興奮。レースに出た同期たちを讃え、皆で笑い合う。
🏝️「___うわ、ドウデュースあんなに大外から捲り上げて上がり1位かよ」
🦂「………本当だ」
🏹「でも、今日のドウデュースの走りはそれだけすごかったもんね!」
🐱「ねっ!なんかイクイノックスくんの有マ記念思い出しちゃったよ〜」
🎾「えっ!本当?」
英雄「おーマジマジ!!特に最後の方めっちゃヤバかったぜ!」
大地「な!いっそのことクリスマス会も兼ねてお祝いするか!!」
🌹「賛成ー!スイーツいっぱい食べたい!」
🎾「ボクも!!今日はいっぱい食べたい気分!!」
🐬「お前はいっつも食欲旺盛だろうが←」
🖼️「それはそう←」
…………………………
🎾「………あっ!ボク『これ』トレーナーに預けてくるから皆先に行ってていいよ〜」
✌️「okーじゃあ先に競バ場の外出てる」
優勝レイを持ったままだったドウデュースは、控え室の方へ踵を返した。そして、他の皆はぞろぞろと出て行く。
僕は、まだその場に残ったままだった。
🖼️「………あれ?イクイ行かねーの?」
🌓「うん、一応ドウデュース待っておこうかなって」
🖼️「そっかー分かった」
一度ジオも戻ってきたけど、すぐに皆の元へ向かった。
🎾「………あれ?イクイまだいたのー?」
1、2分もすれば、ドウデュースは戻ってきた。
🌓「うん、ちょっとお前のこと待とうと思って」
🎾「そっかー」
2人で、競バ場の外まで歩いていく。
途中、ふとドウデュースが口を開いた。
🎾「………何言ってるんだって思われるかもしれないけどさ。今日のレース、最後のコーナーでキミの姿が見えたんだ」
🌓「………?」
🎾「キミがいなくなったターフの上で、『所詮イクイノックスだけの世代』って思われたくなくて。どうしても負けたくなかった」
🎾「まだまだを追い越すことはできないけど………今日、キミの隣に並ぶことはできたんじゃないかなって、少なくとも今のボクはそう思ってるよ」
🌓「………」
🎾「………へへっ。まあ、この調子で来年にはキミを追い抜いちゃうから!ドバイのリベンジだってしたいし、凱旋門賞だってまだ諦めてないからね!」
そう言うドウデュースの瞳は、輝かしい未来を描いていた。
🌓「___あ、」
外に出るまでの間、道にあるポスターが目に入った。それは、過去に有マ記念を勝ったウマたちの写真。1番最新のものはもちろん僕。そして、その隣___僕が向いている先の方、まだ誰も載っていないポスターがある。
(………今日の結果で、ここにドウデュースが載るんだ)
そういえば今日、ウマッターで見た記憶がある。中山競バ場の中で貼られているポスター、僕の隣に来るのは誰なのかということ。
(………僕は、ずっと君を追いかけてる)
君には勝ち越した。世界一の称号も得た。GⅠはいっぱい勝ったし、賞金だっていっぱい得た。
それでも、
心の中には一つだけ大きな穴が空いているみたいで、その穴の正体は今でも分かんなくて、
ただ一つだけ分かるのは、
君と走っている時だけは、その穴が埋まっていくような気がした。
🌓「………きっと僕は、」
まだ君を諦められないでいる。
🎾「………ん?何か言った?イクイ」
🌓「………ううん、何でもないよ」
この思いは、まだ心に閉じ込めたままでいよう。
今はただ、ライバルの勝利に夢を見ることしかできないから。