夜明け前
〜12年前 フーシャ村〜
キィ〜……
「おや、ウタちゃん。今日もお使いかい?」
キィ
「ウタちゃんはいい子だねぇ。はい、メモを見せておくれ。
どれどれ……うん、ちょっと待ってなよ」
…………
「はいお待たせ。本当はいつも頑張ってるウタちゃんにも何かオマケしてあげたいけど……食べられないんじゃねえ……」
……ギィ
─────
「あ、お帰りなさいウタちゃん。お使いありがとう」
キィ!
……キィ?(キョロキョロ)
「ルフィかしら?ルフィならさっき忘れ物したって山に帰っていったわ。もうそろそろ戻ってくると思うけど……」
キィ……
「それにしても……」
?
「ウタちゃん、最初に来た時よりも随分元気になったわね。もう10年ぐらい前かしら」
……キィ
「フフ、そんなにルフィといるのが楽しい?」
キィ!
「そうねぇ……あの子といれば退屈はしなさそうね。
エースがいた時はもっと賑やかだったんだけど……あれからもう3年経つのか……
そう言えば、そろそろルフィも海に出るらしいけど、ウタちゃんはどうするの?」
…………!?
──────
「よーし、こんなもんか!あとは全部船に積んで……」
キィ!キイィ!
「ん?あれ、ウタ?今から迎えに行こうと思ってたのに」
ギイィイ!(ブンブン)
「何だよ、どうした?何怒ってんだ?
……あ、もしかしてお前おれが海に出るってこと聞いたのか!?」
ギィ!!
「くっそー、マキノだな?内緒にしててくれっつってたのによ〜……
まあいいや、バレちまったならしょうがねェ。おれもそろそろ海に出ようと思ってんだ、海賊としての船出だ!」
キィ……
「ワクワクすんだろ?早くシャンクス達に追いついて、いつか海賊王になってやる!」
…………
「で、おれの荷物はもう纏めたけどよ、ウタは何か持って行くもんないか?」
……ギ?
「ん?どうした?
……ああ、ちゃんと言ってなかったな。
ウタ、お前も行くぞ!おれの最初の仲間だ!」
…………!!
「ししし、何驚いてんだ?今更おれがお前を置いて行くわけねーだろ?
おれは海賊王になってシャンクスに帽子を返す!ウタはシャンクスに会いに行く!一緒じゃねェか、なんで置いていく理由があるんだ?」
………….
「よし!船出は明日だ!明日からもよろしくな!ウタ!!」
……キィ!!
──────
「……なんてこともあったよねぇ」
「そうだっけ?おれもう忘れて……」
「……忘れて……?」ウルウル
「だーっ忘れてねェ忘れてねェ!!ごめんウタ!!」
「……あの時も嬉しかったなぁ、私勝手に置いてかれるもんだと思ってたからさ」
「……何つーか、絶対に置いてっちゃダメだと思ったんだ。元々置いてくつもりもなかったけどな
……そうだな。ちゃんと思い出した」
「……思い出したってことは忘れてたってことじゃないの?」
「あ」
「もー……これからは忘れないでね?私のことも、みんなのことも」
「おう、当たり前だ!」