夜の船
クロコダイル「うぅん…眠れないわね…。」
この船、サウザンドサニー号の航海士のナミは寝苦しい暑さに目を覚ましてしまった。
気候は夏島、暑いのは仕方ないが、目を覚ましてしまったからには簡単には眠れない。
「キッチンに行って冷たい水でも飲めば少しは涼むかしら?」
同部屋のロビンを起こさないようにそっと布団から抜けてキッチンへ向かった。
「えっと、確か冷蔵庫を開けると鼠取りに引っかかるけど、蛇口を捻る程度なら問題ないわね。」
コップに水を入れ、喉を潤す。思わずおっさんみたいに「クゥ〜!これだよこれ!っておっさんか!」などと独り言を言って自分で突っ込む。
「どうしよう…目が覚めちゃったわ。」
喉を潤したり、キッチンまで動いたりしてるうちにナミは眠気など吹き飛び目が冴えてしまった。
とはいえ他に寝ている仲間を起こすのもしのびないしどうしようかと思考を凝らす。
「そうだ、確か今日の寝ずの番はルフィとウタだったわよね。」
とんでもない爆弾発言をしたかと思えば実は私たちの勘違いだったことがわかってなんか一安心してしまった今日の、いや昨日の昼間。
「そうね、2人の様子見てみようかしら?」
昔からの幼馴染の2人きりの時間を邪魔する気はない。遠くから少し眺めてからかう程度のネタを手に入れようぐらいの軽い気持ちで甲板に向かった。
「あら?ルフィ寝てるのかしら?」
あくまで2人には悟られないように遠くから眺めるとウタの太ももの上にルフィが頭を預けて眠り、ウタが愛おしそうにその顔を撫でている様子だった。
「ちょっとルフィ、ウタだけに寝ずの番任せるなんて…まぁウタもしている様子じゃないけど…。」
あまりのイチャイチャ振りに少し呆れてしまう。しばらくそんな光景が続き退屈になりもう部屋に戻ろうかしら?と思案したその時、ウタが新たな行動に出た。
「え?ちょっとウタ!ルフィのシャツ脱がしてる…?」
仲間の思わぬ行動に支配されかけていた眠気は吹き飛びその光景に目が釘付けになってしまう。
ウタの表情は遠くからで読めないが、まさか実は本当は2人は昼間話していたような関係だったのかと思っていると、ウタはルフィの胸の大きな古傷を優しく…しかし悲しそうな手つきで撫でていた。
ルフィに取って大事な兄を失った戦争、ルフィ自身も心身共に大きな負った出来事。私たちですら当時仲間だったにも関わらず何もすることができなかった。当時その出来事すら知らなかった彼女の想いはきっと想像以上に重いのだろう…。
寝ている彼をそっと優しく抱きかかえてぎゅっと包み込むようなハグをするウタ。まるで大切なものを失わせないような決意のような行動だったように見えた。寝ているルフィに優しく唇を重ねるウタ。
これ以上は野暮ね。寝室に戻り朝まで眠ることにした。
「おはようナミ!少し遅かったね。」
時刻は9時手前、ナミにしては遅い時間に起床した。グッと身体を伸ばしながらリビングへ向かうナミとウタが通路ですれ違った。
「ごめんなさいウタ。すこし夜更かししちゃって…。ウタも寝ずの番だったんでしょ?少し休んできたら?」
「うん!これから眠るところ。だけどその前にナミに言いたいことがあって。」
「言いたいこと?」
眠気であまりまだ上手く頭が回らないなか思考を凝らしていると耳元で囁かれる。
「覗き見はあんまり良い趣味ではないと思うよ♡」
思わずドキッとしてしまう。まさか昨日の2人の寝ずの番を見ていることがバレたの!?跳ねそうな心臓を悟られないようにしようとしているとウタは打って変わって元気そうに言う。
「じゃあおやすみ!ナミもあんまり夜更かししちゃダメだよ?お肌に悪いからね!」ワキワキ
もしかしたらあの娘は思ったよりもやり手かもしれない…ナミはそう思わずにはいられなかった。
終わり
蛇足
なんでルフィは寝ずの番で眠っていたんでしょうね?