多分10代前半で色々悩んでるルッチ

多分10代前半で色々悩んでるルッチ

日付が四年前だった 文章が下手!

何事も、はじめての行為は刺激的だ。

はじめて飲む酒に、はじめて吸う煙草。箱を開けてはじめてのメンソール。はじめはなんだって刺激的だ。

好きでもない女にするキスや、セックスすら、はじめてならばそれなりに楽しめる。

大抵の人間はそのはじめての行為の中から一番刺激的だったものを見つけて、それを趣味にし、継続的に楽しもうとするだろう。

おれにはそれが偶然、政府のための殺人行為であったというだけだ。

なにも特別なことじゃない。

なにもおかしいことじゃない。……

 

「異常者め」

男が言った。殺せと命じられた男だった。

男は血を流して、高級そうなスーツを吐瀉物で汚し、憎々しげにこちらを睨んでいる。つい一時間ほど前までは美味い酒を飲み、葉巻を吸い、娼婦を抱いていた男だ。今ではもう見る陰もない。興味もない。

雨が降っていた。おろしたてのスーツも、朝にシャワーを浴びたばかりの体も濡れてしまっている。

雨は嫌いだ。においがだめだ。ペトリコールの、鼻につくにおいはイライラする。

雨は嫌いだ。首筋に貼り付く髪、肌に直接触れる冷たい布地が不快だ。

雨は嫌いだ。血が雨に流れて、排水溝に吸い込まれていく。血のにおいが消えていく。生ごみの腐敗臭がする。

ルッチは男の、腹の傷口を乱暴に踏む。呻き声が、誰もいない路地裏にくぐもって聞こえた。

男が叫ぶ。

何を笑っている。楽しいのか。

おかしい。お前はおかしい。狂っている。狂っている。……

聞くに堪えなかったので、ルッチは男をさっさと殺した。心臓を一突き。即死だ。殺してから、もう少し遊んでもよかったな、と思った。

腹が立ったからではない。

お前は異常だと言われたのが気に食わなかったのではない。

おれは異常ではない。

おれは、異常ではない。

 

雨が降っている。血のにおいも、死の気配すら洗い流す雨だ。

空は見渡す限り灰色で、町全体が薄暗い。狭く、建物は高いばかりで、晴れていても日は当たらないだろう。積もった埃が、雨で固まっている。

ルッチは踵を返して、死体に背を向けた。翼が濡れてしまうからと軒下に待たせていたハットリが、心配そうに肩に乗った。

くるる、と喉を鳴らす友の首筋を指で撫でて、彼は駅へと向かった。そろそろ列車が来る時間だ。

殺した人間のことは忘れることにしている。どうせ報告書には残すので、必要になればそっちを引っ張り出せば良い。

雨を吸って重くなり、元よりも色濃くなった黒色のスーツの上着を脱ぐと、シャツが透けて張り付いた。背中の傷が露わになる。それを見る者は誰もいない。

風の音すら聞こえない、静かな夜だった。

 

無人の車両で、ルッチは静かに目を閉じる。

そして考えた。

人間を殺すのが楽しいのか​───違う。

人間を痛めつけることが快楽なのか​───違う。

はじめて人間を殺したとき、おれは何を思った?

殺人を忌避する人間もいるらしいが、ルッチはそんな感情とは無縁だった。

そういう手合いは銃を持てば引き金を引けないし、ナイフを持つ手は振り抜かれない。人を殺せない。心持ちの問題ではなく、体が拒否するらしいのだ。そういえば、養成所にもそんなやつがいた。そいつは確か、政府の情報部の方に行ったのだったか。

偶然ルッチはその手合いでなかっただけなのだろうか。

彼がはじめて人を殺したとき、一番に感じたのは、訓練通り、指示通りにこなせたという達成感だった。ああ、おれは政府の、政府の掲げる理想と正義のため、役割を持てるのだと、そう思った。

カクはどうだったか。

初めての任務から帰ってきたとき、「拍子抜けじゃった」と笑っていたような気がする。

「訓練と何も変わらん。緊張は無駄じゃったな」

そう言って、頬に付着した血を親指で拭っていた。

そうだ。人を殺すのは簡単だ。

血を流し過ぎれば死ぬ。内臓が損傷すれば死ぬ。高所から落ちれば死ぬ。大きな血管を切れば、薬のひとつでも盛れば、大した手間もなく死ぬ。

そこに何の感傷があるのだろう。

人を殺すのは簡単だ。

だから、おれは異常ではない。

海を見て、朝日を見て、新たな生命の誕生に、他人の死に、おれ以外の誰かが心動かされるように。

おれは、血と悲鳴に同じようなものを覚えるだけだ。

政府の掲げるお題目のため、自分の手を汚すことが、心地よいだけだ。



ここまでしか書いてなかった

続き書こうかなと思ったけど過去の自分への解釈違いで気が狂ったので無理

Report Page