外堀は気付いたら埋まっているもの
※現パロ
※ロードレホーが幼馴染
※ドレークがひたすら食べてる何で?
「………、友人の話なんだが」
話があると呼び出されたは良いものの、随分歯切れの悪いスタートであった。ドレークがアイスコーヒーと共に注文したサンドイッチを食べ終わり、追加で頼んだパンケーキを3分の1程食べた所であった。話とやらが始まるまで1時間弱掛かっている。
普段の澄まし顔を何処へやったのか、苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。友人と前置きをしているがほぼ100%、というか100%本人の話なんだろうなとは思ったが口には出さない。幼馴染としてのせめてもの情けだった。
「その友人がどうした?」
ローがすかさず相槌を打つ。夜勤明けかつ残業だったと言うのに呼び出しに素直に応じたのは、ただ単に徹夜ハイが過ぎて寝れないからだろう。四の五の言わず寝て欲しい。そして徹夜ハイの男はパンは嫌だとパフェを注文したは良いものの、甘いと言って半分位ドレークに押し付けていた。食べ切れる量を注文しろと毎回言っているが聞いた試しがない。
平静を取り繕ってはいるものの、声からして相当に面白がっている。話があると呼び出された時点で何か面白い事があるだろうと読んでいたらしい。話を聞く前から面白がるなとこっそりテーブルの下で脛を蹴ってやったが、邪魔するなと言わんばかりに脛を蹴り返された。そんなに強く蹴ってないだろ、少しばかり加減をしろ。あとパフェのコーンフレークばっかり押し付けてくるな、苺とクリームを寄越せパンケーキに合わないだろ。
「未成年と付き…いや懐かれているらしい」
「…へぇ」
早くも口端が僅かに上がっている。お前もか。普段の顰めっ面を何処にやったんだと言いたかったが、コーンフレーク塗れのパンケーキと共に飲み下した。ついでにあの麦わら帽子の少年だろうな、と頭の隅にあった記憶を引っ張り出す。随分と快活な少年だった。
「その未成年が青少年保護育成条例に引っ掛かりそうな事をしたいと言い始めたんだが」
「青少年保護育成条例に」
「…青少年保護育成条例?」
「………平たく言えばヤりてェと」
途端、唇を目一杯噛み締め天を仰いだローに対し、ホーキンスは頭を抱えている。ホーキンス、それじゃ自分の事を言ってるのが丸わかりだぞ。ロー、お前笑ったの誤魔化しただろ分かってるんだからな。肩を震わせて全身で笑いを我慢している外科医はドレークの視線に全く持って気付かない。もうお前は家に帰って寝ろ頼む。というかあの少年どストレートすぎないか。
どうすれば良いんだこの状況。片や笑ってはいけない喫茶店状態、片やお通夜の友人2人に挟まれたドレークは無言でパンケーキを口に入れた。やっぱりメープルシロップとバターが一番美味しいな、とやや現実逃避をしながら。
「…喫茶店より居酒屋で話さないか」
パンケーキを食べ終わったドレークの一声により、幼馴染による幼馴染のためのお悩み相談室は居酒屋へと場所を移した。喫茶店で話して良い内容ではないだろうと言う事と、店内が静まり返ってBGMすら消えていたからだ。会計の際に店員の目が泳いでいたのは言うまでもない。
居酒屋に移ったのは正解だったと痛感した。アルコールが入った事により、ローの笑いのツボが浅くなり、ホーキンスの話が色々な意味でエグいものとなった。同じくアルコールを入れているはずなのにちっとも酔えないのは何故なのだろうか。サラダとアヒージョ、たこわさ、枝豆、フライドポテト、唐揚げ等々の頼んだ物の大半が自分の胃に消えていったがちっとも食べた気がしない。何故なのだろうか。
そして今日程両隣が大騒ぎをするタイプのグループで良かったとこれほど思ったことは無い。ホーキンスのエグい話やローの笑い声が程良くかき消されていく。どんちゃん騒ぎに乗じて帰ってやろうかとふと思ったが、酔っ払い2人を置いて帰るのは忍びないと思い止まった。別に酔い潰した方が面倒が少ないな、とか思った訳ではない。取り敢えず追加注文でもするかと、卓上のワイヤレスチャイムを鳴らした。
見事に酔っ払い2人は酔い潰れ、且つ話は微塵も解決法が見つからずにお開きになった。
なお、外堀を完全に埋められてしまったホーキンスが幼馴染2人を招集するまで後数ヶ月の事であるが、これはまた別の話である。