夏祭り 5
玉置に連れられて来た‘そこ’は、お祭り会場と隣の公園の間の細い路地の坂道の先にあった。緩やかなその坂を行くと展望台へ辿り着いた。
「ここです!」
小高いそこは拓けていて見晴らしがいい。
「…本当にいい場所だ…よく見つけたな」
大二が感心したように漏らす。
「昔、友達と偶々見つけて…」
遠い目をする玉置に花達は察する。――“友達”というのは…
「そっか」
ぽつり大二が言って、
「ありがとう、玉置。いいスポット教えてくれて」
さくらがお礼を言った。
いいな。花はふと思う。さくらと大二の、こういう、然り気ないやさしさを。
玉置も同じように感じたのか
「! いやいや、偶々ですから…!
あんな細い路地の先にこんな場所があるなんて思いもしないって人が多いみたいで、まだあまり知られてなくて…穴場、なんです」
口早に説明している。
「大二!さくら!花!玉置!」
「兄ちゃん。彩夏」「一輝兄!彩夏ちゃん!」「一輝…彩夏さん…」「一輝さん!彩夏さん!」
ここで、一輝・彩夏と合流。
「ふたりもここ知ってたんだー?」
「一輝くんが連れて来てくれたの」
「ふーん…一輝兄、リサーチしてたんだ〜(・∀・)ニヤニヤ」
「…そ、それより!何してたんだ?!大二と花は急にいなくなるし、さくらと玉置はふたりを探してくるって言ってなかなか帰ってこなくて心配したんだぞ!」
「それは…(鼻緒で足の指が擦れたなんて言えない…)」
「さくらが、かき氷 食べたいって言うからさ」
「ちょっと!大ちゃん!」
「ふふ」
「でもまぁ無事で良かったよ」
ヒュ~ ドーン!
「始まったね」
夜空に花火が打ち上がる。
花は花火を見るのも初めてだった。
赤・緑・オレンジ・青…。彩とりどりの花が夜空に煌めく。
夜空に咲く“それ”はとても幻想的。
展望台の端で花火を見ている大二にそっと視線を送る。
「花火、綺麗だね」
「そうだな」
さくらが大二の傍に行く。
「花もこっちおいでよ」
さくらに手招きされて近寄ると、大二の隣に立たせられた。
―――近い…ッ
途端、胸の鼓動が跳ねる。訳もわからず動揺している自分にますます戸惑うけれど、どうしようもなくて。
花は、大二にもさくらにも気づかれないよう深呼吸した。
そうして花は、空に花開く彩鮮やかな火の光を見つめる。
「綺麗…」
知らず知らず漏れた感嘆の言葉。
「よかった」
花は、隣から聴こえたホッとしたような声の主の方を向く。
刹那、大二と一瞬、瞳(め)が合った。
時が、止まる。
大二が、あたたかな眼差しで、こっちを見ている…気がして。
彼と視線がぶつかったのは、多分ほんの数秒。
なのに。再び夜空の花火に目を遣る、大二の、横顔から視線を逸らせない。
ヒュ~ ドーン…
最後の花火が夜空に咲き、散った。