変身もの
ここはパルデア。未知の大穴が佇む自然豊かな大地に、ある日巨大なポケモンが現れた。巨大化したポケモンは訳も分からぬまま建物や街を攻撃し、破壊のかぎりを尽くしたかと思えば、いつのまにか縮んで元の大きさに戻っているらしい。
ポケモンリーグは腕のあるトレーナーを集め、巨大化したポケモンが再度現れた時にレイド戦を仕掛けた。しかし、巨大化したポケモンには技が通じないという恐ろしい事実が明らかになったこと以外、成果は得られなかった。テラスタルをしたポケモンの技でさえ、与えられたダメージはごく僅かだったのだ。
この報告を受けたオモダカはリーグの地下にラボを増設させ、この怪物に立ち向かうための研究を開始した。……だが、思うような結果は出ず。
オモダカはラボ内に安置されたテラスタル結晶の前で、眉間に指を押しつけて考え込んでいた。
((一体どうすれば良いのでしょうか。このままでは、パルデアに光は……))
働き詰めのオモダカを心配してか、手持ちのキラフロルがボールから飛び出した。
「おや、キラフロル。どうしました?……寝不足は良くないと。そうですね……しかし」
オモダカは結晶に向き直った。
「どうにも眠れないのです。巨大化したポケモンを何とかする方法を見つけないことには。」
そして結晶に祈るように腕を伸ばし、覚悟を述べた。静かに、しかし力強く。
「パルデアの光を絶やさぬ為なら、わたしは自分を危険に晒しても構わない。」
するとその言葉に応えるように、突如テラスタル結晶が強く輝き、
「なんと」
眩い光は1人と1匹をマルノームのように飲み込んだ。
一方、テーブルシティは巨大化したポケモンの脅威に晒されていた。逃げ出す生徒を校舎に避難させる教師達、そしてネモ。
「パーモット、でんこうそうげき!」
パーモット渾身の攻撃はしかし、敵には擦り傷ともならないようだ。
「なんで……!?」
「ネモさん!あなたも早く逃げるのですよ!!ここは小生が引き受けます!」
教師でありながら四天王でもあるハッサクが、ネモに叫んだ。
「はい!」
「ぷりゃあ!!!ぷりゃあ!!!」
「きゃあ!!」
巨大ポケモン……ワタッコはその巨体からは想像もつかぬ速度で飛び回り、建物を破壊していく。技だけで見ればアクロバットなのだが、巨大化した事で威力が凄まじい。飛び散る瓦礫がネモの脚を下敷きにした。
「ネモさん!!」
「先生、出られません!!」
「セグレイブ、ネモさんを守りなさい!」
繰り出されたセグレイブが、ネモを庇うように現れた。しかしすぐさま、セグレイブの10倍はある大きさ瓦礫が飛来。このままでは流石のセグレイブでも潰されてしまうだろう。
「きょけんとつげき!!」
研ぎ澄まされたセグレイブのきょけんとつげきは瓦礫に命中!……だが背鰭の刃が刺さっただけ、瓦礫は砕けない!
「そんな!」
「きゃあーーーーーっ!!」
ネモに迫る巨大質量が、このまま無惨にも彼女を押し潰してしまうのか!?
否、その時!
「イヤァーーッ!!」
CRAAAAAAAAASH!!
突如としてリーグの方角から瓦礫に蒼い軌跡が飛び出し、粉砕!
「え!?」
謎の軌跡は放物線を描き、ワタッコの元へ一足飛びに立ち向かっていく!
「ストーン・エッジ!」
超自然的に生成された鋭く巨大な岩石群が、ワタッコに突き刺さった!
「ぷりょあ!?」
これは明らかに攻撃が通っている!?通常のポケモンであればほとんど無効となっていたのに!
「パルデアに……光あれ!」
とどめと言わんばかりに雨あられと隕石が降り注ぐ!そして巨大隕石が、ワタッコに直撃!
「ぷりゃあああーーーっ!!」
悲鳴とともにワタッコの巨大化は解け、瓦礫の山となったテーブルシティにポタリと落ちた。
「い、今のは……」
「トップ……なの?」
目の前の光景に絶句したネモとハッサク。
そこに現れたのは、すやすやと寝ているワタッコを抱き抱えたオモダカだった……しかしいつものスーツ姿ではない。
オモダカはキラフロルの花弁を象ったような可憐なドレス衣装に身を包んでいたのだ。そう、彼女はキラフロルの力で変身し、自らが戦う戦士となっていたのである。
「大丈夫でしたか?」