士道
続きも書きたいけどどうかな〜〜ぶち殺す。
士道がその言葉を初めて言ったのがいつか、そんなのは全く覚えちゃいない。今まで言った回数なんて、パンを喰った回数を聞いているようなものだ。
常日頃からその瞬間の爆発の導くままに身を委ね、欲望のままに生きる。そんな士道にとってはそんなつい口を出る、気にも留めないようなありふれた言葉だったが、でも、確実に、これだけは言えることがある。
__今この瞬間でぽっと湧いたその言葉ほど、人生で言ってきた中で殺意の乗っかっているものはねぇ。
士道は足を振り上げつつ高く飛び上がった。人間よりも何回りもデカいやつのための天井は、人間離れしたバネを持つ士道が飛び上がっても頭をぶつけることはなく、士道は減速しないまま奴へまっすぐ飛び降りる。
ガン。
士道の脳内に響いた、まるで鋼鉄同士がぶつかり合うような激しくも鈍い音は、士道が蹴り上げた足が奴の頭を穿った音だったのだろうか。……それとも。
頭を強く貫いた痛みの中、意識を失う直前、士道が見たのは上下左右の反転した紺色の異星人の姿だった。
……
………
…………
「…………。」士道はふっと目を開けた。暗い天井が視界いっぱいに広がっている。
……ここはどこだ?
寝起きでぼやけた目を擦る。伸びて、寝返りをう………………
「……あ?」
……士道は胴体を動かした瞬間に感じた多大な違和感に、思わず顔を顰め低い声を漏らした。何だこれ?
一瞬した悪い予感を振り払うように、もう一度、寝返りを打ってみる。
やっぱり、違和感は変わらない。くっきりと脳に知覚される。
__足の感覚がない。
「………………痺れたか?」
声がやや上擦った。痺れたわけが無いことはわかっていた。だって、ビリビリする感覚は起きてから一度も感知していない。でも、そう言う他に状況を整理できるような言葉が浮かんでこなかったのだ。
士道は確認のため起き上が…………ろうとした。上手くいかなかった。金縛りではない、胴体をシンプルに持ち上げられない。確かに脳内から信号を送っているのに動けないこの状況は、めちゃくちゃもどかしい。
ストレスで髪を掻き乱しながら、とりあえず、頭だけ持ち上げて自分の足元を見ると。
そこには。
太腿の付け根よりも奥、つま先の方が、すっぽりとがらんどうになっていた。
「………………え?」
小さい音が響いた。それは声を出したと言うよりも、押し出された空気に響きが乗っかったような形で士道の口から発せられた。
「…おれの。」
__その時、がちゃりと士道の右手側から音がして、部屋がゆっくりと明るくなった。ふっと部屋の、士道の真上にある照明がついて、それとの間に紺色の顔が現れた。
「テメ……これどういうことだ??」
宇宙人は答えなかった。代わりに、士道を軽々と"持ち上げる"と、壁に"立てかけた"。
「……」士道は目を擦る。擦る。痛いほどに。
__やっぱり、太腿から先が忽然と消えている。
あっけらかんとして自分の足元を見つめた士道を他所に、異星人は何か大きな棒のようなものを二本持ってきて、士道の前にごろりと置いた。
それは、よく日に焼けて、筋肉の着いた脚。間違いなく、士道とともにフィールド上の爆発を追いかけてきた脚そのものだった。しかし、今やその躍動感は見る影もない。
「ぁ……し。」
視界がぼやけて、褐色の肉塊が何本にも増える。
おれの、あし?
俺の?
あし?
足?
「ぁ……ぇ、」
ようやく捻り出した声は、まるで乳飲み子が発したかのようにふやけていた。
ふっと身体が宙に浮く。アイツが持ち上げたのだ、と士道が理解出来た頃には、紺と灰と肌色が混じったような汚い色をして、所々小さい瘤の張り付いた醜い肉棒が、士道の後孔の入口にキスをしていた。
「て、ぇ、……ふ……」テメェふざけんな。ほぼ反射的に脊髄で発生したその言葉は、脳の奥でばらばらになって、呻きのようになって口の端から垂れただけだった。士道はそれすらも分からないまま、ただ呆然と虚空を見つめていた。
一瞬の浮遊感があったあと、腹の中に莫大な質量を叩きつけられた。凹凸がごりごりと前立腺を引潰し、痛みと圧迫感と窒息感、それからいっぱいの快楽が喉の奥に押し寄せる。
「あ"、ぉ"っ……??」
まるでオナホールのように上下に揺さぶられながら低く喘ぐ士道の、くすんだショッキングピンクの瞳が、大粒の涙に崩れた。