咲拓プロローグ
モテパニ作者私日向咲は、プリキュアとしてダークフォールと戦ってから数年経ったその日、高校を卒業しました。
「咲、卒業おめでとう」
「うん。舞もね」
私に話しかけてきたのは大親友の舞。
中学を卒業してからも同じ高校へ進みずっと隣にいてくれた大事な存在だ。
「意外と落ち着いてるね、さっきまであんなに泣いてたのに」
「あはは、涙を出し過ぎちゃったかな?しばらく出なさそう」
こういう時はきっと涙が枯れたって言うんだろうけど、あの日々を過ごした私にはその表現を躊躇っちゃう。
「舞は4月から美大だったよね?」
「うん。咲は調理師学校…それも別の街の…」
そう、高校までは共に歩んだ私たちの道もここからは別れる。
それも私は別の街に行く。
その理由は主にこの街にめぼしい調理師学校が無かったことが理由だ。
「…お兄ちゃんのことまだ気にしてるの?」
「!?」
舞に言われてドキリとする。
今は海外にいる舞のお兄さんで私の初恋の人との過去を問われて。
「ぜーんぜん!私はこのとおり絶好調ナリ!」
「私の前では強がらないで。ごめんね…」
「舞が悪いことなんて一つもないよ。もちろん和也さんも。別れを切り出したのは私だし…」
私はプリキュアの戦いを終えて進級後すぐ和也さんに告白した。
和也さんはそれを受け入れてくれて私たちは晴れて恋人同士になれた。
それから一年ほど幸せな時間を過ごした。
忙しいはずなのに時間を作ってくれて、本当に嬉しかった。
けれどその時間は長くは続かなかった。
和也さんの将来の夢は宇宙飛行士、そのために海外の大学に行くことは前々から決まっていた。
遠距離恋愛という手もあったけど、私からそれを拒んだ。
私は宇宙飛行士になるのがどれだけ困難かはわからないけれど、生半可では無いのはわかる。
だから、その足を引っ張りたくなかった。
だから…別れを切り出した。
思えば勝手だったな、自分から付き合ってほしいと求めて時期が来たら自分から別れを切り出す。
舞に言った通り和也さんは悪くない。悪いのは自分だ。
別れてからも舞たち友達と過ごす時間は楽しかったけれど、胸にぽっかり空いたような感覚は消えなかった。
だから進学先には遠いところを選んだ。
家からは通えなくてもその気になればいつでも帰って来れる場所は選べたのに私はあえてこの街から離れる選択をした。
出ていくつもりはない。
私はこの街が好きだから、たった2年離れるだけだ。
「それで、咲が行くのってなんて街だったっけ?」
「うん!その街はね、街全体が料理に力を入れてて、世界中から美味しいものが集まるって有名なんだ!」
その名前は___
「おいし〜なタウン!」
〜〜〜
そして私は入学までの休みの間においし〜なタウンに引っ越してきた。
私がお世話になるのは福あんというゲストハウス。
案内してくれたのは私と同じくらいの女の子だった。
「は、初めまして!今日からお世話になります日向咲です!」
「こちらこそ、福あんをご利用いただきありがとうございます」
その子は全身黒を中心とした洋服に身を包み、お化粧も決まっててとってもキレイだった。
でも、なんだかどこかで会ったことがあるような?
「なにか?」
「あ、い、いえ」
でもこんな目立つ子一度見たら忘れそうにないし、なによりあっちが何も反応がないのできっと気のせいだろう。
その後その子に部屋を案内されてこのゲストハウスのルールやシステムを改めて説明されて契約完了のサインをした。
「それでは、私達住人と入居者の方は生活スペースが違いますけど同じ屋根の下で暮らしているので困った事があれば相談してください」
「は、はい!あ、そういえばお名前をうかがっても?」
「品田くりむです。苗字は他の者と同じなので名前の方でけっこうですよ。くりむでもリムでもダークドリームでも」
「(ダークドリームはどこから…?)ええっと〜じゃあくりむさんって呼ばせてください」
「ええ、ではそれで。あ、そういえばお昼がまだですよね?近所の美味しいお店紹介しましょうか?」
「いいんですか!助かります〜この街のことまだ全然知らなかったから〜」
そうして私はくりむさんに連れられ部屋を後にする。
その途中で…
「お、ダークドリーム。その人が新しい入居者か?」
「ええ、こちら日向咲さん。日向さん、こちらは私と同じ家の者の…」
「品田拓海です」
彼と出会った。