味がないのに味がする
みじかいよある夏の日、付き合いだして1年くらいたった頃
「ねぇ、ファーストキスはレモン味ってほんとう?」
部屋で一緒にゲームをしているわたし達
リツカのベッドに転がりながら、ちょっとだけ、気になっていたことを聞く。
「うーん、オレも聞いたことあるけど、わかんないなぁ」
リツカはベッドのそばに座っている。ゲームに集中してるけれど、わたしの質問には普通に答えた
「だよねー…」
「誰かから聞いたの?」
「んー…友達がね?わたしに聞いてきたの。レモン味だった?って」
ぶっちゃけ、わたしも気になっていた。
別にいますぐしたい!!という訳でもないし、ずっとこのままでもいいかも…なんて思っちゃってる
「へぇ~~…あ、宝玉落ちた」
「え、嘘!?わたしまだ落ちてない!」
はたからみれば仲のいい友達止まりにしか見えないかもしれない
でも、リツカもわたしも。これが心地いいと思ってしまうのだ
「やっと武器作れる~~!!」
「もう1回!もう一回やったら絶対落ちるからぁ!!」
…まぁでも、したくないと言えば嘘になるわけで
「えぇ~、どうしよっかなぁ…」
「おねがい!!1回だけ」
「…わかった、やろう。」
「やったー!リツカだいすきー!」
ちょっとだけ、いまなら少しだけ前に進んでもいいかなって思った。
「でも回復は忘れないで欲しいかなぁ!!」
「やられる前にやればいいでしょ!!」
…まぁ、やるにしてもちょっと雰囲気足りないなぁ。って思うけど
「やっと宝玉落ちたよぉ……」
「まさか5回も手伝わされるなんて…」
「ちょっと休憩しない?」
「そうだね、ちょっと飲み物とお菓子取ってくるよ!」
ゲーム機を置いて、わたしは目を休めた。
結構遊んだなぁ…リツカは別の武器も作れるくらい素材集まったって言うし…
「おまたせ~、コーラとポテチでよかった?」
「うん!テーブル出すね!」
「ありがとう、助かるよ!」
リツカはジュースとお菓子の乗ったトレイをわたしが出したテーブルの上に置いた
それで、隣に座っておやつタイムといこうとしたんだけど
「…ねぇ、アルトリア。さっきの話なんだけど…」
「さっきの……あ、キスのこと?」
「…ほんとうにレモン味か、試してみる…?」
リツカは顔を赤くして聞いてきた。
耳まで真っ赤で、すごいかわいい。
わたしはこくりと頷いて。唇を差し出す
「アルトリア……」
「ん、んー……」
「アニメの見すぎだよそれ」
唇をたこさんみたいに突き出してたので、突っ込まれてしまった。
「え!?こうじゃないの?」
「違うよ!オレのみたアニメだと、こう…」
リツカは顔を近づけてわたしに口付けをした
リツカがこんな事をしてくれるなんて思ってもみなかったから、びっくりした
でも突然の事だったからわたしもうっかり動いちゃって…
「いっっっ!!!!!」
「っっっっ~~~~~~!!!」
お互いの歯をぶつけてしまった、現実はそう簡単にうまくいかないよね
「ごめん!!勢い付けすぎた!!」
「歯が痛い……」
お互い口を抑えてうずくまってしまう
痛みが引かなくて、ちょっと涙目になってる
味がどうこうとかそんなこと気にしてる場合ではなかった。
痛みがひいて、ちょっと落ち着いてきた
「さっきはよくもやったなぁ…」
「ごめん…焦っちゃって…」
「……もういっかいしてくれたら、ゆるしてあげる」
今度は失敗しないぞ。という意気込みを入れてわたしは顔を差し出した
大丈夫、さっきみたいに大げさな顔をしてないし。いけるはず
でもとても緊張していて、身体ががちがちになっていた
「ん…」
リツカも緊張してるみたいで、ゆっくり、ゆっくりと。顔が近づいていく
焦れったいけど、焦ったらまた歯を痛めるから我慢してるけど、近づく度に心臓がバクバクいってるのがわかる。
ここだけ時間の流れがゆっくりになったみたいで、不思議な感じがした
「っ……」
ちゅ。と唇を重ねる。
お互い手を回し、離れないようにと抱き寄せた
幸せな感覚で頭がいっぱいになった
「…味、した?」
正直、味なんてなにもわからなかった。でも、味わい深いなにかがあった
「…わかんない」
「オレも」
唇を離したら、途端に寂しい気持ちが溢れてしまった
きっとわたしは泣きそうな顔になってる
「…もういっかいして」
無意識のうちに、そんなことを言い出していた
リツカも、寂しそうな顔をしていて。切なくなった
また、柔らかい唇の感触が伝わってくる
そしてもう1回、また1回
気がつけばふたりともキスに夢中になっていた
していくうちに慣れていって。抑えが効かなくなっていった
接吻にハマりすぎて、だいぶ時間が経ってしまった
「…ぬるい……」
「……氷とってくるね」
コーラはすっかり温くなっていて、全然美味しくなかった