君たちと僕の未来
あかねとルビー、二人と協力し始めて、そこからは早かった。あかねの探索力、ルビーのカリスマにも似た吸引力、その二つが揃ってしまってからは首謀者を見つけるまで大した時間はいらなかった。そして、復讐は終わり、僕らは何気ない毎日を送っている、そして今日もまた騒々しい日常の始まりを告げる。
「ルビー、あかね…そろそろ放してくれるとありがたいんだが」
「えー、でも私もおねえちゃんも久しぶりの休日だからもっと充電したいんだけど」
「そうだね…それに昨日はアクアくんにたっぷり可愛がられたし」
「…僕は食べられた側なんだが?」
「あはは、役得だったくせにー」
「それは…否定はできないな。二人とも可愛いし」
「そうやってすぐ可愛いっていうよね…その言葉にどれだけの人が騙されてるか…」
「少なくとも先輩は今でも騙されてる」
「人聞きが悪いな、本心で言ってるんだが」
「猶更悪いよアクアくん」
三人同じベッドで談笑しつつ僕の腕に左右から絡みついてる二人に視線を送る、こんな僕を見放さず愛してくれてるあかねと仲違いの果て先日の和解のあとにやたらべたべたと触れ合ってくるようになったルビー。僕の、大切な人たち。復讐を終えた後もちらついていた『僕』たちもこの二人と居る時はなりを潜めてくれている。けどそれでも僕がアイの事を考えると出てくるから、消える事は無いと思う。
「アクアくん、ダメだよ。今は私たちだけを見て」
「そうだよ。ずっとずっとこうしたかったんだから」
「分かってるけど…今日の昼ごはんどうする?」
「だからやめてって、激しいって言ったのに…アクアくんが鳴かせたんだもん」
「そうだそうだー!おねえちゃんを執拗に攻め立てて私にはあまりだったの酷いよ」
「じゃあルビーが飯作るって事で良いのか?」
「…アクアが手伝ってくれるならやる」
「そういうことらしいけど良いか、あかね」
「んーじゃあ夜は私とアクアくんで作るって事で、お昼はおとなしく見てるね」
「僕は両方やるのか…」
「だってアクアは元気でしょ?」
「…一応、僕明日早いんだけど」
「私たちの休みに合わせて取ってほしいなー」
「こらルビーちゃん、ダメだよ?今回は私たちが伝えてなかったんだから」
そんな可愛い事を言ってくる二人に苦笑いを零しつつ、日々を生きるのは精神的に良い物だと思う。今まで蔑ろにしてきてたけど本当に大切なんだなって改めて認識してるよ。そうこうして僕はいまルビーの横で素麺をほぐしているんだけど、ルビーは僕を見ているばかりで何もしていない、どうしたんだろうか。
「せんせ、やっぱり手馴れてるね」
「前世では長らく一人暮らしだったし、これ位はできるよ」
「やっぱりおねえちゃんに料理習おうかな…」
「あかねのご飯は、反則だぞ…、毎日食べたいくらいだ」
「本当?!だったら夜のご飯は私が作るね!」
「僕の手伝いはいらないって事か…」
「…じゃあアクアは私に構えー」
「ルビーちゃん、それはずるいよ!」
「えぇ…でも、昨日の夜はおねえちゃん凄かったよ?」
「でもそれはアクアくんが、執拗にしてきただけだもん…」
おっと、これは僕にも言及が及びそうだ。だけど、あかねもルビーもとても魅力的なんだから許してほしい気持ちもある。昨日のあれだって僕の理性をがりがりと削っていったあかねたちが悪いんだから、いやまぁ…手を出したのは僕だけどね?二人して献身的に奉仕してきたら、流石に僕の理性でも持たないよ。だから僕は禁じ手として折衷案を出す。
「次の長期休暇は三人で温泉にでも行こうか」
「「いきたーい!」」
その発言に二人が喜んでくれているだけでも、仕事を頑張ろうという気力がわいてくる。二人が笑顔で傍にいてくれる、本当にこれだけで僕は幸せだと思えるから自然と笑みが浮かぶ。この笑顔を護りたい、この笑顔と共に歩みたい。そう思わせてくれる、この二人を心の底からそう言えるほど僕はこの二人が大切なんだ。
「あかね、ルビー」
「どうしたのアクアくん?」
「ほうひたの?」
「ルビーちゃん、ちゃんと飲み込んでからにしようね?」
「愛してる」
二人が目を見開いてる、そんなに意外かな。僕だって素直になることぐらいはあるというのに、その反応は少し傷つくぞ…。いや、まぁ今までの僕が招いた結果だけど…だとしてももう少し反応してくれても良いじゃないか。
「おーい。ルビー、あかね?」
フルフルと震えている二人に流石に心配になってきた、そんなに嫌だったかな…、なら今後この単語は封印して…普段通り可愛いとか好きで済ませるか?でもそんなに嫌ならちゃんと言ってくれればいいのに。
「おねえちゃん、今…なんて言ったか聞こえた?」
「私の耳がおかしくなければ、愛してるって」
「いってたよね?!絶対いってたよね?!?」
「何だよ二人して、嫌なら嫌って」
「そうじゃないよ!アクアは私たちがいくら言ってもソレを返してくれないから凄く心配だったんだからね!!」
「でも、よかった…私たちはちゃんと想いが通じ合ってたんだね」
「当たり前だろ、僕にとって二人は本当に掛け替えのない人なんだから」
そんなかけがえのない二人の笑顔を見つめる、アイ…僕にもようやく手に入ったよ。君がくれた物に近い、本当にかけがえのないそんな人たちが。
「どうしたんだよ、ルビー、あかね」
「うぅん、幸せだなって」
「これからも毎日続いていくと良いね!」
アイ、見てくれてるかな?
君が僕らにくれた愛はこうして僕らの今を形作ってくれてる。
だから僕もルビーも、今本当に幸せだよ。