向日葵のような笑みを
「私と暮らすのイヤなのかな…迷惑なのかな…!!」
涙を流しながら壁越しにルフィに問いかけるレベッカ。その様子を見るルフィの脳裏には一人の少女の姿が映し出される。
ーシャンクスは私のこと嫌いになかったんだ…だから私を置いていったんだ!!
「…なぁ、レベッカ」
「なに…ルーシー」
「父ちゃんの所、行くぞ」
「え…キャ!!」
そう言うとルフィは壁を破壊し、レベッカを抱える。
「…ルフィ君、レベッカのことお願いね」
「分かった」
その様子を見ていたヴィオラは苦笑しながらルフィに問いかけ、ルフィはレベッカを抱えながら跳躍する準備に入る。
「る、ルーシー。い、いきなりこんな強引なこと(この体制。お、お姫様だっ)」
「レベッカ」
「ハィ」
「飛ばすからしっかり捕まってろ」
「…ハイ」
ヴィオラとルフィが自分そっちのけで通じ合ってることや明らかにお姫様抱っこされているレベッカは慌ててルフィに抗議しようとするも、ルフィに間近で真剣な表情で直視されたことに硬直し、最後には借りてきた猫のように大人しくなってしまった。
「…あの子もやるわねぇ。あの様子だと他に何人女の子泣かせているのかしら」
そして、ルフィがその場を離れ、レベッカが誘拐されたとして慌ただしい様子となる中、ヴィオラはルフィが飛び去った方向を微笑みながら見つめ続けていた。
ーーーー
「…ありがとう」
「ん?」
逃走するルフィに抱えられながらレベッカが言う。
「…多分、あなたが来てくれなかったら私はお父さんに会う勇気が出なかった」
「…お礼なんかいらねぇぞ。これはこれが勝手にやってることだ」
「じゃあ、大丈夫だね。これは私が勝手に言ってることだから。」
「…ししし!!」
ルフィが笑いかけるとその笑みをみたレベッカの頬が染まっていき、彼女の胸の中にある願望がふと思い浮かぶ。
ー君も、君も一緒に私と…
「ルーシー、あのッ…いや、なんでもない
(…ダメだよ。これ以上ルフィに我儘を言っちゃ)」
思わず出かけた言葉を飲み込み、黙り込むレベッカ。
「また、会えるさ」
「…ぇ」
しかし、ルフィの言葉に思わず顔を上げると、此方の瞳を覗き込むルフィと目が合った。
「今度会った時はレベッカの父ちゃんと一緒に美味いもん食おうぜ!!」
「…うん…うん!!」
レベッカが熱を増す目頭を堪えながらルフィの言葉に返答すると、ルフィも嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
ーあぁ、やっぱり眩しいなぁ
前を向き直し、真剣な表情でキュロスの元に向かうルフィの顔を眺めながらレベッカは思う。
ー私が辛い時には向日葵のような笑みを君は迷いなく向けてくれる。
ーそんな君に
ー私は惹かれたんだ