名残り風
5年という歳月は、決して短くない月日だ。
5年あれば、赤子は歩けるようになり、少女は大人びた顔を見せ、若木は枝葉を伸ばして実をつける。
ルッチ、カク、カリファ……彼らがガレーラカンパニーで過ごした5年間は、決して短くなかった。
あれから2年。パウリーは今でも、このガレーラに残った彼らの残滓を見かけることがある。
仕事ぶりは真面目で、職長にまで昇り詰めた。特にカクは、ウォーター7での人望は厚く、知り合いも多かった。
「山風さんはどこに行ったの?」
そう聞かれて、言葉に詰まることも何度もあった。
今もそうだ。
ガレーラの書庫、過去の設計図をまとめた書類をめくると、カクの几帳面な仕事ぶりが残っていた。
「……もったいねェ」
世界政府の仕事が、どれほどのものか知らないが。
あんなに良い船大工が、あんなに楽しそうにウォーター7の空をかけた男が、スパイなんかしてるのはまったく世の中の損失だ。
パウリーはそう思って、チッと一度舌打ちをした。