同類的執着

同類的執着


人から馬に転生したはいいが、母馬には生まれた瞬間に「気味が悪いから」と育児放棄された。

でも牧場の人たちが僕を支えてくれて何とか育つことはできたけど、


『こっち来んな!』

『あっち行け!』

『気持ち悪〜い』


同年代からそう言って遠ざけられてしまう始末。

まるで鬼ごっこみたいに追いやられた先は、常々世話をしてくれる人たちから「近づいたら駄目だよ」と言われていた場所で。


【…誰だ、お前】

【ひょえっ!】


入り込んだその場所には、大きな、真っ黒な馬がいた。

僕よりもずっと年上みたいだ。


【え、えっと、あの…勝手に入ってごめんなさいっ!】

【っ!おい待て!】

【ひんッ!?】


低く、圧のある声にその場から離脱しようとすると引き止められる。

慄きながら静止していると、


【お前、俺の言葉が分かるよな…?】

【…はぇ?】

【分かるよなぁ?】

【ひッ!は、はひッ!!】

【そうか…そうかァ!】


突然大喜びしだしたその馬に呆気に取られて。

でも次の瞬間、言われた言葉に目を見開いた。


【お前も元は人間なんだろ?】

【へ…?】

【俺もだよ】


ありえないはずの事象を、共有できる存在がいた。

どうやら彼も生まれてすぐに育児放棄されたのだと。

僕が他の馬と言葉が通じず、彼だけに言葉が通じるのは、転生した影響からじゃないかと。

そんなことをいろいろと教えてくれた。


【なァ、明日も来いよ!いろいろ話そう!】

【ぁ、は、はい】


そうして、僕は暇さえあれば彼と関わった。

だって、彼だけが僕と話せるのだから。

それは彼も同じだった。

同じな分、僕よりも歳上な分、…その孤独は大きなものだったのだと。


【ぁ、あ、…やだ、やめ…ッ゛!】

【離さねぇ、離さねぇ、離さねぇからなァッ!?】


その時の僕は、まだ、気づいていなかったのだ。

牧場の人からもうすぐここから離れるよ、と言われて。

そういうものなのかと、彼に話した。

祝福してくれると思った。

いつも優しい彼だから。

でも、


【……ぇ】

【え?】

【許さねェ…って、言ってんだよッ!】


体にのしかかられる。

逃げたくても、恐怖で逃れられない。

必死に、ごめんなさい、ゆるしてと言い募ろうにも止めてもらえず、


【は、はァ…っ、俺の、おれのそばにずっと…ッ!】

【ぃ、ぃだ、い゛あ゛…っ、】

【お前のせいだ、お前が、お前がいなけりゃ…】

【ぅ゛、いぁ゛、だずげ、おがぁ、ざ…!】

【俺は『孤独』に耐えれたのに!!】

【あ゛〜〜〜〜〜〜〜ッッ♡♡!!!!】


熱いのが、ナカに注がれていく。

分かりたくないのに、彼が呪いのごとく【孕め】と繰り返すので嫌でも理解して。

【嫌だ】と何度泣き喚いても、そのたびに手酷くされて、最終的には牧場の人たちが助けてくれたけど…、


【まぁま、まぁま】

【…なぁに】

【まぁま、すきー】

【……うん、ぼくも、すきだよ】



***


僕:

元ヒトミミ♂。

ヒトミミインストールされてるせいで母馬に育児放棄され、他馬と会話ができなかった。

が、同じく転生者(転生馬?)であった俺と出会い交流を深める。

しかし俺に執着されてるとはこれっぽっちも思ってなかったせいで悪手というか地雷原に突っ込んでしまったためぴょいぴょいされ…。

何だかんだ産んだ仔には優しいママになる。

たぶん死ぬまで俺の相手をさせられるんだろうなぁ…。

んで産んだ仔たちはめっちゃ走る。


俺:

元ヒトミミ♂。僕より歳上。青毛。

馬になってからの経歴は大体僕と同じ。

言葉が通じないが故に虐められていたところ、生き残るために気性難となった。実は牧場のボス馬。

孤独に慣れ親しみ、これからも孤独に生きるのだろうな…と思っていたところに現れた僕に執着中。

お前、俺を孤独から救ったくせしてまた孤独にすんのか!?!?!?の気持ち。

自分の行い()で僕のココロがぽっきりいこうが僕が自分のそばにいてくれさえすれば満足な男。ヤンデレ。

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