古代の力はどこから?

古代の力はどこから?




*アギャスの特性は日照りだと思ってるくらいのパラポケ理解度でアオイちゃんが古代活性に気づく話……になったら良かったのに。

*帰宅組のエミュに自信がないちゃん。

*パラポケの未知の生態を勝負を通して見つけていくアオイちゃん達が見たいだけです。誰か書いて(他力本願寺)





ロースト砂漠を望む崖の上。真下にある列柱洞は未だ湿った空気を孕んでいるが、既に崖上に繁茂する草木の葉先は乾きつつある。

昨晩の雨も上がり、まだ雲は残るが快晴となる予報である。常人には物理的に辿り着けない僻地に、赤い龍の背に乗った二人は難なくその場所へと到着した。


「それじゃ、ペパー達が来るまでだけどやろっか!ネモ」

「うん!もう昨日からワクワクして眠れなかったの、楽しみ!」


意気揚々とポケモンボールを手に取った学生服の二人。ネモとアオイである。

彼女らが口にした通り、残り2時間もすれば昼食の約束をしたペパーとボタンも到着する。僻地に登る手段のないこの二人を迎えるべくコライドンもボールから出ている。ただしネモとアオイは勝負したさに約束より早くここへ来たので、今コライドン自身は草の上に突っ伏して骨休めに徹している。

「早速出すからよろしくね、ネモ」

アオイ、ネモ共に腰元のボールは6つある。しかし今回は予定時間を考慮した結論で、2匹を使ったシングルバトルに決まった。


「いっておいで、ルガルガン!」

「まかせたよトドロクツキ!」

チャンピオンランク同士のポケモンバトルが始まった。


先制したのはネモのルガルガンである。学内の大会では長期戦を見越した搦手も扱うが、2匹勝負とあって初手から攻めの選択を取った。自慢の俊足でトドロクツキへと突進し、岩のような体毛を食い込ませる。


「逃すかぁ!かえんほうしゃだ!」


悪戯っぽい声の指示通り、トドロクツキの口から高音の炎が放たれる。ルガルガンを崩す隙は岩タイプの割には高くない耐久である。ネモがそれをカバーする為に深追いさせない事を、ライバルたるアオイは当然知っている。読み通りに離脱する背中に向かって伸びた火炎は、ルガルガンを倒す事こそ出来なかったが火傷を負わせた。


「アオイ、まだ技調整してないって言ってたよね?かえんほうしゃ使えるんだこの子」


ネモとて歴戦の猛者である。アオイが連れてきたという未知のパラドックスポケモンを一目見て、おそらくフィジカルの強い攻撃型だと的中させる考察力は流石の一言である。故にこの遠距離をカバーする反撃は想定外であった。ただし想定外であったとて、ネモの眼差しに見られるのは戸惑いなどない高揚感であるが。


「アプリで見た感じはドラゴンと悪タイプだけどね!いろんな技使ってくれるんだよ」


アオイもまた嬉しそうにトドロクツキを自慢する。呼応してトドロクツキは着地したままながら胸を張るように鼻を鳴らした。出会って日は浅いものの、確かな信頼関係が築かれているのは誰の目にも明らかである。


改めて勝負に両陣が集中する。ストーンエッジで攻撃しながら、石柱の間を縫ってアクセルロックの突撃を仕掛けるルガルガン。対して地に降り立つ限りルガルガン有利の地形から逃れられないトドロクツキは、りゅうのまいで舞い上がり空へと離脱しながら加速する。そして高まった攻撃力を活かしたしねんのずつきで石柱諸共に相手の粉砕を狙った。


薄い雲越しの太陽が光を強めながら勝負を見守る。この崖上にも、砂漠から溢れた熱風が届いている。

白熱した攻防の末にかろうじてトドロクツキが競り勝った。ネモはお疲れ様、と戻したルガルガンに声をかけて腰元に収めた。そして次の選手を戦場に送り出す。

「パーモット!勝ちにいくよ!」

降り立った武闘家に、アオイの表情が引き締まる。分が悪いが、トドロクツキは続行の意志だ。アオイはその意を汲む事を頷きによって伝えた。


「パーモット、れいとうパンチ!」

控えを警戒してデメリットの大きいインファイトを避けた指示。トドロクツキを一撃補足出来ればパーモットの勝利が確定する。周りに出来たままの石柱はパーモットの足場となって空中のトドロクツキを追い詰める。

必然アオイ達はこれを避けて一打捩じ込むしかない。

「トドロクツキ、火炎で勢いを削いで!」

空へ逃げ切るだけの距離を稼ぎ損なったと判断したアオイは賭けに出た。火炎放射による牽制と目眩し。まだ下方にいるパーモットに火炎を吹きかけながらトドロクツキが上昇する。


すっかり雲の消えた空に燦々と太陽光が降り注ぐ。予報通りの快晴の空を背に、トドロクツキの全身が太陽を遮った。

「いっけぇしねんのずつき!」

咆哮と共に勢いよくトドロクツキが下降する。しかし先程見せてしまった手に、チャンピオンネモは二度の隙を見せない。


「パーモット、今!」 


石柱まるごと砕いたトドロクツキの頭であるが、既に追跡をやめて距離を取ったパーモットを捉えられなかったのだ。頭突きを躱しきり懐に飛び込んだパーモットが、守りを捨てた一打で勝負を決めた。


アオイはあちゃあ、と声を漏らす。相手がネモである事は敗因のひとつだが、まだトドロクツキを十全に把握できていない自身の不勉強も悔やまれる。その上で一緒に戦ってくれた大活躍の友を退げる為ボールを手に取った。


「お疲れ様、次こそーー」


ボールに戻そうとしていたアオイの表情に緊張が走った。ネモもただならぬアオイの様子に気付き、目線の先のトドロクツキを注視する。


懐にもらった一撃で勝負に使う体力は残っていないはずである。しかし当のトドロクツキは翼を震わせ、地についた前脚の爪は土をこれでもかと握りつぶしている。最も異様なのは先程と打って変わって凶暴さが前面に押し出された眼光と息遣いであり、単に敗北の悔しさを滲ませているというにはあまりに鋭い表情だ。指示なき攻撃に転じる重心の移動を二人は見逃さなかった。

「パーモット!」「避けて!」


急所を狙った爪の一撃をパーモットが身を捩って回避する。トドロクツキは目に飛び込んだもの全てを狙うかのようにあちこちを切り裂き、最終的にその視線をネモに向けた。

すかさずネモのラウドボーンがボールから出て眼前へと着地する。それを頭から叩き割らんと突撃したトドロクツキの頭上には、しかし既に翼持つ王たる赤い守護竜が迫っていた。


「止めて!」


アオイの声とほぼ同時に、トドロクツキは上からコライドンにのしかかられた。逞しいコライドンの腕力は押さえつけたトドロクツキに逃亡の隙を与えない。振り払おうと激しい抵抗を見せたトドロクツキも、疲労か諦めかようやく大人しくなった。


ーーーーーー


勝負の中断を余儀なくされた二人は、手持ちポケモン達と休息しながらも既に先程の事態を考察していた。手持ち達の手当ては済ませており、大きな怪我が誰にもなかったのは確認済みだ。

「アオイが電話で言ってたのが、さっきの?」

「うん。いつもじゃないから逆に分からなくってさ」

トドロクツキはアオイの側に寝そべったまま話を聞き流している。その様子からは先程の凶暴性は想起できない。

「何がきっかけなのか分かるまでは、ちょっと他の人との勝負おあずけさせちゃうなーって」


列柱洞の上などという僻地に来た理由がこれである。アオイがネモをピクニックに誘ったのは、トドロクツキの能力に押し負けない実力は勿論、ポケモンを見る目を信頼してこの事を相談したかった為である。当然パラドックスポケモンであるというだけで人目を避ける理由はあり、今回のような凶暴化が起きた時に人的被害を減らす為にもこうした奇妙な場所をピクニックに選んだのだ。


「うーんダメージは凄くあっただろうけど」ネモが腕を組む。「そうじゃない時もあったんだよね?」

「勝負に出して早々、も一回あったんだよ。相手してたのがコライドンで…」

アオイは覚えている限りの情報を答える。複数回、模擬勝負中である事以外は場所も相手も規則性は見当たらない。情報を出されたネモもそこは同じ感想のようである。


「んー?……あ、じゃあ古代から来てるコライドンなら分かるんじゃない?」

「一理あるかあ。で、どうやって聞けば…?」

未だ完全形態のコライドンが振り返る。

「ねー、コライドン。トドロクツキが暴れちゃうのなんでだろ?」

アオイがぼんやりコライドンを見つめたまま尋ねる。アギャ、とコライドンは首を傾げたが直後、ギャス、と上空を見上げた。


何か見えたのかとネモもアオイも目線を追う。しかし雲ひとつない青々とした空だけで動くものは何もない。むしろ目に飛び込んで来たのは眩い光を放つ太陽だけである。

「良い天気だなあー………?」

何気ない一言だが確実なヒントに気付き、ネモもアオイも同時に空から互いへと向き直った。


「考えてなかった」

「だね、そうと決まればもう一度しーー」


二人の言葉を遮るように、二人分のスマホロトムが着信を告げる。それを聞いて崖の下へ飛び降りていったコライドンは、いつかとは違って両脇に人間を抱えて軽々と戻ってきた。


「ちょ、なんでこうなったし」

「オレが聞きてぇよ……」


ボタンとペパーである。ピクニックのきっかけこそトドロクツキの事であるが、勝負以外に他人と過ごす楽しい時間も経験させたいとアオイが誘ったのだ。ネモとしては仮に今の二人でサンドイッチを作れば具材乗せパンはおろか虚無だけが残った皿を前にする事は想像に難くなかったので、反対する理由も勿論なかった。


「勝負はお預けにしとこう!ボタン、ペパー、いらっしゃーい」

「おう、来たぜアオイ……で、コイツなんでこの姿?」ペパーは具材の詰まった鞄に釣られたコライドンを制しながら言葉を返す。

「……まさか勝負してた…?」ボタンは離れた所にある石柱群を見て半ば確信しながらそう尋ねる。


「流石ボタン!今もう一回やろうかな?って思った所だったんだよ!」

「相変わらずネっモいな……」

「今回は私の頼みでもあるから!それはそれとしてもう一回勝負はする!」

「チャンピオンランクって皆こうなるもんなのか?……まぁいいか、とにかく昼近いから用意しちまうぞ」


はーい、と返事をしながらアオイとネモがテーブルを組み立てていく。その音を聞きつけて休憩を取っていたネモとアオイのポケモン達も駆け寄ってきた。その中にはトドロクツキも混ざっている。

「お、噂の新入りちゃんがそいつか。旨いもん食わしてやるからな」


あっという間にペパーは具材を切り並べ始める。カット済み具材の用意は他の三人も手伝って作業しやすく並べ上がった。肝要なパンへの味付けはペパーに一任され、ソースのついたパンが具材を乗せられるべく皿へと配置についた。

「じゃ、後は私も具材乗せ手伝ーー」

「まぁ待て、アオイは新入りちゃん緊張してねぇか見ててくれ、な?」


爆発を回避したところでペパー中心に手際よく具材がパンの上へと並んでいく。上のパンが余す事なく具材達に被さったところで、特製サンドイッチの完成である。

「お待ちどうさん!」

ペパーの決まり文句と共に、銘々サンドイッチを手に取る。数秒後の全員の表情が恍惚としたものだった事はいうまでもない。


「ところで言っとった悩み?とかどうなったん?」

「手がかりが一つ出てきた感じかな。だからネモと一緒に天気を変えられるチームで勝負してみようと」

「当たり前のようにチーム複数いるの草なんだが」


ボタンとペパーもパラドックスポケモンに関してアオイが行き詰まった事は聞いている。勝負や育成が得意ではなくとも友の力になれるなら、そう二人とも心算はしてきていた。自身が勝負に参加しないとしても、まだ未知の生態を抱えている相手をこうして観察するのが何かの手助けになるだろうと。


「よし、自己防衛できる距離にはするけどオレもなんか変なとこないか見ててやるよ」

「同じく。勝負しながらは余裕なくても外からなら」

ペパーに続き、ボタンも協力を惜しまない意を伝える。仮にもパラドックスポケモン、エリアゼロの危険生物という区分である故に遠慮しかかったアオイの心も、この一言に救われる思いだ。


「ありがとう二人とも!トドロクツキ、もっかい勝負やってくれる?」

アオイの問いにトドロクツキが頷きでもって肯定した。ネモが勢いよくボックスにアクセスしている。程なくして、ネモの対戦メンバーも整ったようだ。


「よし、次は負けないからね。この子達で勝ちに行く!」

「負ける気はないけど、天気ね!天気の話忘れないでね!」


言葉を返された直後のネモの表情は「忘れてた」と言わんばかりである。勝負直前であった為大事には至らなかったが、観戦する二人からは揃って溜息が漏れるのだった。


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