取り残されたもの
「ルフィ大佐……」
海軍支部の自室で一人の女海兵が項垂れていた。”海軍の英雄”と呼ばれた男モンキー・D・ルフィが今や天竜人に逆らった大罪人として海軍に追われていると言う現実を彼女は受け止めきれないでいた。
私にとってモンキー・D・ルフィとはまさに太陽のような人物であった。海軍に入り右も左も分からない自分を暖かく向かい入れてくれたこと。力が伸び悩む自分のために付きっ切りで訓練を手伝ってくれたこと。誰にでも太陽のような笑みで明るく接し勇敢に海賊を倒す姿を見て憧れ以上の想いを抱いた。
彼が七武海クロコダイルを倒しアラバスタを救ったことを聞いた時は彼こそが大海賊時代を終わらせるのだと本気で思ったものだ。それがどうして……。
「許せない…」
天竜人に暴行するきっかけとなったウタが憎い。彼を犯罪者として貶めた天竜人と世界政府が憎い。
そして何より周りへ憎悪を向けるだけで何もできなかった無能な自分が憎い。ウタ准将とルフィ大佐の関係を知っている者なら、彼女がマリージョアに連れてかれるとなれば彼がどんな行動を取るかなど分かっていたはずだ。しかし私は彼を取り押さえることも天竜人を諌めることもできずただ見ていることしかできなかった。ルフィ大佐に嫌われることが恐ろしいから。天竜人に逆らうことで破滅することが恐ろしいから。
「私はどうすれば良いのですか……。どうすれば良かったのですか?ルフィ大佐…」
太陽を失った女は、惨めにうずくまり嘆くことしかできなかった。