双輪揃いて道を行く

双輪揃いて道を行く


捏造・ご都合主義上等

何でも許せる人向け

アホみたいに長くなった挙げ句にわかりにくいかも



<事前情報>

BLTV企画の一環でチーム戦のゲームを行うこととなった。それはサバイバルゲームに近いが、複数チームが一斉に行動するのでかなり頭を使うゲームであり、それ故に試験もかねて動き回れるサッカー選手に依頼が来たという訳だ。

絵心や帝襟は普段とは使う筋肉が違うかったり、そこそこ整備されているとはいえ山道を動くことによる怪我のリスクなどを鑑みて難色を示したが、依頼料が高額なのとお偉いさんが関わっているらしく、サッカー協会の方からの圧力で強行されることとなった。

全員となっては流石に人数が多過ぎるので、日本人メンバーの内で参加者を別けて戦闘者4名、オペレーター1人の計5人の3チーム戦で行われることとなった。

 

チームブルー:潔世一、國神錬介、我牙丸吟、黒名蘭世

オペレーター:氷織羊

 

チームホワイト:御影玲王、凪誠士郎、オリヴァ・愛空、閃堂秋人

オペレーター:二子一輝

 

チームレッド:七星虹郎、糸師凛、乙夜影汰、蜂楽廻

オペレーター:烏旅人

 

各棟から平等に3人づつ選出しろと言われるかもしれないが、二子や氷織がゲームに慣れているからとオペレーターに立候補し、烏が凛と士道が同じチームになることを拒否するなど、辞退と推薦と却下が乱発して最終的に絵心が独断で同じ所属棟のメンバーが別チームにならないように纏めてこうなった。


 

 

<事前情報>

BLTV企画の一環でチーム戦のゲームを行うこととなった。それはサバイバルゲームに近いが、複数チームが一斉に行動するのでかなり頭を使うゲームであり、それ故に試験もかねて動き回れるサッカー選手に依頼が来たという訳だ。

絵心や帝襟は普段とは使う筋肉が違うかったり、そこそこ整備されているとはいえ山道を動くことによる怪我のリスクなどを鑑みて難色を示したが、依頼料が高額なのとお偉いさんが関わっているらしく、サッカー協会の方からの圧力で強行されることとなった。

全員となっては流石に人数が多過ぎるので、日本人メンバーの内で参加者を別けて戦闘者4名、オペレーター1人の計5人の3チーム戦で行われることとなった。

 

 

<本編(視点が交代していきます)>

(チームブルー)

サバイバルゲームを行う場所はBLの建物から少し離れているので、選出されたメンバーは情報を漏らさないようにそれぞれがマイクロバスに乗って移動し、サバイバルゲームを行うまでに待機する拠点も別だという。

「何でこんなに徹底的なんだ?これって普通なの?」

「僕らは同じ所属やけど、別所属の人たちが初見で対戦するってことを想定しているみたいやね。普通にサバイバルゲームと違ってそれぞれに付けられたドローンのカメラをオペレーターがリアルタイムで見るから、情報漏れも防がなあかんし」

「ハイテク、ハイテク」

「山は危険が多いから、獣の事を抜いても地層が上下で違ってる場所や、急流の近くは危ないぞ」

「そこら辺は最低限は整地されてるんじゃないか?人が走ったりした程度で崩れるとかはないと思うぞ」

「…一次選考の時みたいに迷子になるなよ」

「多分大丈夫!」

「多分じゃねえよ」

わいわいと賑やかに車は進み、ペンションの近くまで来た。元々はすでに各待機場所に別れることを想定しているらしいのだが、サバイバルゲーム初心者も多いので各班ごとにフィールドの案内と各自の武器を選ぶ。その後、全体でスーツの着方やゴーグルの付け方、一通りの武器の使い方を説明してくれるという。

審判&万が一の救助役を兼ねているらしい男性がサバイバルゲームの銃の扱い方を説明する。ゲームで見慣れているらしい氷織が國神に噛み砕いて説明し、我牙丸と潔と黒名が手元の銃をこねくり回しながらなんとか扱い方を覚える。

「じゃあ、今から各待機場所に別れてもらう。私がフィールドの最終確認を行うから、お昼を食べて休憩したらスタートするよ。何か質問はあるかな?」

「…壊れたら、どうすればいい?」

國神の手にはものの見事に割れた銃があった。しょぼんとしているので、持っているうちにやってしまったのだろうことは明白だ。少し力を入れ過ぎてしまったらしい。

「わあ!凄い力だね君!う~ん、君にはもうちょっと一緒に取り扱いを説明しようか。君のチームのメンバーだけはもうちょっと残ってくれるかい?」

「すみません!分かりました!!」

「了解や」

「承知、承知」

「じゃあ、他のチームは各々の待機場所でお昼を食べてね。サバイバルスーツにGPSはあるけど、まだ着てないから迷子になっちゃだめだよ~」

潔達のチームがもう少し詳しい力加減などを説明されることとなり、他のチームは各待機場所に散っていった。國神が力の方向を詳しく説明されている間に、潔達は許可を貰ってペンションやその周辺を探検していた。

昼食後、最終確認したが危険な獣はいなかったと報告が入り、サバイバルゲームが開催されることになった。選手たちがそれぞれのスタート位置に移動する。

 

 

(チームホワイト)

『皆さん、準備はいいですか?』

「ああ、問題ないぜ、二子」

『作戦の再確認を行います。二人一組で行動し、片方は索敵で片方は攻撃。発見次第距離を取って戦闘に入り、片方が倒されたり、分が悪いと判断すれば退避。銃弾は1人6発なので、無暗に発射しないように』

「ラジャー!」 

「わかった」

凪と玲王、閃堂と愛空のペアが分かれて動き出す。閃堂・愛空は森林地帯に入り、周囲を警戒しつつ細い木々の遮蔽物の陰に身を潜める。結構急な勾配なので動くのは一苦労だ。少し上ると、開けた道のような場所が出てきた。誰かがいる気配がする。声を潜めて、愛空は二子と閃堂に報告した。

「閃堂、二子、誰か近くにいる」

『愛空さんのカメラに映った背の大きさからして、レッドの糸師君かブルーの我牙丸君、國神君でしょうか。何にせよ、周囲の警戒をおねg』

「足音が大きい。それだと森の動物を刺激するぞ」

割り込んできた声に、反射で愛空が閃堂を引っ張り木陰に入り込む。声の主である我牙丸は2人に銃を構えていなかった。閃堂が立ち上がり銃に手をやる。

「余裕か?」

「2対1だな」

「違うぞ」

我牙丸の視線が閃堂を貫き。斜め後ろに銃弾を放つ。それは、人に当たったわけではないが、ガサガサと音がした。チームレッドの乙夜が常の無表情で出現する。

「忍者参上ってね」

愛空が咄嗟に閃堂を背中に庇い、3人が三つ巴になるように距離を取る。だが、愛空は自分達が不利であることは悟っていた。自然体の2人と比べて、自分達は体に余計な力が入っている。

『この2人が相手では退避も相当に難しいですね…』

「ん~。一か八か、どっちかでも道連れに出来たら御の字って所だな?」

「一方的にやられっかよ!」

二子から事実上の戦闘許可が下りたので、閃堂が身をかがめて愛空の体の陰から2人を射撃する。だが、2人とも特に互いの攻撃を気にすることなくさらっと避けた。

(協力しているのか?)

数的不利による一時の協力は十分に考えられる。閃堂とアイコンタクトを交わし愛空が我牙丸を閃堂が乙夜を相手にしようと動く。乙夜と閃堂の視線が交わる。愛空はぐっと我牙丸が踏み込むのを視界の端に捕らえた。

(あたる)

確信をもって放った愛空の銃弾が空を切る。我牙丸が愛空の方向ではなく、上に飛んだのだ。急に視界が開け、前のめりになった愛空にピンと軽い衝撃が走る。すぐに愛空のスーツが真っ赤に染まった。

このサバイバルゲームのスーツは特殊な電波によって衝撃と連動しており、ヒットされると赤く染まるのだ。赤く染まると脱落である。

「お~。避けられちゃったか~」

愛空のみならず、乙夜も赤く染まっていた。相変わらずの無表情だが、その手にいつの間にかあった拳銃が真正面の閃堂ではなく、愛空達の方向に向いている。

「忍者は正面戦闘には不利なんだよね~。意識の端を付け込めたと思ったのに、残念」

【チームホワイト:オリヴァ・愛空。チームレッド:乙夜影汰、脱落】

オペレーターの音声とは異なる、全体的なアナウンスが響く。チームブルーの我牙丸はいつの間にか消えていた。

脱落した選手は指定された場所にある檻の中に入ることになっている。愛空と乙夜は一緒に檻の方向へ向けて歩いて行った。

『閃堂君、一旦森を抜けましょう。森は相手のフィールドですし、1人だと不利です。周囲の音の収集量と範囲を上げてください』

「くそ、分かった」

マイクを使い、周囲の音を収集する。1人だけでは対応できないが、オペレーターと共に使うことで周囲の音源を探知できるのだ。それを使って、慎重に場を離れる閃堂を十分離れるまで静かな双眸が見つめていた。

 

 

「報告。愛空、乙夜を始末。閃堂は林床地帯を抜けるらしい」

『OK。ミッションクリアやな。特に忍者を始末できたのはでかいわ。森をフィールドにしつつ、必要になったら指示出すんで待機よろ』

「了解」

 

 

(チームレッド)

『おい、非凡どこ行くんや?』

「あ?決まってんだろ。俺はアイツを殺す。アイツは俺の得物だ」

「凛さん気合バッチリだべ!」

『それはええけど、他のチームも警戒しとれよ?その先はちょっとした丘になっとるで』

凛たちが進んでいくと、視界の先の少し開けたところに緩やかな丘があった。少し丘の上の部分にいた揺れる人影に凛が銃弾をぶち込むも、遠すぎたのか躱された。そのまま対象は逃げていく。

『非凡!!いきなり出んなや!!今の発砲で気付かれたわ!退避せえ!』

「んなぬりいことすっかよ。アイツは逃がさねえ!」

『あ~もう!!非凡も七星も他のチームに気い付けえや!サポートしたるわ!!』

「それがお前の仕事だろうが」

「お願いしますだ!」

2人で周囲を警戒しつつダッシュで潔世一を追う。開けた丘だが、凛たちがいるのは風下であり、距離があるので無暗に撃った銃弾は躱されるのは先ほどの一発で証明されている。だか、どんどん射程距離にまで近づく。後少しだと烏は認識し、周囲から意識が外れてしまった。

「危ない!!!」

ざっと七星が凛を庇う位置に走り込み、赤く染まる。凛はそちらの方向に目をやると、御曹司と白い天才が案外近くにいたことに気付いた。銃弾を打つも木陰に隠れられる。

『すまん、見落としは俺のミスや。やけど非凡、一旦引けや。無暗にやっても勝てん。凡を仕留める前にやられもうてまうで』

「っち!!」

舌打ちしつつ、潔世一に目と思考を取られ過ぎた自分の非も理解しているのだろう。凛は大人しく下がる。白宝コンビも凛まで深追いする気はないのか、一旦下がるようだ。

「凛さん、俺の銃を使ってください。まだ全弾残ってるんだべ」

「あ?」

七星が牢屋に行く前に、糸師凛に自分の銃を渡す。凛は片眉を上げたが、先ほどの戦闘で半分程銃弾を使用したのを思い出したのだろう。素直に受け取った。

「チームに生き残っている人数と銃数は一致しているのがルールだべ。交換は禁じられてないんだべ」

「…わかった。お前の敵は取る」

「はは、頼もしいけど、物騒だべ」

【チームレッド:七星虹郎、脱落】

 

 

「七星脱落か~」

『仕留めたんはイングランドのコンビやろうな。まあ、潔君は落ちんかったんやし上々や』

「これで、チームレッドは残り2人か~。凛怖え~」

『潔君は囮としてめっちゃ有効やわ~この後もよろしゅう』

「もう…」

 

 

(チームホワイト)

『これでチームレッドから2人脱落しましたね。現時点でチームブルーが全員残っているので、人数的にはチームブルーが有利です。次点で僕らですね』

「そうだな。そういや、チームブルーはペアで動いてないのか?」

『探知できませんでしたが、潔君は黒名君と組んでいる可能性はありますね。チームレッドは合流してなければ蜂楽君が遊軍だと思います』

開けたところを移動していると大岩がある近くに出た。そこで、閃堂は視界の先に特徴的なオレンジ色を見つけて身を潜める。

「いた」

『國神君ですね。あの先は袋小路になっています。他のチームを探しに来て、確認し終わったって所でしょうか』

「…今来た道だと遮蔽物がないから、背中を見せて追いつかれたら終わりだ。こちらに歩いてきているし、逃げ道はない。戦闘を開始する」

『わかりました。ご武運を』

閃堂は静かに銃を構える。索敵を成功させている以上、こちらの方が有利なのは間違いないが、先ほどの我牙丸に気付かれていた経験から、油断はしない。

石を投げて音を立てる。同時に、銃弾を放った。

「…正直に狙い過ぎたな」

「みたいだな」

体の四肢の先に行けば行くほど避けられやすく、狙うは胴体の、それも中心線がベストだ。向こうもそれが分かっていたのだろう、手にしていた大きめの石で銃弾から身を守った。國神もまた、閃堂に銃を構える。

國神が、後ろの方に石を投げる。それが、合図だった。

石が落ちる音とともに、2人とも銃を発射した。違うのは、閃堂がダッシュしたことだろう。

「…お前も結構邪道だな」

「一人でやられたら、先にいったアイツに顔向けできねえんだわ」

生身を捨てて國神の銃弾に身を晒した閃堂が、國神の服に付けていた手を放す。そこには、1粒の銃弾が転がっていた。閃堂が先に、ほんの少し遅れて國神のスーツが赤く染まった。一発目の銃弾を國上が避けたところで、もう一発を素手で直接押し当てに行った閃堂の捨て身の道連れが成功したというところだ。

【チームレッド:閃堂秋人、チームブルー:國神錬介、脱落】

 

 

『國神君、閃堂君と脱落や。これでホワイトは後2人やな』

「ヒーロー脱落しちゃったか~」

『閃堂君を脱落させとるし、フィールドの各々のミッションはこなしとるわ。十分やろ』

「まあね~。つーか、閃堂そっち行ったのか。俺もそろそろ動くね」

『了解や』

 

 

(チームレッド)

「烏~。三つ編見つけた~?」

『まだや。つーか、お前さん勝手に動くなや。うち、お前さんと非凡しか残っとらんのやで』

「にゃはは!だから俺が1人減らそうとしてんじゃん」

『何で三つ編やねん』

「森で我牙丸は無理だし、潔は早い者勝ちでしょ!」

蜂楽は気ままに思いのままに進んでいた。チームバトルというのは分かっているが、お遊びだし、サッカーみたいに協力しなくても敵を倒せればいいのだから。しばらくして、蜂楽の耳に水音が聞こえてきた。

「三つ編み、見っけ」

『ちゃんと構ええや。負けるんは許さんで』

「分かってるって!」

烏は心配になるが、蜂楽のやる気は十分だ。正々堂々、川の近くにいた黒名の前に現れる。黒名も戸惑うことなく、銃を構えた。

「互いに恨みっこなしってね」

「同意、同意」

銃弾が互いをかすめるも、当たりはしなかった。互いの位置を調節しつつ、動きながら銃撃戦が交わされる。黒名の先を読む一発を避けた蜂楽の体勢が傾くも、アクロバティックな体の使い方と時に牽制の銃弾で決定打を打たせない。一進一退の攻防が佳境に入る。その時、蜂楽の手から銃が滑り落ちた。

(ここだ)

蜂楽の体から銃が放れた瞬間、黒名は拳銃を構えた。だが、そこから弾は出なかった。

「ざーんねーん。俺の方が一枚上手ってね」

蜂楽が空中エラシコで手元に銃を落とし、弾切れした黒名を撃つ。黒名も弾切れを理解したのか、避けることはしなかった。

「避けないんだ?」

「足掻くべき時と潔く終わらせる時を見極めているだけだ。それに、役割は果たした。お前も弾切れ、弾切れ」

「あはは。確かにね!」

蜂楽の銃にはもう弾はなく、攻撃手段を持たない状態だ。事実上、無力化したと言っても良いだろう。健闘を称えあい、2人が握手する。

『弾切れかい!落としたことは褒めたるけど、これ以上は大人しゅうせえよ?』

「にゃはは!…あ、やっべ」

『なに水に落ちとんねん!!』

「救助、救助…あ」

【チームブルー:黒名蘭世、脱落】

 

 

『黒名君、蜂楽君にやられてもうたわ。でも、弾切れにはさせたんやて』

「すげえじゃん黒名!凛の事があるから我牙丸こっち連れてきてくれる?」

『勝負を掛ける潮時やな。了解や』

 

 

(???視点)

崖の下で、潔世一と我牙丸、糸師凛が対峙する。

「やっと手前をこの手で殺せる」

凛が潔世一に銃を構える。だが、それが発射される前にバチッと音がして凛が倒れた。急に地面と近くなった視界に、潔世一の手が頬に添えられる。

「凛…ごめんな。我牙丸、頼む」

「御意」

「蜂楽、行くぞ」

「リョーカイ!」

烏の混乱をスルーして蜂楽が進む。潔世一と共に、目指すは丘の上だ。そこで、全ての決着がつく。

丘の上では、同じく電撃にやられたのだろう、満足に動けない御影玲王と凪がいた。彼らは此処に追いやられたのだ、このサバイバルゲームの審判に。服の電気ショックの機能と実銃を突き付けられ、丘の上に進むしかなかった。凪は電気ショックの影響で、上手く動けない。

「お前が死ねば御影コーポレーションは大ダメージを受ける。恨むんなら、御影家を恨むんだな」

「は、両親を恨む分けねえだろ」

「生意気な奴だな…。自分の立場を分かっていないようだ。そうだな、そこの白いのを撃たれるか、自分から崖を飛び降りるかを選ばせてやろう」

「あ?」

「自分から崖を飛び降りれば、そこの白いのは見逃してやる」

「…」

玲王が逡巡するのが凪には伝わってきた。声すら出せない自分がもどかしくて、動けない体に絶望する。

(俺を見捨ててよ、玲王)

玲王が自分を見捨ててくれればと願わずにはいられない。普段は何も信じてはいないが、今この瞬間、玲王が生きる選択肢を選んでくれるならば神に魂を売っても良いとまでこいねがった。

(やめて)

「オレは---」

「玲王、凪、お待たせ」

空気を切り裂くように、場に似つかわしくない声が響く。男が弾かれたようにそちらに顔を向ける。凪もなんとか視線を上げると、今まで集中してて視界に入っていなかったのだろう、潔世一が蜂楽を従えてこちらに歩いて来ていた。

「お、お前ら、何故!?」

「森で我牙丸が愛空を倒して、閃堂が乙夜を倒した」

「おい!」

「丘で凪と玲王が七星を倒した」

「聞いているのか?!」

「大岩の所で國神と閃堂が相討ちして」

「ふざけているのか?!」

「川の側で黒名が蜂楽に倒された」

「無視するなガキが!!!!」

「崖の下に、凛と我牙丸がいる」

「撃つぞ!!!!」

言葉とともに凪と玲王の所に歩み寄って行った潔が、そこで初めて銃を構えた男を見遣る。あまりにも静かなその瞳に、男は背筋に怖気が走った。

「撃てよ」

淡々とした口調で、命令が下される。無謀だ、と玲王の思考がよぎる。防具も何もかもがサバイバルゲーム用で、実銃を想定した防御力を有していないからだ。

「バカにしやがって!!!!」

男は煽られたと思っているのだろう。自分が優位に立っていると思っているからこそ、この場にいる自分以外を見下しているからこそ、自分よりも下の存在が己の想像した通りの行動に出ないことが、その存在に恐れを抱いたことが、許せない。

男が引き金に、指を掛けた。玲王は咄嗟に、幻覚から眼を瞑る。

だが、死神の槌音は鳴らなかった。

 「何故?!何故撃てない!?」

パニックを起こす男が銃を捨ててナイフを取り出そうとするが、先に動き出していたのか焦りによる隙に蜂楽が頭部に蹴りを叩き込んだ。男が無様に吹っ飛ぶ。

「蜂楽、ありがとう」

「にゃはは!」

男の手から落ちた銃を潔世一が拾い上げる。そして、中から発射されなかった銃弾を落とした。

「いやー、サバイバルゲームに合わせたんでしょうけど、正直レーザー銃とかじゃなくて助かりました!まあ、火薬式の銃は王道ですしね」

「は」

「銃弾の中の火薬は全部水没させてもらいました!本当はキャンプの火種にしようかなと思ったんですが、爆発すると危ないんで。あ、フィールドにある檻の場所の他3か所に設置された爆弾は放置しました!危ないんで!」

ひゅっと倒れた男の呼吸が失敗し、息が詰まったような音が喉から洩れる。此の男、爆弾まで仕掛けていたのかよと玲王は半ば呆れる気分だ。

このサバイバルで潔世一が所属しているドイツBLメンバーが発見されたり脱落した所として説明された場所は凪と玲王も空間的に把握できている、。ほぼ全員、傾斜が急だったり、地層の境目に近いところで見つかっている。そして、潔のチームで脱落したメンバーは周囲を道連れまたは無力化しているので、発見された場所近くには今は誰もいない。さらに、崖以外でそれぞれが発見された場所からここは地理的に隔離されている。

「確認した時に時限式だったんで爆発するタイミングは分かってたんですけど、どういう爆弾かが分からないし俺らも素人なんで、触るのは危険ですから、皆を引き離したほうが良いかなって。貴方も仰ってましたけど、貴方が昼食の時に見回った時に、爆弾を設置する辺りだけは山の獣が全く見つけられなかったでしょう?他の所にはいたのに」

男は思い出しているのか、思い至ったのか、眼を見開いている。違和感を無視したことに今更ながらに気付いたのだろう。爆弾を設置しているときは集中していて気付かなかったのかもしれない。

「山が全壊したり、全方位に土砂崩れが起きたら危険なんで、我牙丸と山の動物たちに頼んで被害範囲が限定的になる場所に絞らせてもらったんです。一度説明の時にフィールドを案内してくれたのと、貴方が地学に関しては割りと素人よりで助かりました!」

大抵の人間は危険なことをしているときは、敏感になっている。他の爆弾の設置候補の所では動物の生活音や木々が揺れる音が聞こえたことで不安になり、設置場所の候補を変えることで誘導されていたのだろう。

潔世一の解説に、彼の手のひらで踊らされていた憐れな男の顔がどんどん青くなっていき、ガタガタと震え出した。

「此処に来た時点で外への連絡手段もありませんし、盗聴されていたのは分かってたんで、チームメンバーと筆談で情報を交換してたんです。まるで忍者の気分でした」

ひらっと潔世一と蜂楽が手元に小さな紙片を取り出す。そこには、細かな字で何かの情報が掛かれていた。

「ちーす!忍者参上!ご要望のもん持ってきたよ。御礼はちゅーな」

「ありがとう、乙夜。助かった」

ひょこっと潔世一の腹の横から顔を出した乙夜の頭を、まるで犬を褒めるように撫で、持ってこられたものを受け取る。乙夜の後ろには我牙丸も控えていた。

「それは、何だ。それに、お前、どうやってあの檻から出た」

「貴方の計画書です。爆弾は解除しなかったんで、殺意を証明できるものがあれば便利だなーって思って乙夜に取ってきてもらいました」

「國神から指示書貰って俺指名されたときはチョーテンション上がったんだけど」

「國神は谷の大岩が転げ落ちないように場所を移動させたら、何処かのタイミングで脱落してもらう予定だったんだ。檻をこじ開けるのは國神にしかできないからな」

「我牙丸から情報貰って檻に行く前に爆弾見てたとは言え、スーツ脱いだ國神が檻をめきょってしたのマジで驚いた」

乙夜の感情が読めない発言に、想像がついたのだろう潔世一が苦笑する。他の檻のメンバーである國神、黒名、閃堂、七星は烏や二子、氷織と共に既にそれぞれの荷物を持って危険な場を離れており、我牙丸から糸師凛を受け取った愛空が全員を監督している。

「…ぐ」

ガっと潔世一が男の口につま先を叩き込んだ。

「手前の身勝手で凪と玲王を傷つけ、皆を巻き込んだんだ。罪も償わせずに逃がす分けねえだろ?---正しい努力も出来ねえ他人を妬むだけのゴミが、一生ウジみたいに這いつくばってろ」

震えあがった男の体からへなへなと力が抜ける。潔世一が足をどけたところを乙夜が気絶させ、縛り上げた。

「潔~靴が汚れてるから履き替えてよ」

「今他の靴がないからダメ」

「歩かんかったらよくね?」

「どうやって帰ればいいんだよ…」

玲王を乙夜が背負い、凪を我牙丸が片手で俵担ぎにし。我牙丸のもう片手で犯人が運ばれている。他人の唾液がついている靴を潔世一が履いているのが気に入らないのか蜂楽が文句を垂れるが他に靴がない現状、どうにもならない。

「どないしたん?」

「ひおりん、潔の靴出して!そこのゴミの体液がついてる!!」

「蜂楽!!!言い方!!!」

「そりゃあかんわ。その靴燃やそか」

「氷織?!」

「脱ぐ、脱ぐ」

「黒名?!」

「…」

「國神は無言で俺の靴を持ってこないで?!」



愛空達と合流した辺りで、先に取り戻した携帯で通報を受けた大人達と御影コーポレーションが現場に到着し、ブルーロックのメンバーは保護された。検査もかねてホテルで一泊することとなり、玲王と凪は同室であった。

「玲王、凪。起きてるか?」

「潔?」

コンコンと扉が叩かれ、聞きなれた声が聞こえる。玲王が入室を許可すると、想像通りに潔世一が部屋の中に入ってきた。そういえば、まだお礼も言ってなかったなと思い、口を開こうとする。だが、その前に潔世一が口を開いた。

「ごめん」

「は?」

「お前らに、黙っててごめん」

「いや、潔のせいじゃないって。あの時点では情報共有も何も出来ねえし、俺らを十二分に守ってくれたじゃねえか」

これは事実だ。時系列を詳しく説明されれば、情報を共有するタイミングなんてなかったはずだ。

「むしろ、謝るならオレの方だ。今回のことは---」

「謝るな」

声の強さに、一瞬ひるむ。

「御影玲王として、俺らを巻き込んだことを、玲王が謝るな。玲王のせいにするな。玲王の心を、御影の名で覆い隠すな。取り繕うな。理不尽に怒っても泣いても喚いても恨んでも誰もお前を責める権利はない。皆の前では難しいとしても、俺の前でなくてもいい。凪の前だけでもいい、玲王の心に正直になれ」

「や、何言ってんだよ、俺は」

「俺は玲王が何をしようと、何を言おうと、絶対にお前に幻滅しない。凪もだ」

「うん」

凪が、のそりと起き上がる。

「玲王」

「あ…凪…その」

「俺は幻滅しない。でも、ちょっと怒ってる」

「え」

「玲王、あの時、崖から飛び降りようとしたでしょ」

「う…」

「あのね、玲王が俺の命を選んでくれても、玲王が傷ついたら俺も傷つくの。玲王が死んだら、俺も死んじゃうの。例え生きてても、きっと屍になる」

「んなこと」

「あるんだよ。俺は、玲王が見つけてくれたんだから」

玲王の動揺が露わになる。不安と困惑と微かな期待がその瞳に揺れる。玲王の中で計算式が崩れていくのが、漏れ出る思考の断片から伝わってきた。ゆっくりと、固く閉ざした真珠貝の口がほんの少し開くように、花唇が震えた。


こぼれる朝の光の中で、凪は目覚めた。潔はもうすでに起きているが、珍しく玲王はまだ起きていなかった。ぼんやりと、朝霧に浮かぶ輪郭に声を掛ける。

「潔、ありがとね」

「ん?凪?起きたのか。というか、俺は何もやってないぞ?」

「んー。なんとなく。俺、悪魔に魂を売ったから」

「はあ?!おい、凪?どういうことだよ?」

凪―と声をかけてくる潔をスルーして、布団に潜り込む。

(あの時、玲王が俺じゃなくて玲王を選んでくれるのなら、俺は神に魂を売っても良いと思った。でも、それは多分、玲王も俺も傷つける)

潔をベッドに引っ張り込んで二度寝する姿勢に入る。潔も諦めたのか、凪を抱きしめる体勢になって目を瞑った。

(神ですら玲王も俺もどちらも傷つかない選択肢を出さなかった。でも、潔は自分が傷を負っても両方の手を放さなかった)

どちらかが肉体的または心理的に無傷の選択視じゃなくて、100:0と0:100じゃなくて、死体と生きた屍じゃなくて。潔は100を3等分してくれたと凪は思う。潔は一方だけが100%満足する選択視なんてくそくらえとぶち壊した。

(悪魔に---潔に魂を売った)

今後、玲王とも潔とも、どんな困難があっても、どれだけ喧嘩をしてもきっと仲直りができると、何故かそう確信できたから。だから。

(最期まで、3人で一緒にいよう)

灰と成る、その時まで。泉下の先でも、諸共に。



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