友人
スヨーダナ時空
カリ化ヴィカルナとサーヴァントのアルジュナ
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矢がヴィカルナの身体を貫く。
ヴィカルナは倒れるように崩れ落ちた。
「ああ、負けましたねえ……。スヨーダナとドゥフシャーサナ兄さんに申し訳が立たない。慣れない卑怯な手まで使ったのに」
「……貴方は卑怯な手を使わない方が強いと思いますよ。いろいろと稚拙でした」
「酷くないですかアルジュナ。これでも頑張ったんですよ?」
「方向性の間違った頑張りですね」
「辛辣だなあ。……私が卑怯な事に向いてないことなんか分かってましたよ。でもこういう手段を使った方が人を沢山殺せるんです」
「……はい」
「ねえ少し愚痴を聞いてくれませんか?嘗て、俺の友人だった人」
「……少しだけなら」
「卑怯な事なんてしたくなかった」
「はい」
「虐殺なんてしたくなかった」
「……ええ」
「ドゥフシャーサナ兄さんにも弟たちにも……スヨーダナにも虐殺なんてしてほしくなかった」
「……そうでしょうね」
「アナタたちとの記憶を記録にしたくなかった」
「……はい」
「記憶を記録にしたのに、俺らの価値観とか全然変わってくれないんですよ?酷くないですか?」
「……」
「でも仮に俺が怪物になった日に戻っても、俺は怪物になるんだと思うんです。後悔しているのに……それでも世界が滅ぶよりはずっと良い」
「……私は嫌ですよ。その姿の貴方を殺すのは二度とごめんです。中身は人間のまま変わっていないから余計に」
「えー、何でアナタが勝つつもりでいるんですか。次は俺が勝ちますよ?」
「いいえ、私は負けませんよ。私はマスターのサーヴァントなので。誰にも負けません」
「ははっ。アナタがそんな事言うなんて。……良いマスターと巡り会えたんですね」
「はい」
「……楽しい仕事がやれてるみたいで、いいなあ」
「貴方も来たらどうです?カルデアは良い所ですよ」
「うーん……考えておきますね」
ヴィカルナの足先が透けるように消えていく。
「さよならアルジュナ。嘗ての友人」
「さよならヴィカルナ。私は貴方を今でも友人だと思っていますよ」
ヴィカルナはその言葉を聞いて、
困ったような、嬉しいような、そんな笑みを浮かべて消えた。