原作世界線に長男が飛ばされたってだけの話
ドゥツラは根本にいるから…この作品じゃ薄くてもドゥツラは存在してるから…(言い訳)あらすじ
人の固有魔法をコピーできるイノゼロの残党がウォールバーグさんの空間魔法をコピーしたけど扱いがむずすぎて暴発、バーンデッドさんちのドゥウムくんを原作世界に飛ばしちゃった!しかも転移先がよりにもよって原作オーターさんの真ん前!?忌々しい最古の杖は肝心な時にいないし、ドゥウムくんは犯罪者どころか世界を救った英雄の一人なのにオーターさんは聞く耳を持ってくれない…ウォールバーグさんが迎えにくる気配もないし、一体これからどうなっちゃうの〜!!?
ドゥウムは焦っていた。
というのも、あらすじの感じでオーターからの攻撃を受けているからだ。
ドゥウムの方が強いとは言っても相手は神覚者有数の実力者、加えてあちらは殺意全開殺す気マシマシ、こちらは反撃不可(しかも杖無し)である。
はっきり言って無理ゲー。
「だから、私には敵対の意志はないと先程から言っているだろういい加減止まってくれ」
「先程も言ったが刑務所にいるはずの貴様が魔法局にいるという異質な事態を見逃すわけにはいかない。神妙にお縄につけ」
「だから収監されなければいけない理由が分からない」
「今まで散々人の命を奪ってきておいてよく言う」
「魔獣ならともかく人の命を奪ったことはないが」
「今更白を切るのか?呆れたものだな」
「いやだから違うって。とりあえず話を。話を聞いてください。今杖持ってないんだ私。ちょっ、死ぬ」
ドゥウムが説得を試みるも、オーターは聞く耳を持たずに的確に急所を狙ってきている。
お縄につけとか言ってるが、殺しに来ているとしか思えない容赦のない猛攻にドゥウムは冷や汗をかきながら必死に回避するしかない。
何せ反撃したら説得の信憑性がなくなってしまう。
「安心しろ、殺しはしない」
「絶対嘘だろう。それにしては殺意が、ま、一旦止まってくれ」
ぶっちゃけオーターの言葉の方が信憑性がない。
だって今もオーターの操る砂はドゥウムの首やら心臓やらを狙ってきているもの。
「それは無理な相談だな。というか魔法無しにしてはすごい避けるな」
「鍛えて、るんでっ」
「意外だな、最古の杖の祝福にかまけてトレーニングなどしていないものかと」
「あんなストーカーの力に頼るのは釈なんでね」
杖の話題が出てきてドゥウムはちょっとイラついた。
いつも付き纏ってるくせになんで肝心な時にいないんだあのストーカーは。
「…ストーカー?」
「あっ止まった」
前言撤回。少しは役に立つようだ。別にいらないが。
「杖がストーカーというのは、どういう」
「いらないのに文字通り付き纏われた。捨てても折っても粉々にしても必ず戻ってくる。そのまま使ってやるのは釈だったので剣に仕込んだ。投擲してブーメランみたいにすることもある。毎回このまま捨てられてくれねえかなという期待をこめて」
「…なんだそれは」
オーターは困惑しているようだが事実である。若干の悪意は混ざっているが所業は一切盛っていない。なんだこの杖。もはや杖なのかこいつ。
「ストーカーだ。というかやっぱり貴方私の知ってるオーターさんじゃないな、この話前もしたし」
「…つまり、貴様も私の知るドゥウムではないと」
「そうなるだろうな、そもそも私魔法局に就職してるし」
「は?」
「警備隊の副隊長だ」
「…なるほど?」
オーターが宇宙を背負い始めた時、部屋の扉が勢いよく開いた。
「何の騒ぎだ!?」
「あっライオさん」
入ってきたのは人類最高傑作ライオ・グランツ。
どうやら派手なドンパチ(主にオーターの攻撃)の音を聞きつけてやってきたらしい。
「ドゥウム!?」
「別世界線から来た別人だ。敵対の意志はない」
一応明言はしておく。
別世界線とはいえ上司である、話くらいは聞いてくれるだろうという期待を込めて。
「そ、そうなのか?」
「信憑性はありませんが…実際今まで一切反撃はしてきませんでした」
「なるほど…一旦話を聞いておくか。しかし如何せんこちらの立場というものがあるのでな、他の神覚者たちと、あと一応キノコ頭くんを呼んでおこう。悔しいが長男に勝てるのは彼だけだ…すまないな、少し待っていてくれるか?」
「ああ。どうせ私だけでは帰れそうにないしな」
ドゥウムは頭を下げて大人しく待つことにした。
キノコ頭くんってこっちのマッシュか、どんな子なんだろうな、やっぱりシュークリームは好きなのかなぁとかぼんやりと考えながら。
まさにマイペース、血は抗えない。
「というわけで神覚者たちとキノコ頭くんを連れてきたよ」
「三銃士と言うには多いですね」
「何の話だ?」
「お気になさらず」
「で、君はオレ様達の知るドゥウムではないらしいが…」
「ああ。私はドゥウム・バーンデッド、20歳で魔法警備隊副隊長を務めている。家族は類稀なる人格者な父と弟が五人」
「ばーんでっど」
ライオの呟きで一斉にその場の全員がマッシュを見る。
「えっあっ」
その視線を受けて、マッシュは
『起きろ』
「はっ、夢じゃなかった…」
とりあえず寝た。
「都合の悪いことがあったらとりあえず寝るよな、分かる」
「いや頷くなそこ」
「ぼくの家族はじいちゃんだけなんですが…」
「とりあえずこっちの私がどんな感じかきいてもいいか?」
「あー…かくかくしかじか」
「は???」
「うわブチギレ」
「まあ、分かる、確かに分かる。じいさんに拾われずあの男に育てられていたらそうなっていただろうな、というのは分かる。だが解せんな…私より10歳も歳上だというのなら弟たちを連れて逃げ出せなかったものか…無理だな、逃げられたのはほぼ事故みたいなものだったし」
「すごい速度で自己完結した」
「こちらの自分を殴りに行きたいところだが自由に動ける身でもない。とりあえず向こうのウォールバーグさんが迎えに来てくれることを待つしかないな…どうせあの忌々しい杖があればどうにかなるだろう。監視付きで構わないから、こちらで待つことは可能だろうか?なんなら雑用くらいするぞ」
すごい速度の自己完結の後にそう述べたドゥウムに、未だ困惑から抜けきれない神覚者たちはおずおずと頷く。
「とは言ってもすることがないな…」
「あ、じゃあ手合わせでもしますか?」
「それは魅力的な提案だが、さすがに駄目だろう。周りへの被害がデカすぎる」
「いやさらっとなんてこと言ってるんだ」
「いやでも、マッシュと手合わせとか…最低でも地面は抉れるだろう」
「たしかに」
「ひえ…」
「なんだろうこの、絶対誇張とかないんだろうなって恐ろしさ」
「絶対やめろよ」
脳筋共の会話に戦々恐々としていると、カルドが首を傾げた。
「しかし…どのくらいで向こうに帰れるんでしょうね?」
「それは私にも分からないな」
「こちらのウォールバーグさんが向こうに干渉することは不可能なのでしょうか」
「それは難しいと思う。私は向こうの座標や目印など分からないし…先程言ったように私のストーカー…杖に辿らせて向こうから迎えに来てもらうのが確実だろうな。向こうと流れる時間が同じなのならもう一時間ほど経っているし、ウォールバーグさんならそろそろ特定してくれるだろう」
「そうなのか」
「待ってストーカー杖って何」
そんなことを話していると、部屋の扉が開いた。
「あ、いた」
「!!?」
「え、ボク…?」
そこにいたのは氷の神覚者、ツララ。
部屋にいるツララと全く同じ見た目をした人物だった。
ツララは伝言ウサギを耳に当て何やら会話を始める。
「あー、もしもし、こちらツララ。ドゥウム発見しました、談話室です」
それだけ言うと通話を切ってドゥウムにとことこと近付いてきた。
「ドゥウム、迎え来たよ」
「ツララ」
ひょい、とドゥウムが自然にツララを抱き上げる。
「迷惑かけてすまないな」
「いや別に。ちょうどボク暇だったしね」
「誰が来てるんだ?」
「ボクとウォールバーグさんとライオさんとレイン。あとは下手人の確保」
「なるほど」
「もう大騒ぎだったよ。すぐに使いこなせるわけじゃないとはいえ固有魔法コピーとかいうチート極まりないやつが出てきたかと思えばドゥウムが消えるし…」
「…すまん」
「消えたのはドゥウムのせいじゃないでしょ」
「いや待て待て待て待て」
そのままで会話する二人にとりあえず抱えられてない方のツララが突っ込んだ。
「「ん?」」
「いやん?じゃなくて」
「え…そっちだとツララとドゥウムは『そういう仲』なのか?」
「そういう仲とは?」
「恋人なのかということでは」
「「いや違いますけど…」」
「いやなんでだよ」
「下ろしてから言え」
「これ二人とも、そのクソボk…距離感は慣れてない者だと困惑してしまうじゃろう」
「だからオレはいつも男女の距離感じゃないと言ってるでしょう…」
「うーん、なんでこれで付き合ってないんだろうな!」
『うわっ』
「あ、ライオさんにウォールバーグさんにレイン」
「ご無事で何よりです」
「おお、こちらのオレ様も最高に男前だな!」
「ふむ…鏡以外で眺めるオレ様というのは不思議な感覚だが、やはり男前だな」
「はいはい通常運転」
「普通に異常事態なんだけどなあ…」
「これ以上ここにいてどんな影響があるか分からぬ。名残惜しいが早めに帰るとしよう」
「そうですね。お世話になりました」
「い、いえ…?」
それだけ言い残して五人はウォールバーグの魔法で去っていく。
「…結局、あの距離感なんだったの?」
後には、宇宙を背負わされたままの原作神覚者のみが残されたという。
あらすじと最後のがやりたかっただけです、悔いはありません