卯ノ花による修練

卯ノ花による修練


「これはまたえらい酷い光景や」

そう口から零すギンの視線の先にいるのは計三人

謎の男(村正)により実体化した汞一文字そしてその持ち主である虎屋翼

木刀を持ち真剣を持った2人相手を片手で済ませる卯ノ花隊長

「その程度ですか?」

「"人間"...私の動きの要素を真似ろ 現状の動きは私より酷いぞ」

「あのですねぇ!この刀はドスで鍔が無いからその動きしたら指がすっ飛ぶんですのよ!!」

汞一文字は既に始解をしているが翼は出来ていない 獲物の形が変われば動きも違う

千年前に刀として振るわれた頃は鍔があったが鍔が無くなってからは矢として生きた汞一文字の戦い方はドスに即したものではない

刀一本で戦うことなどなかった翼からしてみれば今までの経験は役に立たず何度も地面を舐める羽目になった


「倒れている場合ではありませんよ」

また力尽き地面に倒れた後に回道により治される

寝ていては木刀にタコ殴りにされかねないので跳ね起きざるを得ない翼

だがそこに痛みに対しての不満はあれど卯ノ花隊長への不信は無い こうも傷つき倒れるのは己の未熟さ故であり まして死ぬわけでもないのだから

「ええい...もう一本ですわ!」

「いいでしょう」

はっきり言って脳筋な二人が良い感じにかみ合って度を越してしまっているが止められる者などそういない ギンは止めるのが面倒なので止める気はさらさら無い

幾度となく倒れ直されまた倒れる翼を茶でもしばきながら見ていた


幾度目かの斬り合い いくら傷が治っていてももう限界のその寸前にあった

切り込みそれを払われこちらの刀は地へと向かされる 大体次は頭でも殴られるだろう

「ああもう!!長くて邪魔ですわよこの『刀』!」

半端に長いドスでは間に合わない もういっそ...へし折ってやりましょう

地に突き立てられた刀を足でへし折り頭を守り切る 流石の蛮行に卯の花隊長も呆気にとられた

「そうだ"人間" それでいい...折れた『矢』は飛ばないが折れた『刀』ならまだ使える それは『刀』だ」

自身をへし折られたのに汞一文字は笑っていた ようやく斬り合いの道具として見てくれた事に感動すら覚えていた

どろり 刀身は流れる水のように動き鋭い角を作る いかな形であれ刀は斬って殺す

それだけ それだけあれば良い

刃は防御に用いた木刀をいともたやすく斬り進み いつの間にやら抜刀されていた斬魄刀に打ち払われた

「...よくやりましたね さてそのまま始解の修練を」

「あえ...」

「あらら これ以上したら廃人にでもなるんちゃいますの 卯の花隊長?」

卯ノ花はぐんぐん成長する翼を見ていたかったが流石に翼の限界が来た ふにゃりとへたり込み動けない翼を見て冷静さを取り戻し治療を始めた





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