(単発SS)(この後スマホの映像が証拠となり無事に変態は捕まった)

(単発SS)(この後スマホの映像が証拠となり無事に変態は捕まった)




 道を歩いているだけで男のマゾヒズムを刺激して惹き付けるような少年が後ろ盾も無く1人で渡西したら、大変なことになるのではないか。

 冴の体質を知れば人々は当然そんな疑問を抱くだろう。その答えがこの惨状である。


「ああ、なんて艶かしい脚なんだ……。白くて、細くて、でも鍛えられていて。まるで冬のカモシカのようだよ……」


 ──生臭い舌が皮膚を擽る。

 布団にくるまって眠ったフリをしながら、冴は己の寝室に潜り込んで勝手に足を舐めてくる恐るべき変態野郎の存在を感知していた。

 今宵が初めてではない。このファッキン不審者もとい宿舎の管理人は、冴がすっかり夢の世界に旅立った深夜3時くらいになるとこうして合鍵で不法侵入を果たし、ベロベロピチャピチャジュポジュポと気色の悪い水音を立てて人の足の指まで丹念にしゃぶり尽くしやがるのだ。

 出される食事に睡眠薬でも盛られていたのか、たまたま食欲不振であまり晩御飯を食べられなかった日に目を覚ますまではこの行為に気付けなかった。

 ゆえに実際のところ今まで何回この男に足をヨダレで陵辱されたのかは不明だ。でも10回だろうが100回だろうが気付いた以上は対処する。そのために冴はスマートフォンのカメラアプリで密かにこの光景を録画している。棚と壁の間に上手いこと隠したからバレてはいない筈だ。


「君がいけないんだよ。俺は、俺は犯罪なんてしたこと無いのに。君がこんなに舐めたい脚をしているから、俺に魔が差してしまったんだ」


 男が独り言を繰り返す。

 自分で言っていて頭がおかしいと思わないのか。思わないのだ。

 倫理も道徳も良識も、全てを性欲で焼き焦がし、ただ下心のみによって突き動かされる。躾を受けていないなりたてのマゾ犬とはそういう生き物だ。


「それに踏まれたい脚でもある。顔も、腹も、背中も、ココも……俺の体の全てを君に踏まれたいよ……」


 唾液でリンゴ飴みたいにコーティングされた冴の脚が、男の手に導かれるがままどこかに持って行かれる。

 冴は意識があることの露見せぬよう薄目を開けて行き先を確認した。……最悪。股間だ。あろうことか屹立したイチモツをズボン越しに冴の足の裏が踏み付けている。否、踏み付けさせられている。

 生暖かい感触に鳥肌が立つ。飛び起きてトイレで吐きたい。


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