千代の都に黄金の落葉・魔剣風雷 結

千代の都に黄金の落葉・魔剣風雷 結


ライダーは確信している。セイバー、あの剣士を討つ為には恐らく自身の宝具を使わなければ決してその首に届く事はない

否、宝具だけで届かせられるとは限らない。それこそ、1対1での勝ち目はほぼ無いに等しいと

あのセイバーは明らかに片手落ちの状態で此方側の2騎と相対している。手にした魔剣の力も、途轍もない輻射熱を発して掠めた壁や道をまるで豆腐でも斬るかのようにあっさりと焼き溶かして切り裂いているが、魔剣本体から感じられる魔力量からしてもあの程度は本来の力の半分も引き出してはいまい。比較的閉所での戦闘故に此方に地の利があるにはあるが、それを踏まえて己とバーサーカー、かの武者をして押さえ込むのがやっとの始末

しかも、いつの間にか主が切り替わっている。嘗ての聖杯戦争、その最後の戦いの中で一度だけ会話した主の中に宿るもう1人の人格

主本人に余程の危機が迫らなければ出てこないと伺っていたものの、こうして出てきたと言う事はバーサーカーのマスター共々窮地に陥っていると言う事

(ならばーーー)

ライダーは決断する。己が宝具、その秘奥を晒すことを

ライダーの宝具は数多あるサーヴァントの宝具の中でも一際特殊な部類に入る。しかし、宝具を此処で使うと言う事はあのセイバー。そしてそのマスターに此方の真名が割れてしまうだろうと言う事だ。こうして再開した聖杯戦争。何一つ判然としない戦いの中で情報戦での不利を背負うことになる

しかし、マスターの生命には代えられない。そしてーーー


「セイバーを斃せば、問題ナシ!」

ライダーを中心に魔力が高まる。宝具発動を意識し、刀を構える。魔力の変異を目敏くセイバーが斬り込んでくる。だが、それをバーサーカーが押さえ込んだ

「バーサーカー!」

「おっと、させねえぜセイバー!」

バーサーカーがその手の鉞でセアバーの魔剣を受け止める。セイバーとバーサーカーの筋力ステータスは共にA+。更にバーサーカーは己のスキルで更に筋力が上昇し、セイバーと鍔迫り合いになっている。純粋なパワーならばスキルの恩恵でバーサーカーに分があるが、ゼロ距離で魔剣と相対するバーサーカーはその熱で文字通り焼けるような激痛を味わうことになる

「いつまで保つかな?」

「ハッ!しゃらくせえッ!」

バーサーカーと言えどアレだけの魔剣を前にセイバーを押さえ込てるのはごく僅かな間だろう

しかし、その時間があれば十分。この戦況をーーー

「『沙那王流離譚』が一景ーーー」

文字通り、ひっくり返す


「クゥッーーー」

美作と隼人ーーー否、ジュンの2人は水の破戒僧の攻撃を躱すことに集中していた。魔弾をいくら撃っても効果は無く、かと言ってこれ以上の宝石の消費は今後に響く。ジュンもまた、魔術師としての才能は主人格の隼人より一枚も二枚も上手ではあるが、扱う魔術系統が変わるわけでなし。使える式神や呪符が尽きれば終わり。大掛かりな魔術を扱う余裕は無い

「ォォォォオォォォオオオーーー」

水の中から響くような唸り声を上げながら薙刀を振り回す破戒僧。美作は礼装を駆使して水の斬撃や槍を叩き込むものの、てんで効果は認められない。何せ同じ水の属性に類するもので、特にこの破戒僧はただ斬られたら貫かれただけで駆動が停止するような魔術式では無いのだ

更にーーー

「俺を忘れるな!」

「ーーーッ」

破戒僧の頭上から飛び込んで捻り込むように蹴りを打ち込むセイバーのマスター。ジュンが咄嗟に魔力障壁を展開して受け止める。魔力を感じさせないただの蹴りの筈だが障壁を揺るがせる程の威力で叩き込まれている生身で喰らえばそのまま骨折では済まないだろう

魔術回路を封じてコレとは、セイバーのマスターは年代こそそう変わらない筈なのにとことん実戦慣れしている様だ

「今時の魔術師は護身術も必須科目ってな!」

「このっーーー」

と意識をあの男に向けようにも、そうすればその瞬間あの破戒僧があの男を守護するように立ちはだかり、あの男へ攻撃が届かない

このままでは埒が開かない。やはりーーー

「美作さん!」

「バーサーカーの準備は出来てるっての!」

「ならーーー」

ならばあとやるべき事は一つのみ


意識が、反転する

「ーーーライダー!!」

神永隼人が腕を掲げ、その手に宿った刻印が真紅に煌めくーーー



「ーーーええ、これで決めます」

太刀を納め、意識を一瞬集中させる。莫大な魔力が解き放たれた令呪と共に魔術回路を通してマスターから供給される

発動せし宝具は沙那王流離譚。我が真名、牛若丸が誇る逸話が昇華した力の一つを、此処に開放する

「『自在天眼・六韜看破』!!」


ーーー世界が、入れ替わる


「ーーーは?」

何が起きたのか、凌我には理解が追いつかなかった

刹那のうちに見える景色が入れ替わる。転移魔術に似て非なる力。魔力が弾けたかと思えば目の前に居たはずのライダーとバーサーカーのマスターがいなくなるどころか、自分のいた場所まで変わっている

そして、傍にいた破戒僧も既におらず、その位置は己の場所と正反対のーーー

「その首、獲ったーーー!」


「!これはーーー」

セイバーは、自身の身に起きた事態を理解した。その眼に宿るは叡智の結晶。この力は視界を通して得られる情報を精査、解析しあらゆる現象を理解、予測させる。その情報処理能力とシグルドの頭脳を以ってすれば自身と周囲に起きた事象を解析して理解するには充分であった

「この場にいる全員を転移させたかーーー」

転移魔術そのものは一流の魔術師でも難しいが魔術式として行使は可能。だが、それは術者個人のみを転移させるもの。しかし、コレは明らかに不特定多数の存在を強制的に転移させるもの。その証拠に、マスターが使役していた使い魔の水人形が己のそばへ、そしてマスターは此処と離れた場所に孤立。ライダーとバーサーカーのマスターも此方の攻撃が届かない安全圏へ避難させている

そして、ライダーとバーサーカーはーーー

「必殺ーーー!」

「ーーー上か!」

鉞を振り上げて頭上から凄まじい魔力を放つ。バーサーカーは鉞のトリガーを引き絞り、その機能を開放する。使用するカートリッジは残りの3つ全て

それは即ち、宝具の真名解放に他ならずーーー

セイバーの選択は、手札の一つ

魔剣の刀身をなぞる様に指で何かが描かれる。それは何かを意味する文字。それは嘗て神話、その頂点に立つ神がその手ずから刻んだ神なる力

「『勝利(シゲル)、力(ウルズ)、戦士(テイワズ)ーーー』

刻まれた文字が輝く。見るが良い。コレこそは智慧の大神が生み出した神なる原初のルーン。神代の魔術が此処に顕現する

煌めく文字が意味するものは、シンプルな破壊力増強。その力は魔剣の魔力を引き出し、内に秘める厄災を呼び起こす。灼熱は刹那、太陽が如く赫耀と大地を照らすだろう

「『黄金衝撃(ゴールデン・スパーク)!!』」

「爆ぜろ!!」

金色の雷光と紅蓮の太陽が激突する


「ーーーその首、獲った!」

神永隼人が契約したサーヴァント、ライダーの切り札である宝具『沙那王流離譚』沙那王とはある人物の幼名である

その人物は、天狗に育てられたとも伝えられ戦の天才として名を馳せた

源平合戦において平家を滅ぼした立役者。英雄に相応しい栄光と凋落をその生に体現した者ーーー

背後からセイバーのマスターの首を獲りに行く。先程はすんでの所で躱されたが、此度はそうはいかない。サーヴァントとして持てる力な限りで大地を蹴る。正にその疾さは颶風の如く

太刀に籠める力もまた先程迄とはまるで違う。セイバーのマスターは手強い。ライダーはサーヴァントを仕留める時と全く同じ心積りで確実に殺しに掛かる。セイバーのマスターは何が起きたのか、理解するまでも無く終わるだろう

振り返る隙さえ与えない

振り抜かれた太刀が、彼奴の首を刎ねるーーー


そう、これで詰み、王手。ライダーの宝具は乱戦や複数戦に於いて絶大な力を発揮する。何せ、自身を含むその場にいる誰も彼をも、己の望む場所に再配置するのだ。奇襲も分断も、合流だって文字通りやりたい放題。例え万軍を相手にしても、敵将を孤立させ自分はそのすぐ後ろに回り込んで仕留める事さえ可能なのだから

物理的な破壊力は皆無だが、戦術的な面において、これ程理不尽極まる力もそうは無いだろう

宝具とはサーヴァントの象徴であり、必殺の武器。セイバーのマスターは情報戦で此方の優位に立つべく宝具を温存した。確かに、己とバーサーカーを相手にして余裕を残す途轍もない力を持ったサーヴァントであった。宝具を温存すると言う判断はある意味正しい

しかし、例え此方の真名が割れたとしても、この場で仕留めて仕舞えば何も問題はない

戦いの場において先手必勝は当然の摂理。先に抜いて確実に斃せば、そんな小細工など弄せずに済む


だからこそ、この結末は必然だと言えた

「ーーーとんでもねえ真似しやがる……!」

「ーーー馬鹿な」

ライダーの太刀は、セイバーのマスターへ届く寸前、光り輝く盾に阻まれた。セイバーのマスターが展開した物ではない。たかが一魔術師が緊急で展開した壁など、サーヴァントにとってはものの数ではない。文字通り人達で粉砕してしまえる

そもそも、セイバーのマスターが此方に気がつく前にこの防壁は現れた。あの男に魔術を使わせる隙間など与えていないのだから、コレは目の前の人間の仕業ではない

セイバーのマスターは、微かに震えた声でニヤリと笑う

「まさか、こんな所で保険を使わされるとはな」

「なに?」

どう意味かと問おうとした刹那、爆発的な魔力の余波が2人を飲み込んだ


バーサーカーの宝具『黄金衝撃』は『黄金喰い』にセットされているカートリッジを3つ使用して発動する。宝具本体に装填されているカートリッジは計15発。セイバーとの戦いの中でどんどん使わされてしまい、この一撃でカートリッジは全て消費させられてしまった

しかし、その破壊力の程は周囲の建物の塀が根こそぎ吹き飛び、あの巨体を誇った水の破戒僧も完全に蒸発、消滅したことからも察せられるだろう。だが、鉞を振り下ろした姿勢のまま、バーサーカーは動かない

いや、動けずにいたのだ

「ーーーまさか、オレッちの宝具を受けてもピンピンしてるとはなあ」

「否定。その様な事はない。佳い一撃だった」

鉞と巻き上がる砂煙の間から差し込まれる真紅の魔剣。セイバーは此処に健在であった

しかし、さしものセイバーも無傷とはいかず、両腕のバトルスーツが裂け、生々しい傷を晒している。全身も所々雷鳴に打たれ焼けこげたと思しき箇所も複数に渡りあった

「ヘッ、だとしても宝具を使わずにオレッちの宝具を凌ぐとはねぇ」

バーサーカーはサングラスの奥に秘めた眼を鋭く尖らせる。口調と表情は依然笑っているものの、対峙するセイバーの底の知れなさに戦慄を覚えた

そして、それは彼女達も同じである

「バーサーカーの宝具を、あんな風に凌ぐなんてーーー」

「ライダー……」

美作は唖然とする他はない。彼女は当然バーサーカーの真名を把握しており、彼がどの様な英雄でどの様な力を有しているのかも知っている

だからこそ、あのセイバーが見せた力に恐怖すら覚えていた

あのセイバーが、嘗て戦った大英雄、ジークフリートならば納得しよう。あの英雄はあらゆる攻撃が無力となる無敵の肉体を誇る不死の英雄だったのだから

しかし、あのセイバーは違う。少なくとも不死の力を持っていない事はこれ迄の戦いとバーサーカーの宝具で傷ついた事実からも察せられる

ただ単純に、強すぎるーーー

隼人もまた、ライダーの戦いを見てその結果に驚愕していた。コレまでの戦いでライダーが宝具を発動させた時、特に令呪を切って発動させたこの力は必殺其の物。サーヴァントですらこの力の前にはなす術なく斃れ、マスターもまた同じく抵抗すらさせずに仕留めてきたのだから

それがまさか、倒し切れないどころか、完全に躱されるなんてーーー

「……強い」

あのセイバーとそのマスターはこれまで戦ってきたどのマスターとも異なる、異質な強さを持っていた

「ーーーセイバー!」

ライダーの宝具による必殺の剣閃を凌いだセイバーのマスターが声をあげると、セイバーはバーサーカーを蹴り飛ばす。バーサーカーは咄嗟に腕でガードして蹴りを防ぐが、それでもその反動で互いの距離が開き、その隙をつく様にセイバーは短剣をライダーへと投げつける

ライダーはそれを躱し、トンボを切る様に己のマスターの側へと戻り、そしてそれと同時にセイバーもまた、己のマスターの元へ馳せ参じる

「収穫は十分だ。撤収するぞ」

「ーーー承知した」

「な!?逃げる気!?神水流ーーー」

撤退の意思を示すセイバーのマスターに同意する様に構えた剣を下ろすセイバー。それを非難するように声を上げた美作だったが、その声を制するように彼はバーサーカーを指差した

「ーーー坂田金時」

「なーーー」

次いでその指をライダーへと向けて

「源義経ーーーいや、牛若丸か?」

「ーーー貴様」

セイバーのマスターは正にドンピシャで2騎のサーヴァントの真名を言い当てた。バーサーカー、金時は「へぇ……」と面白そうに笑い、ライダー……牛若丸は太刀を構える

「2騎の真名は既に判った。此処でこれ以上小競り合いに興じる気は無い」

「言ってくれるじゃ無い。この状況で逃すと思う?」

「美作の娘。追ってくるなら構わないが……」

くるりと背を向けて指を鳴らす。するとたちまちセイバーとそのマスターの姿を覆い隠すように霧が立ち込める

「上等よ!此処まで神水流に舐めた真似されて黙ってる訳にーーー」

「ーーー凌我」

その名前を聞いた瞬間、今にも爆発しそうだった美作はその声を止めた。凌我ーーー彼はそう名乗ったのか?事情や魔術師の家系について知識の乏しい隼人はよく分からないが、美作の反応を見るにその名前が重要な意味を持つ事は流石に理解できた

「俺は神水流凌我ーーー追って来るのなら、相応の覚悟を持って挑んでこい」

そう言い残すと、今度こそ彼らの姿は霧と共に消えていった

同時に、仕掛けられていた結界が砕け散る。硝子の様に破片となって崩れていきながら地面に落ちると同時に魔力の残滓となって消えていく

「凌我ーーーまさか、そんな……」

「美作?」

「美作殿?」

あの男、凌我の名前を聞いてから、途端に黙り込んだ美作の様子がいつもと違うのを感じた隼人が声をかける。美作は途端に踵を返してツカツカと歩き出した

「作戦会議よ!」

「っておい美作!」

急な事に焦りながら追い掛ける隼人。美作はこれまで見たことのない様な眼と表情を浮かべていた

「まさか、神水流宗家の当主が出張って来るとはね……」

「それって、やばいのか?」

追い掛ける隼人の問いに、美作は立ち止まる事なく、振り返る事なく口を開く

「あの男は、たった一人で上級死徒を仕留めた魔術師よーーー」


「ーーー全く、偉い目に遭った」

セイバーとライダー達の戦いの場から離れた場所のレストランで、凌我はテーブルに座りながら向かい側に座る人物にゴチる

「聖杯の動作不良、と言うか暴走かーーー原因を突き止めるために此処に来たは良いもののあっちもあっちでとんでも無いサーヴァントを連れてやがるし、セイバーの情報も大分持ってかれたからな……下手したら真名まで行かれかねん」

正直、セイバーが予め用意していた勝利のルーンによる盾。アレがなければ今頃俺の命はとっくに無いだろう

源義経ーーーいや、あの見た目から察するに幼名である牛若丸の方が正しいか。それにしてもとんでもないインチキ宝具を持っていたものだ

『沙那王流離譚』そしてその内の一景と言ってた以上、あのインチキ強制転移とは別に何かしらの効果を持っているのは明白。正直、原初のルーン様様だ全く

そしてバーサーカー、坂田金時。アレは鉞とあの膂力から凡そのアタリは付けていた。後はあのバーサーカーのマスター。美作の娘の反応で確信を持てた。ブラフでもぶつけてみるもんだ

あのマスター達には底のしれない相手に映ったかもしれないが、此方は此方で危ない橋を幾つか通らされた綱渡りで肝が冷えた

正直、バーサーカーが来た時点で撤退するべきだったが、あのライダーとそのマスターのお陰でプランがオシャカ。持ち札を切らされたのはかなりの痛手だったと言える

「フーン?セイバーの真名ってそこまで大事?」

凌我の向かい側に座る修道服姿の女性、ルーナは微笑みながらレモンティーを飲む。彼女は、先のランサー陣営との戦いを経てひと足先に取り決めていたこの合流地点で待っていた

「……正直、セイバー。シグルドの真名自体はバレたところで意味はない。あちらのランサーとバーサーカーは全然セイバーの関係者でもなんでもなかった訳だしな」

凌我も注文していたコーヒーを啜る。生きた心地がしなかった心身に程よい苦味と深みが染み渡る……

「じゃあ気にする必要は無いんじゃないの?」

「真名は同時に弱点を内包する。此方が真名を隠していると言う事実が、疑心暗鬼に陥らせる為に必要なのさ」

例えば、アキレウスやジークフリートはその不死性と無敵性を誇る英雄だが、同時にその弱点も有名だ。真名が判明すれば同時に相手に攻略の為の情報もバレてしまう

それを防ぐ為にサーヴァントの真名はあらゆる手段を使ってでも隠匿する必要がある

逆にそれを逆手に取って、あえて真名を隠す事で相手に真名を探らせる事に意識を割かせればその分先頭に置いては有利になる。もし速い段階で真名がバレれば相手は此方の弱点をどうにか探そうとするよりも単純に戦力を増やしてぶつかる方向にシフトするだろう

もう囲まれるなんて真っ平だ

「兎も角、そっちはどうだった?ルーナ」

「ランサーのマスターは私の同僚の代行者。正直言って、私よりは弱いけど……」

「お前より強い代行者とか埋葬機関以外にいて堪るか」

けれど、代行者か……。警戒しておくに越した事はない

「フフ……それじゃあ何時迄も此処で喋ってないで、臨時拠点に行きましょう?」

「適当なホテルしかとってねえよ」

「じゃあそこで。どうせいい部屋とってるんでしょ?私も入れてちょうだい♪」

清廉な笑顔を浮かべながらとんでもない提案をしてくる狼に思わず表情が引き攣ってしまう

「……お前襲われたいのか?」

「襲ってくれるのかしら?」

「……はぁ」

ダメだ。俺はこいつには勝てないわ。色んな意味で

「……取り敢えず、続きは拠点でやるか」

「ええ、凌我くん」

未だ謎に包まれた聖杯の暴走、そしてこの地で一体何が起きているのか

模造の聖杯が指し示した新たなるサーヴァント。一体何が、始まろうとしているのか?

それを知るものは、未だ誰も居ない

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