北海鳴らずのこぼれ話 後編

北海鳴らずのこぼれ話 後編


本当はひとつにまとめるつもりでしたが、ちょっと狂騒と絡めて話したいこともあるので前後編に切らせていただきました。どう考えても1,2と狂騒,3でノリも分量も全然違うんですよ、分けて話した方が良いですよね。


前書きとして、私が「北海鳴らず」を通してホーキンスをここではどのような女性として描写してきたのか、そして、アプーとホーキンスとはなんだったのかを話します。

〈ホーキンス〉

ホーキンスの母性をアプーは愛しましたが、実際どういう女性として書いたのか。活字で浮き上がる彼女は「天然」であり「少女」です。あれだけあからさまなキッドの恋心に気づかないということは、つまり、この子そもそも恋を知らないのよ、そういうことよ、と思ったので。

前編でサークルの姫の話をしましたが…「姫」って、よく量産型とか地雷、とか言われるみたいにお人形さんのような可愛い、子供っぽい服を意図的に着るイメージないですかね、私はあるんです。

ホーキンスは「姫」ではないことは確かなんです。意図的に男を侍らせてはいるわけでも、男を渇望してるわけでもなく、恋愛に関しては自由にふわふわしてますから。

じゃあ何かと言うと「天然」なんですね。生まれながら、という言い方は良くないですが、自分の歩んできた道の中で「姫」の性質を自覚なく持ってしまっていた、そういうキャラクターとして書きました。

だから、彼女に出会った男達は、みんなその美しさや可愛らしさに違った形(多分キッドとキラーは似たような部分かなぁ?)で惚れていき、その信念のためにホーキンスを取り合うのです。その黒百合は誰に渡るのでしょう、明確な答えはなくて良い。そのまま愛され続けて良い。

〈アプーとホーキンス〉

この2人は、母子のようで、実は双子の姉と弟みたいな感覚でした。どっちも子供として書いてます。

一方は人を信じず、信じられず、歪んだ子供として育ってしまった。

一方は時に恐れられ、衆目に晒される中でも無菌室のような場所で無償の愛を得続けて、真っ直ぐな子供のまま花開いて行った。

彼らの本質を色で簡単に言うなら、ホーキンスが白でアプーは透明なんだと思っています。似て非なるものですね。白はパッと塗ってしまえばそのままでもう戻れない、でも、そのものの色は1番眩しいです。透明は、他人の色をかぶることで染まっているように見せているだけで、唯一無二の「虚」です。

逆に言えば非なるものでも似てると。何よりも、お互いがお互いを染めることができないのが面白いんですよ。アプーを染めようにも染まってるように見えるだけだし、ホーキンスを染めようにも透明な色では染められないのがほんと、概念として良い。

だからか、このCPでは性的な描写を一切書きませんでした。近親相姦やポルノと似た種類の罪悪感が生じたので、体に触れさせることすらまともに出来ませんでした。でも、私が作るアプホ🥗はそれで良いんだと思いました。アプーはどう見たって女の子に困ってなさそうで、ホーちゃんは綺麗かつ可愛くてえっちだから、チャラ男と大人しい女の子という記号で見れば普通にえっちがありそうなのに、色々と悪魔的に合わさった結果2人とも子供なの、本当に微笑ましいですね。

もうひとつ、アプーとホーキンスはこの作品においては、太陽と月であり月と太陽なんです。あくまで見た目や立ち振る舞いの印象だとギラッギラの太陽なアプーと慎ましい月のホーキンス、それが、蓋を開けてみると、ホーキンスが太陽として、完全に先が見えなくて真っ暗になってしまったアプーを暖かく照らして月にしてくれるんです。

少し裏話にも通じますが、ドレークとのラブシーンが、まさにアプーに出来ないことでして。ドレークはホーキンスという少女をエスコートしてくれるえっちな大人の男(笑)若くて精力溢れるキドキラに負けじと頑張れー(笑)


さあ、こぼれ話の後半を始めましょう。遂に「あの曲」について話す時が来ましたね…。長い話ですからひとまとめに区切るより場面ごとをフォーカスしながら語っていきます。

まずはこちらから。


〈ごめんね〉

偉大なるスレ主様の素晴らしいSS、この言葉はあまりにも美しいけど誰も聞いていないのが良い、と思ったんですよね。

でも、アプーだけは、あの時あの場にあの女性を知る人物として立っていられた彼だけが、この発言を聞いていたらどうだろう、と思ったんです。この言葉でアプーは全てを失います。②ではどれだけひどい目に遭おうとも共存し続けた「音楽」が、1日でも彼から奪われます。これは彼のアイデンティティが完全に否定されたことを表現しています。

彼はこの言葉で、今まで肯定してきた自らの「歪み」を、同盟関係の追憶、そしてホーキンスという人物に囚われていく中で肯定できなくなります。自分の立場が「悪」だと確信を持ち、それを意識して行動しなければ動けなくなってしまうようになったんです。

〈モノクロの世界〉

新しく「元凶」としての自分を引っ張ってようやく、生存本能とともに生きながらえているだけで、本当の彼の心は過去を追い求めていて、時間は止まったまま。目の前の景色なんてただの点線の集まりでしかないんです。

それでも、彼は全身を楽器にして生きるオトオトの実の能力者、音楽の中だけは、流れていくその音達の中に今を感じて、輝いていられます。

でも、音楽<ホーキンスが明確に位置付けられているこの状態、例え金色神楽当日であろうと、絶対にあり得ないシチュエーションですがホーキンスに「やっぱりあなたが生きてると辛い。死んでほしい」と泣かれたら喜んで自殺するし、それを1番望んでるのはアプー自身であって…。

皆さんの感想の通り、この世界は地獄なんです。ホーキンスの優しさでどうにか成り立ってるんです。

〈アプーの怒り〉

狂騒でも③でも共通している点は、アプーが怒る時は全部、自分に対しても怒っているということです。幸せな生活の崩壊の引き金となり、それを途中で止めることすらできない、それがただただ心から許せないんです。

でも、キラーがホーキンスの腕を斬ったことを知った時、彼の脳内をその時だけ、他人への怒りだけが占めるんです。キラーの名前を呼ぶ時はすごく絶叫してます。女の子の腕を切り落としたこと、あれほどホーキンスのことが好きだったキラーがそれをしたこと、それをホーキンスがおそらく受け入れたということが、全て怒りになっているんです。

彼女は「楽器を教えてほしい」と頼んでましたよね。でもね、ヴァイオリンは、両手で弾く楽器なんですよ。ヴィオラであろうと、チェロであろうと、コントラバスであろうと、この手の擦弦楽器は皆さんも知っていると思いますが、左手の指で弦を押さえて音を選び、右手で弓を動かして演奏します。

二度と、教えられないんです。

〈殺してくれ〉

どれだけ怒っていてもこれは一貫してるんです。誰の手でも良いから殺してもらいたくて仕方がないんです。でも、そういう願いを否定してでも彼を救おうとするのが、ホーキンスとドレークの2人です。この2人の存在は地獄をいくらかマシな地獄にしてくれた。

ホーキンスが首を絞めた時も、キラーが向かってくる時も、アプーはとても安らかな顔でその姿を見てるんです。諦観した表情になるんです。やっと解放される、と。その表情に気づいており、その表情を毎日見ていたのはドレーク1人です。

だから、キラーを見た彼の顔で、ドレークは、あの時、指銃で武装色を使った彼が、今はホーキンスの後を追おうとしていることに気づきます。この世界は原作とはほとんど変わらない展開の仕方をしており、アプーはドレークのことをこっちでも余裕で見捨てましたが、ドレークが死んでいたり、来るのが遅れていたりしたら、キッドとキラーによって殺されるんですよ。

2人が少しでも迷ったら「ちゃんとやれよ、バカ野郎」と言って彼から進めてきます。ホーキンスみたいに優しくないのでキドキラはしっかり殺しきってしまいます。

ローが「この女はまだ生きている。だが、ソイツはもうダメだ」と言う時、マジの葬式になってしまいますね。アプーはドレークにもっと感謝をしなさい。キラーは「何故止める」と言いましたが、止めないという選択肢はドレークがいる限り、存在しません。

〈ドレークの言葉〉

わかると思いますが、ドレークめちゃくちゃ止めてるんですよね。「黙っていろ!!」っていう言葉の内心には「ここで死なせるわけにはいかない」という思いがめちゃくちゃ詰まってるんです。ほんと良い人。

「こんなことをして何になる、ホーキンスの為に冷静になれ」といった発言も、もう誰のことも恨んでいない彼女のことを考えて、アプーに対しても言っているんです。「ホーキンスの為にも死んではいけない」と。

ドレークはアプーが怒った時に、ようやく自分のことを責めなくなったのか、と感心しました。ただ、それが本心じゃなかったことが彼のその後の精神状態でわかってしまったため、そういうところが大嫌いだ、と思いつつ、放っておけないのでずっと見てあげてます。

アプーがドレークの所まで歩いてきた時ですよ。ドレークは彼の名前を呟くんですが、もうそこね、地獄なんです。ドレークは彼の顔を見たんです。すごい悲痛な、今にも泣きそうな顔をしていたんです。

〈キッドへの信頼〉

裏設定で明言しましたが、キッドに対してアプーは「気持ちのいい奴」という印象があるんです。実はあそこまでキッドに対して「お前らがやったおれは悪くない」と言っていたのは、その言葉ごとキッドにガツンとぶん殴ってもらってほしかったからです。自分の我儘を怒ってほしかったんです。

しかし、キッドにも自責の念があります。自分だけが悪いと思ってるのはアプーしかいなくて、キッドも、キラーも、ドレークも、そして眠っているホーキンスも、自分達にも悪いところがあった、というスタンスだったからそれを深く突かれて、何も出来なくなったんです。

でも、アプーからしたら裏切られた気分で、脳裏には「自殺」の二文字がはっきりと浮かんでいます。死の外科医、お前2人の命を救ったぞ。

〈たまらねェなこのライブ感〉

仕事くらいやりますよということでモルガンズと直接繋がっている設定にしました。本編でもこの2人、活字のDJとガチDJですが絡みはあるのでしょうか。別に、だから入れたというわけでもなく、ただのついで情報なんですが、私はモルシコ勢であってこのシーンは小説における数少ないエロシーンとして書きました。テレフォンセックスです。ふぅ、こんなこと知りたくなかったですよね、でも裏設定は裏設定ですから。次行きましょう。

〈殺してやる〉

恐ろしい幻覚ですね。でも、これは彼の精神状態を反映してるだけなんです。彼がそれを見始めたのはホーキンスがアプーを殺さなかった時の夜からですが、内心では自分で自分を殺すのが早いと自覚していたんですよね。だから、毎日過ぎるほど何でおれは死なない?という思いが深層心理に根付き続け、その文字はどんどん増えていきます。

ゲシュタルト崩壊ってありますよね。大量の文字を見るとそれが当然起こります。しかも、自分の部屋にいる間も目を瞑っている間もずっとですから相当気持ち悪い。嘔吐反射はホーキンス関係に限った話じゃないということを狂騒に書いたのですが、理由はここにもあります。でも、ホーキンスとしっかり話してからは無くなりました。

しかし、ホーキンスが死の淵に陥っている③で、再発します。最悪なことに幻聴付きです。彼は泣きながら拳銃を取り死のうとするのですが、本来はこういう精神疾患が起きてるってだけで音楽家にとっては当然、死活問題なんですよ。

物語を作る上で少しばかり参考にした人がいます。シューマンという有名な作曲家がいるのですが、梅毒の進行で精神病におかされ、何度も作曲を中断したり、体がうまく動かずに指揮が振れなかったり、頭の中でずっとオーケストラが流れていたりなど、めちゃくちゃだったそうです。

現実がフィクションよりもずっと壮絶であることは、話しておかなければなりません。アプーは乖離しながらも音楽で大きな失敗をすることはない、と設定付けましたが、普通の人間だったら絶対に無理です。書けなくなるし、振れなくなるし、言語障害が起こるとかなり長い期間その影響を受けます。彼が、創作上の人物であり、強靭な体と精神力を持っていたおかげで、私が描く地獄は最小限に抑えられました。

シューマンの病状を参考にしたところは幾つかあります。ウィキで調べたのですが、ありとあらゆる恐怖症に悩まされたシューマンは、食事も取れず、眠れなくなり、毎朝泣いて、幻覚の中で虎やハイエナを象る悪魔に襲われ、頭の中で色んな音が絶え間なく鳴り響き「お前の作品は盗作だ」と幻聴に非難されるのです。彼は家族のことを思い、精神病院への入院を望みましたが、ある日、妻クララとの結婚指輪を川に投げ込んだ後、自ら川に飛び込んだことさえありました。居合わせた漁師に救助され療養し、これは精神の症状とも言い切れませんが四肢が動かなくなって、遂に衰弱して亡くなりました。けっこう似てるでしょう。

〈自殺の方法「昨日」まで〉

階段から落ちて死ぬ子供もいれば、ニンゲンゴサイゾクもいるこの世界。どうやって死ぬんだ、と思って頑張って頭を捻りました。

まず銃、彼がいかに限界かという証左です。この時の彼は銃一発で死ぬことが出来る、か弱い命です。

服毒と言っても、どんな毒飲んだら死ぬかわからなかったので、SMILEの残りで、百獣海賊団における能力者の自殺用にこっそり裏で取引されていたものとして裏設定を作っています。SMILEを食べて能力者になれず一生笑ったままにされた者が耐えかねて、または、能力者にはなったが人間と動物の分裂に苦しんだ末に、など。この自殺、貯金かなり切り崩したんじゃないでしょうか、本気度が伝わってきますね。ドレークがどうやって止めたのかまでは考えてないですが、たぶん何かしらの理由でバレてどっかに捨てられた、とかでしょうね。この日はまだ諦めてなくて、まだ方法があると思ってたはずです。

能力は、音が鳴るので一発でやらないといけない、たぶんアプーは生存本能が邪魔して、ちゃんと血管切れなかった、またはピンポイントで心臓を爆破することができなかった、みたいな感じでドレークにバレて取り押さえられましたね。取り押さえられてる間中、ずっとぐずぐずに泣きながら死を懇願してました。想像するとかなりしんどいのに、倫理観のない可愛さに悶える私がいます。

〈幸せな悪夢〉

悪魔の描写は最初、もっとえげつなくもっとじっとりと、全身の骨を一本一本折っていくような絶望感を書き上げる予定でした。しかし、狂騒の時にテレグラで保存し忘れて、再読み込みしたらその描写が全て消去された、という事故が起きてしまったので、悔し泣きをしながら書き直しました。でも、このくらいサラッとしてて(当社比)むしろ良かったかな、と思いました。ここに夢の没ネタと起きた際の没シチュエーションをいくつか載せておきます。

初めて会った時からカイドウが落ちてくるまでの思い出がざーっと巡り、どんどん鮮明に、音もクリアになっていく→唐突にノイズ音と誰でもない笑い声に包まれて暗転→ホーキンスが笑いながら両腕の関節を一本ずつ折って左腕を切断し「一緒になれたね」と話す→目覚めてホーキンスのことを想いながら虚空を見つめる

ホーキンスに跨られ五寸釘をガンガン頭に打たれるけど、嬉しすぎていつもの笑い方ではなく「ギャハハハハハ!!!」とプレジャーズばりの爆笑しながら目覚めて、自分が生きてるのか死んでるのかもわからず過呼吸を起こしてもずっと泣きながら笑うんだけど、めっちゃ心配してるドレークの顔を見て少しずつ正気に戻って号泣する

耳にありとあらゆる虫が入り激痛に悶絶する→それがなくなると大量の目にめっちゃ睨まれる→怯える自分の頭にホーキンスの笑い声が降ってくる→顔を上げると何もない闇で目の前を見ると藁人形が一個だけ落ちてる→藁人形の心臓に釘が刺さってる→自分の心臓にも刺さっている→目覚めて何で刺さってないんだと絶望する

悪夢を見て夜遅くに目覚めた時に、あまりにも怖くて眠れず、金色神楽がいかに楽しかったのかをクイーンの愚痴も交えながら話すアプーと、叫び声で目が覚めたまま話を聞いててやっぱり何が良いのか理解できないがクイーンの愚痴だけ若干同調してる元飛び六のドレーク

ホーキンスを殺す夢を見て「おれも死ぬ」「大丈夫」「綺麗だな」「愛してる」など蚊の鳴くような声で繰り返しながら自傷行為を始めるアプーと目が覚めたら今まで見たことないような生気のない顔で血まみれになってる姿が見えて反射的に止めるドレーク

他にも色々ありますが割愛します。

〈入水〉

入水は、夢を見た時に決めたんでしょう。これも裏設定なんですが、この時アプーとドレークは一緒の部屋で寝てるので、アプーは事を起こす前に気づかれないよう、ドレークは彼を守れるよう、お互いいたちごっこみたいな感じで起床時間が少しずつ早くなっていってます。湯を張るのも結構時間がかかるのですが、たぶんアプーは起きた瞬間にドレークが寝てることを確認して急いで張って、そのまま静かにドボンしたんだと思います。でも、絵で描いてある通り、本人は水に沈んで力の抜ける体で、美しい幻を見てさえもずっと死にたくない、と思っていたのです。この感情を経験すると、本当に何も喋れないし何も考えられません。ただ、絶望します。床を見てる時の虚無感は凄かったでしょうね。

〈ドレークの告白〉

ドレークは本当にアプーのことが大嫌いですが、すごく心配で、心配で仕方がないんです。ちゃんと笑って話してると、楽しそうで良かった、と思うんですよ。それに、ホーキンスのことですごく辛い思いをしてるのを知ってるから寄り添ってあげたいとも思う、奇妙な関係です。

でも、すごくストレスも溜まってます。そりゃそうですよね、毎日毎日「少しでも遅かったら死んでたな」が繰り返されるし、本人は生きてるとわかると「殺してくれ、死にたい、なんで生かした」ですから。元気に生にしがみついて自分のことも見捨てた人間が今度はコレですから自分勝手にも程があるだろ、ふざけんなって思ったんですよ。だから「うるせえ黙れ話聞け」ってブチギレて思いの丈を話すんです。それを聞いて、アプーは水の中に沈んだ時の恐怖を思い出して根負けするんです。

〈あなたは悪くない〉

原作だと「オラッチは悪くねーよ」ってニヤニヤしながら言ってそうなアプーだけど、ここだと本当に、自分で言うのも辛いし、他人に言われる場面の時に決まって牙城が崩れるくらい弱弱なんですよね。

アプーは、ドレークの「悪いのはみんなだ」という言葉を聞いた時、狂騒でのホーキンスの「私は魔女よ」「私も悪いけどあなたも悪い」という言葉を思い出すんです。

内心「悪いって言っても比率が違うだろ?」みたいな文句くらいは言おうとしてるんですよ。恐らく、第三者に言われるとこんな感じの反応で拗れます。

言われた相手が相手ですからね。ホーキンスは好きだからこそ何も言えないし気持ち少し楽になって泣けるし、ドレークはずっと自分なんかのこと思ってて本当は死ぬのが怖いけどやらなければいけない、と思ってたところで違うって言ってくれたしで泣けるしで。この2人には敵いません。

実はこれ書いてて(こいつら3人兄弟だったのでは…)と訳の分からないことを思い始めた私がいます。優しいホー姉と家族を全力で守るドレ義兄と世話焼かせな末弟アプーで構成されているようです、全員30代…だよね?本当に愛いです。

〈ビンクスの酒〉

別れの唄が歌えないで号泣してるアプーが浮かびました、実はかなり最初の方、1作ったあたりからかな?やりたい演出があってそこに物語を合わせていく、という感じの制作スタイルでした。でも、色々考えた結果歌わないことにしました。曲を止めるの絶対嫌そうだと思って。

狂騒では血文字を書くシーンがありますが、あそこ、原案だと書けないのは同じなんですけど、その後が違うんですよね。ぶっ倒れて気絶して、そして目が覚めたらドレーク。お前、そんな血たくさん流した「だけ」では倒れないだろうし幻覚消えないだろう、と思って変えましたが、その原案のところにビンクスの酒が出てきます。没シーンをお伝えします。

彼は若い頃にどこがしの海賊団で戦う音楽家として所属していた、という設定を作っていました。音痴だけど愉快な海賊達が歌うぞーって騒ぎ出すので伴奏として「ビンクスの酒」を、調律も碌にできてないボロピアノでいつも弾いてたんです。奴らは本当に音痴で、タイミングも間違えてばかりでした。自分も至らないところが多かった、と思いつつ「ただ楽しかっただけのあの頃に戻りたい」と夢想しながら、エアで鍵を弾き、すーっと意識が薄れ……。

こんな感じでしたね。

また、ビンクスの酒について「ひとりで歌うと違った味わいがある」という独白がありますが、ここはワンピースfilm REDの映画キャラクター「ウタ」のビンクスの酒を聴いて私が思ったことの流用ですね。1人で歌うことが意味を持つ場合もあるのだ、と気づきを得ました。

〈北海鳴れば魔女が笑む〉

ドレホ🥗書くことは全く予定してなかったんですよ。でも、あまりにもラブシーン不足で消化不良だったんですよね。いやここまで無いとは思わなかったんですよ、③書きながらアプーくんは病室に入ってキスくらい出来ないんだ?出来ないか、とずっと思ってました。

それに、私の中で「アプドレホ🥗兄弟概念」ががっつり生えてきて、ドレホ🥗の絡みも書きてぇ〜と思い、また、スレ主さんのかっこいいドレークへのリスペクトも兼ねて書かずにはいられませんでした。好評いただけて嬉しいです!

タイトルはアプホ🥗として、片想いかつ成就しないにしてもカップリングとしては完成するようにしたいな、と思って決めました。

全体の構成で大切にしてたのは話の作りをガラッと変えてみることです。ほのぼのした雰囲気、三人称視点、そして甘ったるいラブシーンです!!!!やっぱり恋愛ものってこれですよ。全力で変化球投げてきたので、ここでど真ん中!!!ストレート!!ドレホ🥗お幸せに!!!「"爆"♪」すみません、取り乱して。

また、ここではスクラッチメン・アプーという人物の名前を一切出していません。「アイツ」「彼」「あの人」と会話では示し、地の文ですら実は一度しかまともに彼の名前は呼ばれてないのです。でも、みんな同じ人のことを話していてそれが読者にもわかるということは素敵じゃない?と思って!

ドレホ🥗でありながらホーキンスとドレークの中にアプーがいる、という描写をラブシーンと両立させながら書くというのはなかなかに骨が折れました…なんとか、良い塩梅だったのかなあ?これからの経験あるのみですね、精進します!

さて、ここで後書きも最後です。お疲れ様でした。さて、締めはやっぱり、このことを語っておかなければなりません。

〈逆位置の月〉

ホーキンス🥗ファンというか私はホーキンス自体もけっこう好きで、それなのに全く情けない限りですが、私はタロットカードどころか占いの知識も興味も無に等しいのです(ホーちゃんと出会ってから気になっては、きたかな…難しい)。元から好きなのは音楽なんです…。

話をアプーの一人称視点にしたのも、音楽関係の描写が出来るから初めてのSSでも書きやすい、という理由です。ホーキンス、頑張って知識を蓄えるから待ってて…原作も含めてですが、ホーキンスのやってること、もっと理解したい…。

つまり、このタイトルの案は脳筋です。

経緯

ホーキンスは「月」だよね!ドン!→タロットカードに月ってあるのか?→あったあった→意味暗いな…→逆って何だよ!!逆にしただけで何が変わるんだよ!!→おや?逆の解説…→うわ、アプーめっちゃ重くなるな。採用!!

偶然の産物です。

この曲はアプーが作ったホーキンスのイメージソングですね。名義をクロユリ(ホーキンスのイメージ花とのことで。ついでにアプーも調べたらポピーでした…私が可愛いと思ったのは間違いじゃなかった?)にしたのは、この曲の全てのパートがホーキンスという人物の一部である、ということから。

そしてこのタイトルですね、アプーからホーキンスへの「あなたは私の希望だ」というメッセージです。重低音…これが何ひとつホーキンスに伝わっていない、伝える気がないの、アプーお前…ちゃんとドレークが言ってくれたから良かったのですが。

この曲について何故ドレークが諸々を知っているのかというと、病院に行ってこれを渡してきてくれないか、と彼に頼まれ、何で?と話を聞いたからです。最初は代わりに渡す予定でしたが、曲に込もった思いなどを聞いて「おれが言っておくから自分で渡しておけ、ついでにアイツの顔も見てやれ」と突き返しました。ドレークずっといい奴。

ここからが本当に語りたいところなんですがこの曲の詳細です。この後書きを出した後「曲」のコンセプトアートに近いものを、ファンアートとしてスレで公開しますね。

この曲のモデルは2曲あります。

千と千尋の神隠し劇中曲「6番目の駅」

かぐや姫の物語劇中曲「天人の音楽」

どちらも作曲は久石譲です。気になる方は聴いてみてね。私はこれを小説書いてる間中ずっと流してました。

雰囲気はなかなか違うので、逆位置の月はこの2曲がフワッと合わさったものとして考えてもらえたらと思います。編成とテンポや音楽の流れが大体「6番目の駅」で、全体の雰囲気が「天人の音楽」とイメージしながら書きました。大事なのはこれをアプーが作ったということですね、どっちも作りそうにないでしょ。

ちなみに他にもいくつか候補がありました。最後の方まで平沢進「SWITCHED-ON LOTUS」が残ってました。やっぱりインストの方が良いな、と思って不採用でしたが、イメージソングとは違っても、アプーからホーキンスへの「ラブソング」としてだったらこの曲がモデルとして相応しいかな、と感じさせるんですよね。これも本当に綺麗で良い曲ですから、是非。

「6番目の駅」この曲は、映画の海原列車に乗っているシーンで流れます。千尋とカオナシが一緒に座ってる絵で有名な。あのシーン、海の描写とか綺麗で、でも乗客の様子など、どことなく切なくて。踏切の音がドップラー効果とともに遠のいていくシーンがすごく好きなんですよ。ホーキンスの美しさにおける静かな面を表したのはこれだ、と思ったんですね。

「天人の音楽」映画の核心に触れる曲ですので多くは語りませんが、かぐや姫の物語を見た人達の何人かにトラウマソングとして刻まれています。聴けばわかるんですが、明るくて綺麗で美しいのは確かなんです。でも、どこか無機質な感じがあるんです。あのどこまでも悟りきって人間離れした感覚は「6番目の駅」だけじゃ表しきれないホーキンスの美しさを主に雰囲気の点でがっつり補完してくれたな、と思っています。

さて、本当の最後になりますが、最後はとてもくだらない話をして終わりましょう。

この曲の内容について、地の文で描写されていますよね。抜粋しますが、この部分です。

「その曲は、一言で表すなら「幽玄」である。ピアノの音と弦楽器が織り成すメロディや和音達は、極限まで練り上げられた美しさを表現しながら、哀しみや、儚さといった、どこか不安定な感覚を内包している。しかし、それを感じながらも、低音部は終始、どっしりとした落ち着きと語りかけるような優しさをもってその場を、不思議なまでに均衡をもったバランス感覚で、音の広がる空間をどこまでも支配している。」

やたらと長いですよね。これなんですが、本当のことを言いますね。これは無から生成されたわけではありません。

この私自身による「6番目の駅」の感想文です。

つまり、皆さんは小説を通して、この部分を読んでいる間は、どこの馬の骨だかわからんど素人の楽曲レビューごっこに付き合わされたわけです。しかも、ここに抜粋したことで、わざわざもう一度読まされることになってしまった。

厚かましいと思うでしょう。最後の最後に何だこいつ、と。

嫌がらせに決まってるじゃないですか、アッパッパッパッパー。

でも、本当に良い曲だからおススメです、是非聴いてみてください。

ということで、読んでいただきありがとうございました!

次回作もお楽しみに。

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