包帯
「トレーナーさん…お願いしたい事が…」
早朝、マンハッタンカフェはトレーナーに顔を赤くしてお願いをしていた。
彼女の言うことには今日はハロウィンで仮装する為、それを手伝って欲しいというものである。
「それで、どんな仮装をするんだい?」
そうトレーナーが聞くとカフェは顔を更に赤くして深呼吸をする。
「そ、その…マ、マミーの仮装を…」
マミー…つまりはミイラ。包帯ぐるぐる巻きのそれである。
だが彼女がデザインしたその姿は包帯を巻きながら素肌を見せるような妖艶なマミーであった。
「分かった。手伝おう」
「ありがとうございます…」
そうして準備を進める二人だったがこの先あんな事が起こるなど知る由も無かった…
「それでは…失礼します」
「ちょちょちょ!?」
トレーナーに背を向け、衣類を脱ぎ始めたカフェ。彼女によれば素肌を包帯で巻き、その上に衣類を着けるとの事。
「ま、まぁ手早く行くからな…ここをこう巻いてっと…」
「んんっ…」
「それでここに回して…」
「……んあっ…はっ…」
そばで聞こえる艶かしい声をできる限り聞き流し、淡々と巻いていく。
出来るだけ外しやすい様に一本のの包帯で巻き、外れない様に強めに巻く。
今日は一段と冷えるため暖房は最大にして、少し暑いくらいの状況にした。
しかし配慮したそれが全て裏目に出た。
想い人に素肌を晒し包帯を巻かれる。その倒錯的にも見えるそれはカフェの体温を急激に引き上げた。そしてこの暖房の部屋。忽ちカフェの身体はレースを終えたかの様に汗が噴き出ていた。
そしてそれは包帯に染み込むだけでなく、その包帯を滑らせる要因にもなり…
「ああぁっ!」
それはカフェの身体に包帯が擦れる刺激としてやってきた。
「あと少しだから!…包帯が滑る!」
「くううっ…あっ!…ひうっ!?」
包帯の下は何ひとつない素肌。トレーナーが包帯を巻き、ずれた部分を修正するたびに身体に巻き付き、食い込み、締め付ける。
「これで…うわっ!?」
あと少しと言うところで不幸にも足を滑らせるトレーナー。当然包帯は握ったまま。
そして掴んだまま勢いよく倒れると言う事は包帯を思いっきり引っ張るのと同義。
それは全ての包帯をきつく締め上げる。
それはつまり———
「ああぁぁぁっっっ!!!!!」
彼女の全身に未知の衝撃が襲いかかってきたのである。身体中に包帯が食い込み締め付けられる。それだけで彼女の身体は弓の様に勢いよく反り返った。
「大丈夫か!?ちょっと解くから…」
「あっ!やっ!だめ!…んあぁっ!」
トレーナーは包帯を緩めようとする。しかし一本の包帯で巻きつけていたため気付けば複雑に絡み合い、あちらを動かせばこちらが締まるといった有様であった。
「あと少し!我慢してくれ!」
「だめっ…トレーナーさん!もう……!」
そして暫くして———
「なんとか出来たな…」
「はあ…っ♡…っ…ああっ…♡」
何とかデザイン通りに仮装する事ができたカフェだったがハロウィンが始まる前から息も絶え絶えであった。
「その…ごめんな…あの…」
「トレーナーさん…ハロウィン開始まで時間がまだあります……だから……」
そうすると包帯を片手に持ったカフェに押し倒されていた。
「だからトレーナーさんもミイラになっていただきます…♡」
「マジかよ…」
イベント開始前までにトレーナーも二重の意味でミイラになったのであった。
ハロウィンが終わって暫くして———
「よし、今日のトレーニングはここまで」
「ありがとうございます…それでトレーナーさん……今日は…」
急に小指を立てクルクルと回すカフェ。
「よし、明日は休みだし夜…な?」
「はい…」
その仕草で何かを悟ったトレーナーはカフェに小さい声でそう伝えたのであった。
夜…トレーナーの自宅の地下室にて
「本当に良いんだな?」
「はい…来年の時の練習にもなりますし…」
2人の足元にはバケツが置かれており、何やら甘ったるい香りがする液体に包帯が漬けられていた。
「だから私をその包帯で巻いて縛って…♡あなただけのミイラにして下さい……♡」