勇者アリスの冒険はここで終わりです
RD:アリス脱出失敗ルートはぁっ…はぁっ…!
アリスは現在、必死でアビドス市街地を走っています
既にダメージを受けて全快ではない身体ですが、決死の覚悟でアリスを逃がしてくれたヒマリ先輩のためにも…なんとか先生とモモイ達に合流しなければ…!
──どうして…
どうしてこうなったのでしょう…
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リオ先輩やエンジニア部のみんな、更にハレを除くヴェリタスのメンバーまで
【砂漠の砂糖】に魅了され、ステータスが砂糖中毒になってしまいました…
数週間前、アリスは突然捕まってしまいこのアビドスまで無理やり連れてこられました…
それからの日々はとても辛かったです
アリスに【再教育】を施すため、アリスは特殊な機械で拘束された状態でみんなから洗脳呪文を延々唱えられ…言う事を聞かなかった場合、拘束してる機械から電撃を流されたり酷い言葉での罵倒攻撃までされました…
『アリスはもう…みんなを、傷つけたくありません…!』
(ビリリリィ゛ッ!)
『ぎぃ゛ぅぅぅっ!?』
リオ『まだそんな事を言っているの!?貴女は世界を滅ぼす存在なのだと、何回も教えているでしょう!?…更にきついお仕置きが必要みたいね』
『リオ…せんぱ、ぃ…』
チヒロ『もう少し電流を強めるべきかもしれない。コタマ、ちょっとだけレバー動かして』
コタマ『了解、普通の生徒よりも耐性が強いと思われるので…35mA(電流値)でも意識はあるでしょう』
(バチバチバチィッ!)
『うぁ゛ぁ゛ぁぁぁっ!』
マキ『あっははは!凄い痙攣しちゃってるじゃんアリス!おもしろ〜!』
痛いです
苦しいです
『ッ゛…!ぁ゛ぁ゛っ!もう、やめて、ください゛っ!』
ウタハ『ここまでやってもまだ折れないとは…アリスは強いな。しぶとすぎる、という意味だけどね?ヒビキ、お仕置き用の【ピッちゃん】で軟式ボールを額に当ててくれないか?…言葉で分からないなら痛覚で刻み込むのが一番だからね』
ヒビキ『それじゃあ思いっきりぶち当てるね。アリスちゃんがすぐ壊れるといけないから距離は少し離すけど、もしかしたら血が出るかも?でも嫌がってばかりなアリスが悪いからしょうがない』
ピッちゃん…
それはエンジニア部のみんなが作った、野球用のピッチングマシンです
モモイの頭にボールをぶつけてしまった機体を色々改良してようやく完成させたものだったのですが…アビドスに来てから新しく作った機体は、主に規則違反者へのお仕置き用として使われています
アリスはいつもピッちゃんの野球ボールをぶつけられて、身体のあちこちに丸いアザが作られました…
一発程度なら体力はそこまで削られないものの、本来野球を楽しむための発明品だったはずなのに…今では人を傷つける道具になっているという事が、アリスのメンタルに強いダメージを与えてきて…心が押し潰されそうな感覚に襲われます
『3、2、1…発射』
(ヒュッ… ゴッ!)
『ぎゃぅ゛っ!』
コトリ『何回聞いても小気味良い音ですね!この人体に当たる音は、コタマさん的にもお好みなのでは?』
『ええはい、アリスだけでなく他の生徒もコレクションしています。悲鳴もあると聞いた時の高揚が違うので、合わせて楽しんでいたりしてますね』
『あははははっ!見てみてチヒロ先輩!ほんとにアリスちゃんのおでこから血が出ちゃってる!そうだ、あの赤を使ってアリスのアートでも作ろっかな?』
『別にいいけど…会長の邪魔にならないようにね?』
『おっけー!じゃあピッちゃんに倣ってカラーボールで彩っちゃおっと!』
(バシャンッ!バチャッ!)
カラーボールをぶつけられたアリスの髪と身体は、本来のマキなら嫌がるはずの鮮やかすぎて気持ち悪くなるような色に染め上げられていきます
『………っ…ぅ…ひくっ…』
毎日、ずっとこんな調子でした
優しいミレニアムのみんなが、ここまで変わり果ててしまったことが…本当に、とても悲しかったです
それでもアリスが耐えられたのは、先生やユウカが無事だという話を聞けた事
そして、唯一アリスの味方でいてくれたヒマリ先輩の存在が、勇者の心の支えになった事が大きかったです
ある日の夜中、ヒマリ先輩は1人でアリスに会いに来て…
ヒマリ『アリス。今更こんな事で貴女に償えるとは思えませんが…今がチャンスです。アビドスから逃げましょう』
『い、今なら…逃走が可能なのですか?しかし、ヒマリ先輩は!?』
『えぇそうですね。貴女の脱走を手引きしたとバレるのはすぐでしょう。ですが私はご心配なさらず…なんと言っても、私は超天才病弱美少女ハッカーですからね?このくらいの危機を乗り越える算段はついています…!』
『…分かりました。ではミレニアムで、再会イベントが訪れるのを楽しみに待っています。ヒマリ先輩』
『ふふっ…ええ、きっとすぐに追いつけますとも』
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ヒマリ先輩が破壊工作で監視を緩めた隙に、アリスは逃げ出しました
連日の再教育でぼろぼろな身体ですが、これしきでは勇者は挫けません!
まだHPは残っています。それにアリスが希望に繋がるのなら、先生達と合流してミレニアムのみんなを正気に戻すことも可能なはずです…!
この市街地を抜け、ヒマリ先輩からいただいた砂地を走れる小型マシンに乗って砂漠を突っ切れば、絶対先生やモモイ達に会えます…!こんなところで、倒れるわけには──
(ダダダダダダッ!)
アリス「っ…!?」
今のは威嚇射撃…?
「だ、誰ですか!?エンカウントしたのであれば姿を見せてください!」
数秒ほどの沈黙が流れた後
追跡者が建物の物陰から現れました
「シ、シロコ…」
シロコ「ん。裏切り者は既に捕まえた。あとはアリスを連れ戻すだけ」
「裏切り者…まさかヒマリ先輩が!?」
「うん。ヒマリはアリスを逃がした上にハッキングで撹乱してたけれど…いくら頭が良くても、お腹に一発入れれば相手は動けなくなる」
「っ…何故、何故こんな酷いことをするのですか!アリスには砂糖の良さなんてものが全く分かりませんっ!」
「ん。それはアリスが砂糖の良さを知ろうとしないから…捕まえたら、今度は私が再教育するね。ミレニアム生のやり方は甘すぎる」
「いいえ…アリスは逃げ切って、先生達と一緒にアビドスの皆さんを止めてみせます!」
「ん…精々頑張って」
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【ヒマリを行動させアリスを逃がすために動くのが遅かったので、脱出失敗した場合は最悪のルートへ進むのが決定している状況】
【そしてこの後の操作パートで失敗してしまいシロコから逃げきれなくて…】
アリスはシロコに捕まってしまった…
〈Press A〉←
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アリス「っ、うぅぅ…!」
シロコ「今のアリスでは、私を押し除けられない。残念だけど戻ってもらうよ」
「まだ…こんなところで、捕まる、わけには…ぁっ!」
「………しつこい」
(ガッ!)
「うぐっ!?」
「分かってないみたいだけど、今の私は凄く機嫌が悪い。砂糖も切れてきたし、ヒマリは下手に殴りすぎると死んじゃうかもしれないってノノミが言ってたから手加減しか出来なくって、正直なところかなりイライラしてる……もしこれ以上抵抗するなら、骨を折る」
「ひっ…!?」
この時アリスは、今まで感じた事がないほどの恐怖を覚えました
アリスを見下ろす冷たい視線
抑えつける左腕の力
首を絞めあげる右手の握力
ネル先輩と戦った時を超えるかもしれないほどの、圧倒的なパワーの差
結局アリスは、勇者の帰還を果たせないままなのですね…
モモイ
ミドリ
ユズ
ユウカ
先生
大好きなみんな
キヴォトスのみなさん
ごめんなさい…
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シロコ相手になす術がなく、アビドスの地下牢獄へ連れて来られたアリスは、鉄格子を挟んでヒマリ先輩と再会しました
アリス「ヒマリ先輩…!」
ヒマリ「あ、アリス…ごめんな、さい…私が、もっと早くに、貴女を助け出していれば…」
約束した時よりずっと早い再会を果たしてしまったヒマリ先輩の姿は、見るのも躊躇うような痛々しい姿でした
全身傷だらけ
口端から血が垂れて
綺麗な髪は乱れに乱れ
閉じた片目から血が流れ続けていて
片方の耳は長かったはずなのに半分近く切り落とされてしまっています
血で赤く染まった白い服は、銃痕だらけのボロボロに
その隙間から少しだけ見えるお腹には、会心の一撃を受けたと思しき大きなアザが出来ていました
最早HPが1割くらいしか残ってなさそうな姿のまま、両手脚を拘束されたヒマリ先輩ですが…アリスに心配かけさせないという心が見える辛そうな笑顔を向けてくれて…アリスは涙がとめどなく溢れ…
「ヒマリ先輩…ごめんなさい…アリスが、勇者とすら呼べないのザコで…」
「いいえ…違いますよアリス…これは、私の落ち度…タイミングを間違えてしまったのです、私は…」
シロコ「ん、準備が出来たからお仕置きを始めるね」
「!?待ちなさいっ!アリスちゃんにはこれ以上手を出さないと…!」
「…セリカ、切り傷一つ」
セリカ「このっ…!裏切り者のくせに、生意気な事言うんじゃないわよっ!」
「ひぎっ…!?あ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁっ!」
セリカと呼ばれたアビドス生が、ヒマリ先輩の頬にナイフで切り傷を作る
「や、やめてくださいっ!ヒマリ先輩にダメージを与えないでくださいっ!」
「ん…じゃあアリスは、ヒマリの分までお仕置きされる?アビドスのお仕置きは辛いよ。途中で弱音を吐いたら、ヒマリにも同じことをする」
「くっ…さ、されますっ!それで本当にヒマリ先輩を助けてくれるのならば…!いくらでも、好きなだけ、アリスを拷問してくださいっ!!!」
「アリス…」
「ん、じゃあやるよ。…アリスは本気で殴られたこと、ある?」
「…いえ、ありませ」
(ゴッ!)
「ぅ゛ぶっ…!?」
突然思いっきり左頬を殴られたアリスの鼻や口から、血が沢山吹き出しました
「痛い?まだこんなものじゃ終わらないけど、これからどんなことされるか身体にしっかり覚えておいて」
「ぁ゛…ぐ、ぅぅぅ…」
あまりの痛みで泣いてしまいました
「じゃあまずはお腹から。アリスに内臓があるかは知らないけれど、苦しがるのなら苦痛は感じるはず。いくよ」
それからアリスは、シロコに頬やお腹を重点的に狙われて殴られ続けました
身体も勿論痛いですが…心はアリス自身への失望や、この状況への絶望でもっと痛かったです
鉄格子の向こうで、ヒマリ先輩がやめてと泣き叫んでいる声が聞こえます
──なぜアリスは、勇者なのにみんなを救えないのでしょう
アリスは…アリスは本当に勇者だったのでしょうか?
実は勇者の素質なんて少しも無い
ただのザコキャラだったのでしょうか
リオ先輩…ヒマリ先輩…チヒロ先輩…
コタマ先輩…マキ…
ウタハ先輩…ヒビキ…コトリ…
みんなをアビドスから救い出すために、頑張って再教育を耐えていたのに
アリスがザコキャラだから
耐えたのは全部無駄な努力でした
誰一人として救うことなんてできない
勇者のフリをしたザコなのです
(ドゴッ!)
「…反応が薄くなってきた。もっと殴りたかったけど…仕方ない。次のお仕置きを始めるね」
そう言って、シロコはタブレットを取り出しました
そこに映されていたのは…
リオ『がふっ…!お願い…もう、許してちょうだい…アリスを、しっかり再教育出来なかった分、必ず貢献すると誓う、から…』
「…リオ…せんぱ…!?」
リオ先輩が鉄パイプで殴られている映像でした
「ん。無能は教育しなきゃいけないからリオ達もお仕置き。アリスが逃げたからこうなった」
「そん、な…!なんで、なんでこんな事をっ!アリスだけお仕置きをすると…」
「確かにさっきヒマリの分のお仕置きも受けるならヒマリは許すと言ったけど、他のみんなにはお仕置きしない。なんて言った?」
「ぇ…」
「リオだけじゃないよ、他のみんなも…チヒロとか、ヒビキとかもそれぞれ違うお仕置きを受けてる」
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「アリスッ!間に受けてはいけません!それはヴェリタスが指示されて作った、アリスを追い詰めるための偽の拷問映像ですっ!」
「こんのぉ…!いちいち叫ぶんじゃ無いわよ!ちょっと黙ってろっ!」
「や、やめ…!ん゛むぅぅぅっ!」
口を布で塞がれるヒマリ
彼女の声はアリスに届かなかった
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「アリスが…逃げた、から…?」
「そう。ほら見て、他の子達も苦しそうにしてる。これは全部アリスのせい」
…再教育をしていたミレニアムのみんなが、それぞれ違う方法で目を覆いたくなるようなお仕置きをされていました
「…アリスの、せい…」
「アリスが本気で再教育を受けるなら、お仕置きはここでやめてあげる」
「………」
「どうする?早く答えないと続けるよ」
「…受け、ます…再教育を…受けます」
「ん、ちゃんと言える子は好き。じゃあ最後にその証明をしてもらうね」
シロコはポケットを漁ると、中から何かを取り出してアリスの前に放り投げました。それは…
「──ぇ…」
アリスが作った、ケイが入っているはずのロボットのフィギュアでした
「リオとヒマリ達から聞いた。アリスにとってこれは大事なもの…いや存在なんだって。でも再教育を受けてアビドスの一員になるなら、裏切る原因になりかねないものを残しとくわけにはいかない。ノノミもセリカもアヤネも、アリス自身の手で始末をつけるべきだと言ってたから…」
シロコはアリスの髪を乱暴に掴み
「い゛っ…!」
「壊して」
「…こわ、す…?」
これを、こわす
それはつまりケイをこわすということ
ケイと、もうあえなくなる…
「………い、いや…です…それだけは、どうしてもできません…無理です…」
涙が止まらないまま、アリスは震えた声で懇願します
「どうか、これを…ケイを壊す事だけは許してください…」
「は?」
「(ビクッ!)」
シロコは、今まで聞いた中で一番低くて冷たい声を出しました
アリスは思わず身体が跳ねるほど恐れてしまいます
でも、せめてケイだけは…
「証明する気はないんだ。うん、じゃあもういい。嫌でも自分の手で壊させる」
シロコはケイを拾いあげ、アリスの手を無理やり開かせると、アリスの手の中にケイを収めてその手の上から強く握りしめ始め…
「い…いや!いやですっ!お願いです、からっ!ケイだけはやめてぇっ!」
「さっき誓った以上、撤回は許さない。早く壊せ。砕け」
「やだっ!やだやだやだやだ…!ケイが消えてしまったら…!アリスはアリスでなくなって…!」
「今のアリスなんて求めてない。再教育を終わらせてアビドスの邪魔になる奴らを倒す兵士になればいい。これを壊して過去の自分を捨てろ」
(ぎゅぅぅぅ…!)
「あぁぁぁっ!いや!いやぁっ…!」
必死に手を広げようとする
でもシロコは両手で握り潰してくる
ケイを守りたいのに
守りたい…?
守ることなんて
アリスにはできない
だってアリスは
勇者でもなんでもなく
ザコキャラ以下だったから
(バキッ)
──砕け散る音
手に刺さる破片
「いやああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!!!」
叫んだ記憶を最後に
アリスの正常なデータは消えました
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ヒマリ「(そんな…アリス…)」
アビドス生のセリカさんに布を噛まされ話せないまま、目の前でアリスがケイを砕かされる姿を見ることしか出来なかった…
ミレニアムを裏切った挙句
リオ達どころかアリスまで守れなかった
あの自信満々だった自分が、今は憎くて憎くて仕方がない
手を開いて溢れ出る金属やプラスチックの破片
絶叫した後のアリスは、もう心が消えているみたいでした
なんだか、全部どうでもよくなりました
生きるなんてもう無理です
好きにしてください
アリスが壊れてしまった以上、先生達に勝ち目はありません
キヴォトスの命運は尽きました
勇者アリスの冒険はここで終わりです
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[~BAD END~]
勇者アリスの冒険はここで終わりです
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