加筆まとめ⑪

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葬討部隊との遭遇

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虚夜宮・第五の塔近辺


 ——ズドン! と重い音が響き、粉々に打ち砕かれた障害物が瓦礫となって砂漠に飛び散った。

 駆けるカワキは青白い残光が尾を引いてまるで流星のようだ。その目的地は井上が居る塔——第五の塔と呼ばれる建造物。


 カワキはまるで鬱憤を晴らすのように、敵も、壁も、道を阻むもの全てを片っ端から撃ち抜いていく。

 塔の足元を囲む障壁の上に何者かの霊圧を感じてカワキが並走していた一護に声を掛けた。


『誰か居る。私が先行するよ』


 霊子の足場で空中を滑るように進む。

 開けた壁上に立つのはヤギの骨のような仮面の破面と人間の頭蓋骨のような頭部の者たち——葬討部隊(エクセキアス)だ。


「侵入者。黒崎一護殿、並びに志島カワキ殿とお見受けする」

『…………』


 中央に立つヤギの骨のような仮面の破面と目が合って、カワキが銃を模した神聖弓を構える。

 破面はスラリと腰から斬魄刀を引き抜き名乗りを上げた。


「葬討部隊隊長 ルドボーンと申します。貴方方の御命を頂きに上がりました」

『!』


 言うや否や響転でカワキの後方、一護を狙ったルドボーン。瞬きの間に、カワキが遮るように間に入る。

 神聖弓を持つ手とは逆の手でベルトから素早くゼーレシュナイダーを引き抜くと、霊子の刃で迫る斬魄刀を受け止めた。


『あげられないな。他を当たってくれ』


 ——ギンッ! と硬質な音を立て、白刃を弾き返したカワキ。同時にもう片方の手に持つ神聖弓で頭を狙う。

 響転で躱したルドボーンが口を開いた。


「命を頂くと申し上げた。貴方方にはここで止まって頂く」

「悪りィけど、てめえらみたいなのに構ってるヒマ無えんだよ……——月牙……ッ」


 大技を阻止するようにルドボーンの背後に居た破面たちが、我が身も顧みず餌に群がる虫のように一護の周囲へ押し寄せた。


『これは——……』


 異常な光景を前にカワキの脳裏を掠めたのはかつて見た星十字騎士団の能力——


『————洗脳……は違うな。身体操作、創造……』


 口の中で呟きながら候補を絞っていく。

 命を感じさせない兵士の姿は洗脳の類いではなさそうだ。自我そのものが欠如した様は初めからそう創られたようだった。


『……成程、そういう系統か』


 この破面は恐らくジゼルの“Z”、或いはグレミィの“V”による人間の創造に近しい何かだろう。

 僅かな手掛かりから脳内の膨大な情報が整理され、敵の能力が解析されていく。


「くそ……ッ」


 懸命に斬り伏せ、振り払っても、次から次へ無尽蔵に湧いて出る敵に一護が歯噛みした。冷や汗をかいて足掻く。


「一体何人いやがんだ……!?」

『こっちの雑兵は相手にするだけ無駄だ。本体の——』


 “ルドボーンを叩け”と言い掛けたカワキの背後、見憶えのある伸びた刀身が一息で敵を振り払った。


「ハハハハハハハハハ!!! いくぜもう一丁ォ!!!」

「恋次!!」


 続けて、強烈な一撃が壁を揺らした。


「“巨人の一撃”(エル・ディレクト)」

「チャド!!」


 大きな亀裂が走り、崩れる足場から雪崩のように破面たちが滑落する。

 崩壊した壁の向こうに階段が見えた。


『! あれが入口か』

「……愚か者共め。この程度の不確定要素で取り乱すな」


 援軍に薙ぎ倒されていく部下を一瞥し、一護を狙ったルドボーンを凍気が襲う。


「次の舞、“白漣”!!!」

「!!」

「ルキア!!」


 凍りついた腕に動きを止めたルドボーンが振り返った視線の先——宙空に氷の道を敷いたルキアが一護に発破を掛けた。


「再会の挨拶など後でいい! 早く行け、一護!!」

『……私も残ろう。ここを片付けたらすぐに追いかける』

「わかった」


 カワキはルキアと共に、塔の内部へ飛び去った一護を見送った。


「……良いのか?」

『ああ、試し撃ちが足りないと思っていたところなんだ。ちょうど良いよ』


 湧き出る“的”という慣らしに最適な相手が現れたのだから、ここで調整した神聖弓を試していこう。

 カワキの思惑など知らず、ルキアがふっと笑ってカワキを見遣った。


「修行の成果を見せる時だな」


***

カワキ…ノイトラ戦の八つ当たりがしたい通り魔。


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