前スレまでまとめ

前スレまでまとめ


《仮面ライダーセイバー×ウマ娘プリティーダービー 特別章》

《不思議な鍵が、きらめいて。》

「楽しみだね、お兄様」

「そうだね。けど、良かったの?あくまで取材だから長居はしないつもりだし、結構な田舎町だから、退屈かもしれないし」

「お兄様と一緒なら、ライスはどこでも楽しいよ?」

「そっか、ありがとうな」

 

ゆったりと田園を背景に走る路線バス。その中で会話を交わす一組の男女。

青年の方は神山飛羽真――現役の売れっ子小説家であり、かつて世界を守る炎の剣士、仮面はライダーセイバーだった男である。

現在は聖剣をソードオブロゴスという組織へ返還し、小説家兼トレセン学園トレーナーとして第二の人生を謳歌している。

少女の方はライスシャワー。トレセン学園に所属するウマ娘であり、漆黒のステイヤーという異名で呼ばれるアスリートである。

以前は数々の連覇を阻止したことから『ヒール』と呼ばれることもあったが、現在はそれすら覆し、『ヒーロー』として呼ぶ声が殆どである。

この二人は担当とトレーナーという関係である。この日は久々の休みということでどこかへ出かける運びとなったのだがーーそこでライスシャワーが提案したのだ。

 

「お兄様の取材に着いて行かせてほしいな」と。

 

新作のアイディアを考えていた飛羽真は、ある町の伝承を調べに向かおうとしていた。

そこに先の彼女の提案があり――二人は共にそこへ向かうこととなったのだ。

 

「うわぁ、これ美味しそう…」

その町の情報が載った雑誌を見つつ、ライスシャワーが呟く。

そこには、コロッケの上にケチャップをかけ、そこに大きなゆでたまごスライスを乗せた料理が写っている。

 

「じゃあ、着いたら一緒に買いに行こうか。俺も小腹が減って来たし」

「えへへ、やった」

 

そうしてバスは足を進め、目的地までもう少し――

田園に建てられた看板には、こう書かれていた。

 

『この先 あけぼの町 まものの町』

 

 

「へぇ~、このお地蔵さまが守り神なんですね」

「そうそう。よかったらお祈りしてみない?はいきゅうり」

「ええ、是非。ありがとうございます」

あけぼの町にやってきた飛羽真たち。雑誌に掲載されていた件のコロッケ屋――「肉のいのまた」を訪れた彼は、店主の妻に話を聞いていた。

「ベレケベレケ……でいいんでしたっけ?」

「そうそう。ベレケベレケ」

地蔵にきゅうりを持たせ、祈りの言葉を捧げる飛羽真。そんな時、ライスシャワーがとてとてと歩いてきた。その両手には、包み紙に入ったコロッケ――町の名物、『魔物コロッケ』がふたつ。

「まぁかわいらしい娘。妹さん?」

「いや、あの子は俺の担当です。俺、トレセン学園でトレーナーもやってまして」

「あら~そうなの?」

「コロッケ、おまけしてもらっちゃった。トレーナーさんも一つ、どう?」

「ありがとうライス。……でもよかったのかな」

飛羽真が呟くと、ライスの後方から店主の声がする。

「いいってことよ。お嬢ちゃんウマ娘だろう?だったら沢山食べなきゃなぁ」

「ありがとうございます」

「おう、また来なよ」

一礼し、歩き出す二人。

「トレーナーさん、見て見て!これ、すごくかわいい……!」

少し経って、商店街。立ち並ぶ店の中の一つに展示されていた一つのぬいぐるみに興味を示すライスシャワー。

羽の生えた一つ目の丸っこい水色の魔物型マスコット――『まもすけ』。

ずらりと並ぶそれに目を輝かせるライスシャワー。何も言わずに財布に目をやる飛羽真。

そんな二人の周囲には――いつの間にか人だかりができていた。

「あれ……あの娘ライスシャワーじゃないか?何であんな有名人が」

「隣の人もだよ、神山飛羽真先生だよ、小説家の」

騒ぎを察し、飛羽真はライスへ耳打ちをする。それに気づいたライスも彼へ頷き、二人は半笑いで駆け出した――

サウザンベース上空――宇宙空間。そこに一つの建物が存在していた。その名をアガスティアベース。数々の『禁書』が納められし地。納められた禁書を整理していた女性――ソフィアの目線の先には、一つだけ本の抜けた本棚。

そして一方、地球のどこか。一冊の本を手に、闇夜を歩く何者かがいた。

「この禁書の力で……今度こそは!」

禍々しき竜人のような怪人は高らかに叫ぶ。握られた本のタイトルは――『魔弾戦記リュウケンドー』。

 

 

「これが噂のあけぼの塗りですか」

「綺麗……」

「左官職人さんって近頃減ってきているって聞きますけど、お若い人がいて安心ですね。でも……」

「なんだ」

それからしばらくして、小さな民家の前で左官職人の仕事場を見学していた二人。飛羽真は職人のある点が気になり、言葉を詰まらせる。そして――

「失礼ですが、何でご自分の顔まで白塗りを……?」

そう言った。

「ああ、これか。……昔さ、ヘビメタやってたんだ。これはその名残さ。このご時世だからバンドは解散しちまったけど、音楽は続けてる。動画投稿者ってやつさ」

「ヘビメタ……?」

首をかしげるライス。

「あちゃあ、若い娘にゃもう通じねぇか」

たはは、と笑う男。そんな中、声がした。

「おーい為吉。少し休憩にしねぇか。お客様もいることだしよ」

「わかったよ親父。けど、これが終わってからな」

「ったく、すっかり仕事の虫になりやがって。誰に似たんだか……」

そう言ってにかりと笑う男の父親。飛羽真とライスはそんな親子に気持ちが癒され、つられて笑顔になる。

そんな時だった。ライスが遠くの茂みの中に何かを見たのは。彼女は飛羽真にこっそりと言う。

「ねぇお兄様、あそこ……」

「何かい……る……ね、うん」

彼らの目線の先には、茂みの中から飛び出すウマ娘の耳があった。

左から桃色、鹿毛、黒鹿毛。果たしてその正体とは――

 

 

「本当にすいませんでした!……お二人をつけるつもりはなかったのですが、つい……」

再び街中のカフェテリア。席を挟んで飛羽真とライスへと謝罪するウマ娘――ゼンノロブロイ。その横には、アグネスデジタルとメジロドーベルもいた。

ロブロイ曰く、あけぼの町の魔物伝説に以前から興味があった彼女は同室であるライスがしていた話を聞き、自分も行きたいという衝動を抑えきれなくなったのだという。

しかし二人だけの取材旅行を邪魔したくないという気持ちもあり、一旦胸の内に秘めた後こうして創作者として繋がりがある二人を誘ってきたのだが――そこで偶然飛羽真たちを見つけ、ついつい尾行してしまったという。

「謝らなくても大丈夫だよ?ロブロイさん」

「うん、俺たちは気にしてないよ」

そんな時である。

 

「魔物だぁー!」

外から住民の悲鳴が響いた。血相を変えて店を出る飛羽真。そこでは、紫の体色をした一つ目の怪人が複数暴れていた。

魔物へ向かって跳び蹴りを叩き込む飛羽真。彼は叫ぶ。

「みんな逃げるんだ!急いで!」

そうして抗戦を続け、数分――何とか事態を収めた飛羽真のもとに、着信が入る。

発信元は――新堂倫太郎。水の剣士、仮面ライダーブレイズとして共に戦った友だ。

「飛羽真、聞こえますか!?今君がいる町の周辺に、強力な結解が張られました!こちらも何とか侵入を試みているのですが、ブックゲートも効果が無くて!とにかく身の安全を最優先に……あっ!?」

「どうしたんだ倫太郎!?」

「今、火炎剣烈火が……飛び出していきました」

「えっ?うぉあ!」

「ひゃっ!?」

倫太郎が告げると同時に、カフェテリアの屋根を貫き何かが飛来、床へ突き刺さった。

それは――火炎剣烈火。飛羽真は剣を引き抜くと、強く頷く。

「またよろしくな」

呟いた飛羽真。そんな時――パトカーのサイレン音が響く。

そして瞬く間に警察が店へと入ってきて――

「え?」

飛羽真に手錠をかけた。

「署まで来てもらおう」

その相手――サングラスの男は一言告げ、飛羽真を連行していく。

「と、トレーナーさーーーーーん!?」

ライスシャワーの困惑を込めた叫びが、夕日輝く商店街に響き渡った――

 

 

「申し訳ない、まさか君がソードオブロゴスの関係者だったとは」

それから数時間後――秘密組織『SHOT』基地。手錠を外された飛羽真は、司令官である天地裕也からの謝罪を受けていた。

「いえ、こちらこそお手数をおかけしました」

そう返す飛羽真。

「なぁ天地さん、そのソードオブロゴスって何なんだよ」

二人の会話に、一人の男が割って入った。鳴神剣二――かつて魔弾剣士リュウケンドーであった男である。

「そんなことも知らんのかお前は」

そんな彼にツッコミを入れるのは、不動銃四郎――魔弾銃士リュウガンオーであった男。飛羽真を連行したその人である。

「剣二、説明は後だ。今はとにかく復活した魔物の謎を追うのが先決だ」

天地が剣二をとどめ、モニターへ目をやる。

「倫太郎の連絡通りだ……」

そこには町全体を覆う巨大な結界が映し出されていた。

「世界消防庁にも救援を頼んだが、レスキュービークルを用いても侵入不可能な状態だ。魔弾戦士も存在しない以上、今頼れるのは君しかいない……仮面ライダーセイバー、神山飛羽真くん」

「ええ、俺が皆を守ってみせます」

「悔しいが、頼むぜ後輩!」

「何を先輩面しとるんだお前は。第一お前の後輩じゃないだろ」

「っだ!何すんだよおっさん!」

「おっさんって言ったなこの野郎!もうお前もおっさんの癖して!」

「いででででで!」

「……一旦、ここで話は終わりだ。君の連れをあまり待たせても悪いからね」

「お気遣いありがとうございます」

そう言って天地や剣二、不動の案内でSHOT基地を後にする飛羽真。そんな彼のもとに――

「おにいさまあぁぁぁぁーーっ!」

泣きべそをかいたライスシャワーが飛び込んできた。そんな彼女に飛羽真は慌てて言う。

「ライス、ライス!その呼び方は……!」

「あっ……!あわわ……」

ハッ、と気が付いたライスは辺りを見回す。そこには――

「ゴホン!……まぁ、呼び方は人それぞれ、だからね」

気まずそうにするSHOTの面々の姿が。

「ちっ、違うんです!これは、その……あうぅ……」

「あっちゃあ~」

顔を真っ赤にし、すっかり縮こまってしまったライスと飛羽真。そんな二人の様子に、誰がぷっと笑いを漏らす。そうしてそれは広がってゆき――すっかりその場は笑顔で埋め尽くされていた――

 

 

陽も落ちた夜。飛羽真たち、そしてあけぼの町の住民たちは地下避難所へと移動していた。

「じゃあ行ってくるよ、ライス」

「……あのね、一ついい?」

「何だい?」

「いざという時は、ライスにも任せて。ライスだって……トレーナーさんと気持ちは一緒だから」

「ライス……ありがとう。俺はその気持ちだけで十分嬉しいよ。けど、一つ約束だ。絶対に自分の命を投げ出すような真似はしないでくれ」

「うん、わかった……!」

そう言って小指を結ぶ二人。外へ出た飛羽真はソードライバーを装着し、『ブレイブドラゴン』のワンダーライドブックを装填する。

「変身!」

『ブレイブドラゴン!』

火炎剣烈火の軌跡が燃ゆる瞳となり、炎の剣士――仮面ライダーセイバーが現れる。

「来るぜ!」

同じく警備についていた剣二が叫ぶ。見ると、遠方からは大量の魔物が大挙して迫りつつある。

「うおぉぉぉーーっ!」

炎の剣を掲げ、果敢に立ち向うセイバー。

「ハァッ!オリャ!」

数の差をものともせず、迫りくる魔物を一刀のもとに切り伏せていくセイバー。

戦況は圧倒的優勢。このままいけば、倒し切れる。そう誰もが考えていたその時。

「っ!?」

凄まじい衝撃と共に、何かが飛来してきたのだ。巨大なクレーターを伴い落下してきたそれはゆっくりと立ち上がると、セイバーを指差す。彼もまた、その姿を知っていた。

蒼と銀で彩られた骨のような身体に、禍々しく伸びる角が特徴的な竜の如き頭部。

セイバーはその名を呼ぶ。

 

「お前は……アスモデウス!」

 

 

「めでたし、めでたし」

一方、避難所。その一角で、ゼンノロブロイとライスシャワーは子供達へ読み聞かせを行っていた。

「次、これ読んでー」

「ずるい、私が先―」

「ケンカしちゃだめだよ、順番にね?」

「心配しなくても、全部読んであげますからね」

「はーい」

少しでもこの空気を明るいものにしたいと、彼女たちは自発的に行動していた。

そしてまた、メジロドーベルも――

「じゃあ、次はキリンさんを書いてみようか」

「うん!」

子供たちを相手に、お絵かき教室を開いていた。

「ほぇぇ……こんな状況下でも子供たちにあんな笑顔で……」

それらを遠巻きに眺めるアグネスデジタル。いつものように尊みに浸っていた彼女であったが――

「おぉっと、いかんいかん!ここはあたしも頑張るところ!さぁさぁお子様たちよ、何をして遊びたいですかな?」

自分の頬を軽く叩くときりっと眉を上げ、子供たちへと歩み寄っていく。

 

「すごいですね、彼女たち。自分たちも不安でしょうに……」

「立っている場所が違うだけで、我々も彼女たちも誰かを笑顔にしたいというのは同じ、ということだな。さぁ我々も、各々の責務を果たすぞ」

「了解!」

それぞれの活躍により、希望と活気に満ち溢れる避難所内。

 

ライスシャワーは、心中で祈る――

 

(お兄様……絶対に勝ってね)

 

「久しいな、仮面ライダーセイバー」

アスモデウス。かつてアガスティアベースに納められた『仮面ライダー』と『スーパー戦隊』の物語が記された禁書を奪い、《石ノ森章太郎》を利用してヒーローをこの世から消し去ろうとした怪人である。

セイバー率いる全仮面ライダー、ゼンカイジャー率いる全スーパー戦隊との決戦に敗れ去ったはずの相手に、動揺を見せるセイバー。

「私は何度でも蘇るさ、ヒーローという存在がある限り。そして見せてやる、私の新たなる力を」

そう言って彼は、一冊の本を掲げる。それは『魔弾戦記リュウケンドー』の禁書。

「また禁書を解放するつもりか!?」

「フン、同じ手段は使わんさ。こうするのだ!」

そう言ってアスモデウスは自身の身体に禁書をねじり込む。それはみるみるうちに吸収され――邪悪な波動が辺りを襲い、建造物を瞬時に崩壊させてゆく。

「禁書を自分に……!?何をするつもりだ!」

「以前は解き放ったために、ヒーローどもまで現れてしまったからな。こうして己の内に取り込み、力のみを取り出すことにしたわけだ」

わざとらしく自身の手の内を説明するアスモデウス。彼は鈍く銀色に輝く剣を取り出し――

「見せてやろう、悪の力を。半月の太刀!ハッ!」

リュウケンドーのライバルにして誇り高き剣士、月蝕仮面ジャークムーンの得意技を繰り出した。

「そいつはヤバい!避けろセイバー!」

その威力を知る剣二の叫びに反応し、すんでのところで回避するセイバー。

「甘いわ!」

しかし、アスモデウスは黄金女王レディゴールドの能力によりその背後へ移動、岩石巨人ロッククリムゾンの能力で己を巨大な岩石ボールへ円形させ、勢いよく何度も押しつぶす。

「んのヤロー!」

「おい待て剣二!」

業を煮やした剣二が不動の制止を振り切り木刀を掲げ、突撃する。

「変身能力も持たぬ貴様に何ができる!」

しかしあっさりと振り払われ、地面を転がる剣二。

それにより攻撃が中断されるも、セイバーは意識を失っていた。

止めを刺さんと動くアスモデウスだったが、何かが――青白い骨の腕がそれを阻む。

意識を失っているはずのセイバーのソードライバーのスロットには、いつの間にか別のライドブックが装填されていて。

[プーリーミーティーブ!ドラゴーン!]

唄と共にセイバーの姿が変化し、獣のような跳躍で距離を取った。

逆手に剣を構え、にじり寄るセイバー。両者の間に、緊張が走る――

 

 

放たれた光弾を躱しつつ切り込むセイバーだが、アスモデウスの持つ剣に捌かれ、有効打を与えられない。そしてアスモデウスは一瞬の隙を突き、セイバーを大きく吹き飛ばす。

膝をつき、項垂れるセイバー。しかしそこで、飛羽真が意識を取り戻した。

「ありがとう、もう大丈夫」

そして彼は《エレメンタルドラゴン》のライドブックを取り出し、プリミティブドラゴンのスロットへ装填。

[エ!レ!メ!ン!タル!ドラゴーン!]

セイバー エレメンタルプリミティブドラゴンへと変身し、エレメント攻撃を仕掛けるセイバー。しかし、それらもまた打ち消されてしまう。

「あの野郎!獣王の力まで!」

かつての仲間――獣王たちの力を悪用されたことに憤慨する剣二。飛び出していかないよう抑える不動だったが、余波により共々吹き飛ばされてしまう。

「剣二さん!不動さん!」

「他人の心配をしている場合か?」

セイバーの首を掴み、高く持ち上げるアスモデウス。抵抗するも、力の緩む気配はない。

そして彼の意識が再び消えかけ――

 

「とうとうこの時が来た……貴様を頂く!」

 

アスモデウスの叫びと共に、飛羽真の意識は暗転した。

 

 

数分後――避難所。扉が開かれ、何者かが駆け込んできた。誰もが戦いが終わったものと考えていたが――

「剣二、不動!いったい何があった!?」

現実はそうでなかった。避難所へ入ってきたのは、ボロボロな姿の剣二と不動。剣二に至っては気絶しているではないか。

そんな二人の姿に、ライスシャワーが呟く。

「トレーナーさん……は?」

その言葉に、気まずそうに俯く不動。しばし沈黙したのち、彼は口を開いた。

「奴は――」

 

「貴様を頂く!」

「何しようとしてんだ!やめろ!」

セイバーを高々と掲げたアスモデウス。剣二の攻撃も意に介さず、彼はセイバーを己の身体の近くまで持っていくと――

「セイバーを……吸収しているのか!?」

その頭から、己の内へ取り込んでいくではないか。急いでその身体を掴む剣二と不動。しかし抵抗虚しく、その全身はアスモデウスへと吸収され――二人は弾き飛ばされた。

彼の身体から禍々しいスパークが迸り、腰にはなんとソードライバーが現れる。

[ジャシンドラゴン]

[アスモデウス]

[仮面ライダーセイバー]

三冊のアルターライドブックを装填し、火炎剣烈火を抜刀。

[烈火、抜刀!ヴィラン三冊!]

[3冊の悪意が満ちる時、恐怖の剣が襲い来る!ヴィランライダー!]

その姿を、漆黒のセイバーへと変えてゆく。

[悪意に溢れた恐怖の剣が今ここに!]

そして現れたのは、仮面ライダーセイバー ジャシンドラゴン。

「これで私が……この世界の《主人公》となった!さぁ始めようじゃないか、悪が支配する物語を!」

彼が両腕を振り上げると、地響きが起こる。暴風により瓦礫が巻き上がり、その中の一つに剣二が巻き込まれてしまう。

「剣二!」

駆け寄った不動。剣二は頭から血を流し、意識を失っていた。そしてセイバーはその体を宙に浮かせ、何処かへと消えてゆく。

不動は剣二を担ぎながら、それをただ見送ることしかできなかった――

 

「そんな……」

膝から崩れ落ち、涙を流すライスシャワー。

その慟哭は、暫し避難所内へ響き渡っていた――

 

 

 

そして数時間が経った。セイバーの敗北に沈む人々。その身体からは、エネルギーのようなものが抜けだしている。

「マズいな……大量のマイナスエネルギーが人々から放出されている」

「それを辿って奴の居場所を突き留められませんか」

「今やっている……あった、ここだ」

マイナスエネルギー。かつて魔人軍団ジャマンガが大魔王グレンゴースト復活のために要していた人間の負の感情より発生するエネルギー。絶望の感情から生み出されるそれは避難所を飛び出し、一点に収束していた。

「そこって……」

「ああ。かつてパワースポットがあった場所だ」

魔力の源、パワースポット。ゲキリュウケン・ゴウリュウガン・ザンリュウジン。三人の魔弾龍と引き換えに封印したその場所に、マイナスエネルギーは集まっていた。

「奴はもう一度パワースポットを開き、さらなる力を得るつもりだろう。そうなる前に何とかしなければ……」

「ですが、こちらには戦力はもう……」

天地と不動が頭を悩ませていた、その時である。

「ライスが行きます……!」

ライスシャワーが彼らの前に立ち、そう言い放ったのだ。

「君が!?ダメだ。危険すぎる」

当然止める天地。だが――

「こうなっちゃったのは、全部ライスのせい。トレーナーさんについて来たいって言った、ライスのわがままのせい。だから、だからライスが!」

「落ち着くんだ。何も君のせいでは……」

「通して……ください……!」

少女のものとは思えぬ鬼の如き気迫に、一瞬気圧される天地と不動。その隙にライスは彼らを振り切り――外へ出てしまった。

「待つんだ!追ってくれ、不動!」

「私たちも行きます」

追おうとする不動に、ロブロイが言う。その後ろには、デジタルとドーベルもいる。

「ダメだ……と言いたいところだが、ウマ娘に一人で追いつける気はしない。協力を頼めるか?ただし……安全第一で、だ」

「わかりました」

そう言うと、四人は避難所を出てゆく――

 

 

一方、先に飛び出していったライスシャワー。彼女は廃墟となった町の奥に、巨大な建造物を見つける。それは、禍々しい城であった。

「お兄様は……あそこに」

アスモデウス――そして飛羽真がそこにいることを確信した彼女は、闇夜を駆けだした。

誰にも追いつかれないよう、全力で。その瞳からは、蒼炎が噴き出ている。

しかし、その行く手を阻まんとする者がいた。アスモデウスが作り出した魔物軍団だ。

「どいて」

怒りに燃えるライスは、遣い魔を一蹴。彼女を脅威とみなしたのか、魔物たちの動きが変わる。彼女を取り囲み、じりじりと距離を詰める魔物たち。

まさに多勢に無勢。覚悟を決め、応戦しようとするライスであったが――

 

「……え?」

 

魔物軍団は、突如として翠の炎に包まれ、燃え尽きた。起こった事態が理解できず、困惑するライスシャワー。そんな彼女へ、背後から大型の魔獣が飛び掛かる。

だが――その魔獣は、何者かによって切り伏せられた。月夜を背に翠の瞳を光らせ、佇むそれを目にしたライスは呟く。

 

「金色の……狼さん?」

 

 

ライスシャワーの前へ突如として現れ、彼女の窮地を救った金色の剣士。金色の剣を手に、迫りくる軍勢をなぎ倒してゆく。

そうして―大物が現れた。無数の鈎爪を備えた触手を持つ、犬のようなネズミのような姿をした大型の魔獣。

魔獣は触手を伸ばし、剣士を狙う。しかし彼は鎧によりそれを受け止め、はじき返す。触手のうち一本をつかみ取ると、魔獣を振り回し、地へ叩きつける剣士。

そして高く飛びあがると、剣を掲げ――迎撃しようと大口を開ける魔獣を一刀両断にしてしまった。

1分と経たずに軍勢を掃討した剣士。彼が剣を収めると、その鎧は空へ吸い込まれるように解除され、人の姿が現れる。

それは明るい茶の髪に、白いコートの男であった。赤鞘の剣を手にした彼は、ライスへと歩み寄る。

 

「無事か」

「は、はい……ありがとうございます」

その威圧感に委縮しながらも礼をするライスシャワー。男は少しかがみこむと、何かを取り出し彼女へ差し出した。

「お前にこれを渡せと言われて来た」

それは、赤・青・黄の小さな宝石が埋め込まれた装飾の付いた筆。ライスはそれを受け取り、問う。

「あの、これでどうすれば……」

「強く祈り、描け」

男は短く言い残すと、歩き去ってゆく。あっけにとられる彼女。しばらくして、その耳に複数の足音が飛び込んできた。ライスが振り返ると、そこには――

 

「みんな……」

 

彼女を探しにいやってきたゼンノロブロイ、アグネスデジタル、メジロドーベル、不動銃四郎の姿があった。

 

 

「よかった、無事そうで……」

「ゼェ、ゼェ……」

ライスの姿を見つけ、安堵するメジロドーベルら。と、虫の息な不動銃四郎。

「みんな……ごめんなさい。ライス、かっとなっちゃって……」

「ハァ……どうやら、ゲフッ、頭は冷えたようだな」

「だ、大丈夫ですか?」

今にも倒れそうな不動を気遣う四人。

「ああ……俺のことは、気にするな……」

「全速力ではないとはいえ、ウマ娘と並走できるなんて……」

「これでも、元ヒーローなんでな……そんなことより、戻るぞ」

 

「凄いですね。魔力とは別物ですが、とんでもない力が込められています」

そして避難所へと戻ってきた面々。ライスは謎の剣士から受け取った筆を解析してもらっていた。

「その人、言ってたんです。強く祈って、描けばいいって」

「描くとは言っても、いったい何を……?」

 

うーん、と考え込むライスたち。そんな中、ロブロイが耳をピコンと立てた。

 

「書く、描く……『かく』と一口に言っても、いろいろあります。なら、全部やってみましょう。幸いここには、皆さんもいることですし」

「えっ、あたしもですか?そんな恐れ多い……でも、ウマ娘ちゃんの頼みとあらばこのデジたん、たとえ火の中水の中!」

「ええ、やってみましょう。もしかしたら何か変わるかも」

「みんな、ありがとう!」

 

ライスシャワー。ゼンノロブロイ。メジロドーベル。アグネスデジタル――ジャンルこそ違えど、いずれも創作に携わるウマ娘たち。ロブロイの提案で、彼女らの意思は固まった。

 

「よし。なら場所を空ける。少し待っててくれ」

 

そうして数分後。あけぼの町の住民たちも快く了承してくれ、避難所内にスペースが設けられた。その前に立ち、いざ行かんとする4人。ライスが強く筆を握りしめると、眩い閃光が走り――

 

 

「ここは……?」

 

閃光が収まり、目を開いた四人。彼女らは、真っ白な謎の空間に立っていた。

「まるでキャンバスね」

ドーベルが呟く。その言葉にピンと来たのか、ロブロイが何やら考え込む。すると――

 

「わっ、文字が……!読めないけど」

空中に文字のようなものが描き出されたのだ。

「どうやら、頭に思ったものをこうやって出力してくれるようですね」

(あれ、デジたん大丈夫なんでしょうかそれ……)

ロブロイの言葉に、軽い冷や汗をかくデジタル。

「でも、結構強く念じないと駄目そうです」

(ほっ……)

「根気との勝負って訳ね」

「でも、これがトレーナーさんを助けるカギになるなら……ライス、頑張るよ」

 

かくして始まった、4人の奮闘。

ドーベルとデジタルがストーリーを練り、ロブロイが整理し、ライスが描く。

話し合いの結果、それは絵本風にまとめられることとなり――

 

 

あるところに、大変仲の良い剣士とウマ娘がおりました。

大好きな青いバラに囲まれ、慎ましく暮らす二人。しかし、事件が起こりました。

永い眠りについていた魔王が蘇り、魔物を率いて人々を襲い始めたのです。

剣士は言いました。「俺が皆を助けてみせる」と。

必ず戻ると誓い、剣士は旅立ちました。

娘は彼の無事を、ただ祈りました。それに応えるように、剣士は次々と魔物を打ち倒しました。そしてついに、魔王の下へと辿り着いたのです。

ですが、魔王の力は強大でした。剣士は魔王を追い詰めたものの、傷つき敗れてしまいます。

魔王は言います。「消すには惜しい男だ」と。

するとなんということでしょう。魔王は、ボロボロになった剣士の心と身体を乗っ取ってしまったのです。さらに強大な力を得た魔王は、世界に哀しみをまき散らします。

人々が絶望に沈む中、娘はただ一人希望を捨てませんでした。

祈り続けた彼女は、ついに奇跡を起こしたのです。

その背から翼を生やし、天翔けるウマ娘――伝説のペガサスとなった彼女は、剣士を助けるべく飛び立ちました。苦難の末、剣士を救い出した彼女。二人は共に、魔王へ立ち向かいます。そうして絆の力で魔王を打ち倒した二人は再び、仲睦まじく暮らしましたとさ――

 

「できた……!」

白い空間内に、文字と絵が浮かび上がる。その完成と同時に、筆にはめ込まれた三つの宝石が輝いた。放たれた赤と青、黄の優しい光は、それらを一つにまとめてゆく。そして、一冊の本が出来上がった。その本のタイトルは――

 

『ブルーローズペガサス!』

 

 

ライスシャワーの手元にそれが納められると、彼女の腰に何かが装着された。聖剣ソードライバーの鞘部分である。

彼女は何かを確信し、右端のスロットへブックを装填する。そしてページを開き、押し込むと――

 

『天馬ノ装!』

彼女の周囲に鎧のようなものが浮かび、装着されていく。

炎の意表をあしらった腕部や脚部、青い薔薇が描かれたエンブレムの付いたボディーアーマー。そして背から生える、小さな翼。

装着が完了すると同時に、ライスシャワーの右手に蒼炎が宿る。

彼女がそれを振るうと、炎で形成された短剣が現れ、翼が巨大なものへと変化した。


 

「みんな、ありがとう……ライス、行ってくるね」

 

そう告げる彼女に、強く頷く三人。ライスシャワーはその漆黒の翼を広げ、飛び立った。

 

「待っててね、お兄様……!」

 

月夜を背に、闇を照らす希望の光は行く。目指すは――魔王の居城。



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